なぜ「ウォシュレット」の快適性は広まった? 「地味なPR法ですが…」

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2020年09月07日 10:50  AERA dot.

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写真優美な曲線を描くフラッグシップモデル「ネオレストNX」 (写真=TOTO提供) ※「ウォシュレット」はTOTO株式会社の登録商標です
優美な曲線を描くフラッグシップモデル「ネオレストNX」 (写真=TOTO提供) ※「ウォシュレット」はTOTO株式会社の登録商標です
 家庭のみならず、商業施設やオフィスなどにも普及した温水洗浄便座。中でも国内でトップレベルのシェアを誇る1980年発売のTOTO「ウォシュレット※」は、世界中の人々を魅了し続けている。そこには技術力と営業力に裏付けられた確かな商品力があった。ライター・高鍬真之氏が迫る。

【写真】男女300人から取得したデータを元に開発された初代ウォシュレット

 革新的技術は節水や洗浄だけではない。「きれい除菌水」と「フチなし形状」だ。

「便器内の黒ずみや黄ばみの原因となる見えない菌を除菌し、自動的に清潔に保つのが『きれい除菌水』です。これは水に含まれる塩化物イオンを電気分解して作られる除菌成分(次亜塩素酸)を含む水で、薬品や洗剤を使わず自然に水に戻るので環境に優しいのが特長。使用者がトイレ内に入るとセンサーが感知し、使用前に便器内側にミスト(水)をふきかけて、セフィオンテクトとの相乗効果で汚れをつきにくくし、しかも便器洗浄後に除菌水を追加噴霧するのです」(建築業界誌のB記者)

 使用後と8時間使用しないときにも、「きれい除菌水」のミストを自動でふきかけ、見えない汚れを分解し除菌。まさに至れり尽くせりだ。

 一方の「フチなし形状」は汚れがたまりやすい便器のフチ裏をなくしたオリジナルデザイン。実は、便器内に渦を巻くような洗浄水の水流を作る「トルネード洗浄」は「フチなし形状」を実現するために開発されたもので、清掃の手間を軽減することができた。

「汚い話で恐縮ですが、早い話、ウンコがしっかり流れて残らないので掃除が楽。それで、高速道路のSAやPA、イベント会場、ショッピングモール、ホテルのようなたくさんトイレが必要な場所では清掃スタッフ、ランニングコストを削減できました」(同)

 経済効果だけではない。

「環境問題にもとても役立っているんです。今後深刻化する世界的な水不足と住環境改善を両立させるためには、トイレ問題は重要なポイントと言えます」(1級建築士事務所「アーキポスト」代表の観音克平氏)

 水・衛生専門の国際NGO「ウォーターエイド」が昨年発表した報告書「隠れた水──Beneath the Surface」にはこう記されている。

「世界では40億人近い人々が水の乏しい地域で生活をしており、このような地域ではすでに年間の水需要が供給できる水の量を上回っています。また、この数字は2050年までに50億人に達すると予想されています」

 日本ではいまひとつピンとこないかもしれないが、水資源の有効活用は世界的に大きな課題。洗浄水削減はメーカーにとっても成長の鍵だ。

 もちろん、節電にも努めている。トイレの使用頻度を記憶し、使用が少ない時間帯は便座の温度を自動的に下げる「おまかせ節電」。使用するときだけ瞬時に便座を温める「瞬間暖房便座」……。まさにハイテクの塊である。

 これらを踏まえて住宅専門誌デスクがこう言う。

「TOTOが業界で一目置かれるのは、技術力だけではないんです。地道な営業努力も見逃せません。例えば、初代ウォシュレットの発売当初、得意先の水道工事店に設置して使ってもらい、快適性を口コミで広めました。地味なPR手法ですが、SNSのない時代には効果的。また他社に先駆けて単なる器具取り換えにとどまらず、新しい生活スタイルの提案にまで踏み込んだ“リモデル(リフォーム)”に熱心に取り組んでもいます。高機能、プラス足で稼ぐ営業力。それがロングセラー、トップシェアの秘密ではないでしょうか?」

 日本人ならではの感性と新機能で独自の進化を遂げるウォシュレット。大いなる「ガラパゴス」が、巨大な中国市場、成長著しい東南アジア、さらに市場開拓に試行錯誤中の欧米で飛躍するに違いない。(ライター・高鍬真之)

※「ウォシュレット」はTOTO株式会社の登録商標です。

※週刊朝日  2020年9月11日号より抜粋

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