SaaS専業ベンダーとしてSalesforceに次ぐ存在になれるか――ServiceNowの新たな戦略とは

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2020年09月08日 10:12  ITmediaエンタープライズ

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 「自動化できる仕事はITに任せ、人間は付加価値の高い業務に専念できるようにする。これがServiceNowの目指すところだ」



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 こう語るのは、ServiceNow Japanの高山勇喜氏(執行役員ソリューションセールス統括本部長)だ。同社がこの1カ月余り、5回にわたって事業内容のオンライン記者説明会を開いた1回目の冒頭で強調したメッセージである。「ServiceNow」という社名でありサービス名は、ここでいう「Service」としてのITを今「Now」すぐに届けたいという、まさしく直訳の意味だ。



 ServiceNowは、ITから人事、カスタマーサービスまで企業全体に跨るさまざまなワークフローを構築することで、より良い働き方を支援するクラウドサービスを提供し、2004年の創業以来、着実に存在感を高めてきた。米国本社の売上高は2019年度(2019年12月期)で34億6000万ドル。2020年度(2020年12月期)で42億ドル台を見込み、Salesforce.com(以下、Salesforce)に次ぐSaaS専業ベンダーとして頭角を表してきた。



 一方で、サービス領域の拡大に伴い、同社の全体像が捉えにくくなってきた面もある。そこで、サービスの概要と特徴、今後の戦略展開について、今回の説明会から探ってみた。



 現在のServiceNowの全体像はどのようなものか。まず全体の考え方として、さまざまなシステムを使う会社のイメージとして図1を見ていただきたい。中段にある各業務部門を共通で支えているのが、ServiceNowのプラットフォームだ。下段には各業務部門が複数利用している既存のシステム、上段にはそれを利用する社員などの「人」が描かれている。



 この図1のポイントは、例えば社員が何らかの社内情報を探そうとしたとき、関連の部署やシステムに自らアクセスしなくても、ServiceNowのプラットフォームに問い合わせればスピーディーかつ的確に目的を果たせるというところだ。各部署の既存システムもそれぞれの業務のプラットフォームと目されていることから、ServiceNowは図1の通り「Platform of Platforms」と位置付けられる。このように会社で利用するシステムを全て包み込むイメージから、高山氏は「ServiceNowは一言でいえば“ラッピングシステム”」と説明した。



●金融と通信を皮切りに業種別ソリューション展開へ



 ServiceNowのサービス群を示したのが、図2である。この図では、正式に「Now Platform」と呼ぶプラットフォーム(1個のPaaS)が上段にあり、それをベースに3種類の業務用クラウドアプリケーション(10個のSaaS)を提供していることを示している。最初に商品化されたSaaSのITサービス管理「ITSM」が好評を得て広く受け入れられたことで、ServiceNowの知名度はグッと上がった。



 高山氏によると、ServiceNowが自社製SaaSをこれだけ増やせたのは、そのベースとなるPaaSを最初に開発し、顧客ニーズに応じてアプリケーションを生み出していったからだという。競合サービスは個別のSaaS領域で存在するものの、ラッピングシステムなので競合も含めて全てを包み込む存在となり得る。Platform of PlatformsであるServiceNowは、企業ITにおける無二の標準プラットフォームを目指している。



 そんなServiceNowが、新たな戦略展開を図ろうとしている。米国本社CEOのビル・マクダーモット氏が2020年1月に発表した「業種別ソリューション展開」がそれだ。これまでのところ、金融と通信の2分野についてソリューションの内容を明らかにしており、業種別のパートナー展開と合わせて、間もなく本格的なビジネスを展開していく構えだ。



 さらに、ServiceNow Japanの高橋卓也氏(マーケティング本部プロダクトマーケティング部長)は「米国本社は、他の業種についてもソリューションを開発し、順次提供していくことを明らかにしている」と話す。



 マクダーモット氏が業種別ソリューション展開を打ち出した点は、興味深い。2019年10月にServiceNowのCEOに就任した同氏は、それまでおよそ10年間、SAPのCEOを務めた人物である。SAPで業種別ソリューション展開に注力してきた同氏が、ServiceNowでそのノウハウを生かすつもりならば、ServiceNowに相当のポテンシャルを感じていることの表れだろう。



 実は今、有力なITベンダーがこぞって業種別ソリューション展開に注力している。SAP、Oracleといった大手エンタープライズソフトウェアベンダーをはじめ、Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft、Salesforceといったクラウドサービスベンダーもパートナー展開と合わせて力を入れている。



 その背景には、オンプレミスからクラウドへの移行とともに、DX(デジタルトランスフォーメーション)への対応に迫られる企業のニーズがある。特にDXについては業種別、さらには個々の企業のニーズにきめ細かく、スピーディーに対応することが求められている。



 そうした背景を踏まえると、ServiceNowも上記のビッグベンダーたちと同様のビジネス展開を図るようなベンダーになってきたということだ。



 ただ、肝心なのはこれからSaaS専業ベンダーとして一段と飛躍していくためにどうするか。成長速度が速いだけに、今後もサービスの維持や向上をしっかりと図っていけるか。また、ServiceNowを担ぐ人材をきちんと確保していけるか。引き続き、注目していきたい。


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