YouTuber・フワちゃん、坂上忍を「あんた」呼び! 「タメ口強気キャラ」が芸能界で通用しないと思うワケ

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2020年09月04日 00:02  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

フワちゃん公式Twitterより

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。

<今回の有名人>
「高嶋ちさ子は怖い」フワちゃん
『タウンダウンなう』(フジテレビ系、8月28日)

 関西テレビの人気番組『快傑!えみちゃんねる』が、7月24日をもって終了した。高視聴率を誇っていた人気番組が、番組改編期でもないのに幕を閉じるとはあまり聞かない話だが、元はと言えばこの突然の番組終了騒動は、同番組司会の上沼恵美子と、出演者のキングコング・梶原雄太のトラブルが発端だと言っていいだろう。

 「女性セブン」7月16日号(小学館)によると、梶原は2003年に大ブレークしたものの、あまりの多忙に精神的に追い詰められ、失踪騒動を起こしてしまった。仕事に復帰したが、引退を考えていた梶原に「あなたはスターになる人ですよ」と声をかけて励まし、自身の番組のレギュラーに抜てき。しかし、『快傑!えみちゃんねる』に構成作家として参加している上沼の次男は、上沼があまりに梶原をかわいがることに嫉妬し、梶原の悪評を広めるように。それを信じてしまった上沼は、6月26日放送の同番組収録で、梶原を「義理を欠いている」と責めた。「それは“いじり”の域を超え、“パワハラ”に近いものだった」と「女性セブン」はつづっている。

 結局、梶原は『快傑!えみちゃんえる』を降板。これを受けて、関西テレビと上沼の間で話し合いがもたれた。関西テレビは10月での番組終了を打診したが、上沼がキレて強制終了となったそうだ。これ以降、「女性セブン」では、「上沼恵美子に見る『パワハラ加害者の共通点』精神科医が指摘」といった具合に、上沼とパワハラを結び付けた記事をよく目にするようになった。

 このような記事が書かれるのは、セクハラやパワハラなどのハラスメントに世間の関心が高いからだが、こういう時代に支持を得るのは、「パワハラを恐れず、年長者に逆らう失礼なタレント」ではないだろうか。例えば、YouTuberのフワちゃん。彼女のヘアスタイルや言動を見た時に、タレント・篠原ともえを思い出した人も一定数いると思う。7月20日に出演した『徹子の部屋』(テレビ朝日系)で、フワちゃんのお母さんが篠原のファンで、3歳くらいから同じようなヘアスタイルとファッションをさせられていたと話していた。またフワちゃんも篠原も、そう親しくない相手に対してぐいぐい行くという共通点があるが、異なるところもある。

◎篠原ともえより強気なフワちゃん

 90年代に『LOVE LOVE 愛してる』(フジテレビ系)という音楽バラエティ番組にレギュラー出演していた篠原は、「篠原ともえのプリプリプリティー!!」というコーナーを担当していた。これは、篠原がタレントの楽屋を訪れ、体をくねくねさせながら、「何かください」と物をねだって視聴者にプレゼントするコーナーだったが、目上の有名芸能人であろうと、がんがん距離を詰めていく篠原を「無礼」だとして、男性芸能人の中には、ぶったり飛び蹴りを食らわせたりする人が、実際にいた。もちろん力加減は調節していただろうが、それでもあきらめずに詰め寄る篠原が、もう一度蹴られたり、水をかけられたりすることもあった。今なら炎上必至のコーナーだろう。

 ただ、当時の篠原は目上の芸能人の楽屋に物怖じせずに押し入り、「何かください」とお願いするものの、相手の芸能人を立てていたように私には感じられた。しかし、フワちゃんは常に強気なのである。芸能界は年功序列の世界のようだが、8月28日放送の『ダウンタウンなう』(同)に出演したフワちゃんは、ダウンタウンの二人を「松ちゃん」「浜ちゃん」、坂上忍をそのままフルネーム呼び捨てにしている。このほかにも、ビートたけしを「たけし」、タモリを「タモリ」と呼び捨てにしている。そんなフワちゃんの言動をダウンタウンら三人は笑っているが、これが「今の時代」なのだと思う。

