三代目 J SOUL BROTHERS 今市隆二&登坂広臣、歌でグループを支える2人 「冬空」から考えるツインボーカルの特徴

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2020年09月05日 06:01  リアルサウンド

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三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE『冬空 / White Wings』

 EXILEを筆頭として今や幅広い世代のメンバー達が属し、様々なグループ形態で革新的なエンタテインメントを発信し続けているEXILE TRIBE。本稿では、そのEXILE TRIBEに属する各グループの“歌い手”達に焦点を当て、一人ひとりの歌声の特徴やグループとしてのコンビネーション力を分析する。


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 第5回目は「R.Y.U.S.E.I.」「Summer Madness」などJ-POP史に残るヒット曲を世に送り届けてきた三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE。国民的グループを歌で支えてきた2人のボーカリスト、今市隆二・登坂広臣の歌声に魅力について今改めて掘り下げる。


■艶があり滑らかな質感で強く響き渡る、今市隆二の歌声
 絹のような艶と滑らかな質感があり少し鼻にかかったような音色が耳に残る、今市隆二の歌声。繊細で優しい声質だが音抜けが良く、地声からシームレスに繋がり高音域までカバーするミックスボイスや、突き抜けるような高音のファルセットまで、その声の個性を保ちながら強く響き渡らせる。また、随所でみられる複雑なフェイクも大きな特徴の一つであり、「R.Y.U.S.E.I.」などのEDM系の楽曲でも勢いを殺すことなく独特のグルーヴを形作っている。卓越した発声技術でメロディを華やかに色づけるようなボーカリストだ。


■芯が太く深い音色を力強く、登坂広臣の歌声
 今市と同じく高い技量と艶やかなボーカリングを特徴としているが、比較すると地声の響きがふくよかで、深い息の流れを感じられるのが登坂広臣の歌声だ。芯が太く力強い発声により息混じりの音色が低音まで澄んで聴こえるため、勢いのある曲でもバラードでも強いインパクトを残す。そして何より特筆したいのはファルセットの美麗さだ。今市と同様にかなりの高音まではっきりと響かせられる上、地声からの切り替えも軽やかで常に聴き心地が良い。ボーカルラインにしっかりとした芯を与え、土台から支えるような存在である。


■「冬空」から考える、今市・登坂のツインボーカルの魅力
 双方ともR&Bのルーツを感じさせるような艶やかなボーカリングを得意としており歌唱スタイルが近しいためか、交互に歌っていても統一感がある今市・登坂のツインボーカル。ここからはそのパート構成から生まれるさらなる魅力について、近年の楽曲の中では特に対比の分かりやすい「冬空」を例として掘り下げていこうと思う。


 彼らの楽曲の多くは今市が歌い出しを担当しており、サビの展開も含めて今市→登坂という構成が定番となっている。哀愁あるメロディが魅力のこの曲でもそれは同様であり、サビ(5:28〜 )冒頭から今市がメロディを丁寧になぞり、美しいファルセットを響かせている。そしてその後、太くキレのよい登坂の歌声に交代することでボーカルラインに深みや重さが増していく。この音色の変化により、今市の歌声が豊かに色付けした景色に登坂の歌声が奥行きを作り、叙情的な美しさがよりダイナミックに響くように感じられる。


 また、この曲は2番でパートが交代するので逆のパターンについても考える。2番サビ(6:50〜 )は、まず登坂のメリハリのきいた歌声が冒頭から強い情感を伝えている。そして次のパートでは、今市の繊細でしなやかな歌声によって1番とは逆にボーカルラインの厚みが減り、哀切の感情がより切実に響くように感じられる。1番と逆の変化が起こることで、最初に登坂が作り上げた情景が今市によって微細な部分まで色づけられていくような感覚があり、1番とはまた異なった情感を感じ取ることができるのだ。


 三代目 J SOUL BROTHERSは8月3日に配信シングル「starting over 〜one world〜」をリリースしたばかりだ。同曲は株式会社CyberLDHによる動画配信サービス『CL』のグランドオープン記念企画として、2015年にリリースされたシングル曲「starting over」をファンの歌声を加えてリアレンジした音源となっている。


 また、ボーカルの2人は近年それぞれがソロミュージシャンとしての活動にも邁進している。今市・登坂それぞれのソロライブ2本立てとして開催された『LDH PERFECT YEAR 2020 SPECIAL SHOWCASE RYUJI IMAICHI / HIROOMI TOSAKA』のライブDVD・Blu-rayが発売されたことも記憶に新しい。ソロではそれぞれの音楽性が色濃く反映された挑戦的な楽曲も多く、表現者としての彼らをより深く知ることができるので、こちらも興味のある方は是非チェックしてみてほしい。


 11月にはデビュー10周年という節目を迎える三代目 J SOUL BROTHERS。4月にリリースされた「Movin’on」の歌詞どおり新しい地平を切り開いていく彼らに、今後も大いに期待していきたい。(日高 愛)


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