 かつて、坂上忍はMCを務める『バイキング』(同)で、タメ口をきくタレントに「冗談じゃねえぞ」と不快感をあらわにしていたことがあるが、最近は「週刊女性」(主婦と生活社)にも「坂上忍のパワハラで『バイキング』が9月終了か」と報じられるなど、「パワハラをしていそうな人」というイメージを持たれつつある。同番組で進行を務める榎並大二郎アナがミスをしたとき、坂上の当たりが強いのもあり、そう見る人がいても仕方ないだろう。しかし、坂上がフワちゃんに呼び捨てされたとき「冗談じゃねえぞ」と言ってしまうと、パワハラのイメージはますます強まるはず。だから、こういうときは本心は別として「オジサンまいったなぁ」といった感じで、笑っておくのが得策と言えるのではないだろうか。事実、坂上はフワちゃんに呼び捨てにされ、タメ口をきかれても、笑っているか、時折ポカンとはするもののあからさまに怒っておらず、ハラスメント意識が高くなった「今時」の対応だと感じた。

 また坂上は「フワちゃんてさ、恋とかすんの?」と質問し、フワちゃんは「は? あんたのこの関係性で教えてあげるわけないじゃん」と返して笑いを誘ったが、これも「今時」だと思う。昔も「プライベートのことを話したくない」という女性タレントはいたが、そんなことを言おうものなら、司会者に「なら、何しに来てるんだギャラ泥棒」と返されたし、同じ考えを持つ視聴者もいただろう。しかし、今はパワハラやセクハラはいけないという考えが広がっているので、職場でも「彼氏いるの?」といったプライベートな質問をする年長者は「おかしい」と言っていい時代だ。坂上も、フワちゃんに興味があるわけではなく、仕事だから聞いたまでだろうが、プライベートに踏み込んでくる年長者に悩まされている若い人は、フワちゃんの返しに「よく言った」と爽快感を感じたのではないだろうか。

◎タメ口強気作戦は「男性にしか使えない」!?

 それでは、このタメ口強気作戦で芸能界を渡っていけるかというと、そう甘くないのではないだろうか。『ダウンタウンなう』で、フワちゃんは「怖かった芸能人」として、バイオリニスト・高嶋ちさ子の名前を挙げていた。「高嶋ちさ子は怖い」「目でめちゃくちゃ威嚇された。失礼はたらいたらマジで手出されるんじゃね? と思って。だから、しれ〜と目線をそらした」と説明していたが、タメ口強気作戦は「男性にしか通用しないこと」に、フワちゃんは気づいているのだろうか。

 「大の男が女子ども相手に本気になって」というように、日本では女性と子どもを弱いもの、一段低い立場として見る傾向がある。男は「女子ども」より上の立場なのだから、仮に「女子ども」がおかしなことをしたとしても、本気で怒ると「男の値打ちが下がる」と言う人もいた。フワちゃんは20代の女性なので、番組のMCを務める男性芸能人から見れば「女子ども」枠だろう。自身のイメージ低下と「女子ども相手にむきになっても仕方がない」という考えから、フワちゃんを怒る男性芸能人は少ないのではないだろうか。

 それでは、女性芸能人がMCだとどうか。年若いフワちゃんに呼び捨てにされて、むっとすれば「おとなげない」と言われ、お説教をすれば「怖いオバサン」とか「若い子に嫉妬」と言われかねないだろうし、では、男性と同じく笑って対応しても、「裏ではキレてそう」などと言われかねない。こうなると、女性芸能人にとって、フワちゃんは関わると面倒な存在になるだろう。フワちゃんと絡むと自分が損をするので、高嶋のように、関わる前に牽制する女性タレントは多いのではないか。

 一方フワちゃん側も、目上の女性タレントを前にすると、タメ口強気キャラが崩壊する面があるように思う。というのも、『徹子の部屋』で、フワちゃんは司会の黒柳徹子を「徹子さん」と呼んでいたのだ。男性の大御所は呼び捨てなのに、女性の場合はそうしないとなると、視聴者に「案外、忖度してる」と思われて、「自由奔放」という最大の武器がブレてしまうだろう。

 芸能界を渡っていくには、複数の武器を持っていないといけないのかもしれない。フワちゃんがテレビや芸能界にこだわっているとは思わないが、もう一つ違う何かを生み出さなくてはいけない時期に来ているのではないだろうか。

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