あなたが使う駅は大丈夫? “水没する駅”東銀座は最大10メートル浸水

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2020年09月11日 09:00  AERA dot.

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写真桜川駅の止水扉=大阪メトロ提供
桜川駅の止水扉=大阪メトロ提供
 猛烈な勢力に発達し、気象庁が最大級の警戒を呼びかけた台風10号など、今年も豪雨が各地を襲っている。私たちが日常的に使う駅は大丈夫か。ハザードマップを見ると、人口が集中する東京23区や大阪市の多くの駅で、浸水リスクがあることがわかった。駅で浸水に遭遇したらどうするべきか。

【独自調査】東京23区・大阪市“水没する駅”リスト一挙公開

「キャー、怖い!」

 JR東川口駅(埼玉県川口市)構内で上がる悲鳴。外では雷の落ちる音が何度も響いた。構内には川の急流のように大量の水が流れ込んできた。8月12日、関東各地でゲリラ豪雨が発生し、同駅周辺は冠水した。構内は停電し、武蔵野線は運転を一時見合わせ。その場に居合わせた20代の多鳴鍵(ツイッターアカウント名)さんは振り返る。

「改札の中も浸水し、くるぶしまで水が来た。自分も含めて20人ぐらいが水の来ないところに集まった。おびえて悲鳴を上げる人もいた。どこまで水が増えるのか不安で、手が震えた」

 今年も大雨の被害が相次いでいる。7月に熊本県南部を襲った豪雨では、JR肥薩線やくま川鉄道で線路の下の地面が流出したり、車両が浸水したりするなどした。くま川鉄道の湯前駅(同県湯前町)近くにある明導寺の住職・藤岡教顕さん(46)はこう話す。

「鉄道が通る橋や線路が根こそぎ流された。新型コロナウイルスの影響でボランティアも来ることができず、復興の道筋はまだついていない。特に車に乗れない高齢者や学生への影響が大きい。胸が痛みます」

 民間気象情報会社「ウェザーニューズ」によると、フィリピン海の海面温度が高いため今月は平年より台風の数が多くなる。さらに日本周辺の海面も温度が高く、勢力を維持して上陸する台風が多くなる可能性があるという。

 浸水は一歩間違えば、命にかかわるリスクがある。復旧まで長い時間を要し、地域住民の生活に多大な影響を与えることもある。そこで編集部では、最大規模の豪雨による大きな河川の洪水や大地震による津波を想定した国土交通省の「重ねるハザードマップ」を使って、東京23区と大阪市にある全ての駅の浸水リスクを調べた。

 浸水で一番心配なのは、やはり地下鉄だ。東京23区では日比谷線の東銀座駅、有楽町線の新富町駅で5〜10メートル、新宿線の大島駅、浅草線の宝町駅、千代田線の北綾瀬駅で3〜5メートル、大江戸線の築地市場駅や銀座線の浅草駅、日比谷線の秋葉原駅で0.5〜3メートルとなっている。

 特に目立つのは墨田、江東、足立、江戸川の江東5区(ほかは葛飾)の駅だ。荒川、隅田川、江戸川などが流れ、海抜ゼロメートル地帯も広がる。東西線や千代田線、日比谷線などが走っている。

 中央、台東、荒川、北、板橋の各区でも、荒川・隅田川の近くを走る路線で被害が予想される。

 大阪市では、四つ橋線の西梅田駅、千日前線の玉川駅が最大5メートル、御堂筋線の新大阪駅、梅田駅で同3メートルなどとなっている。淀川、大和川、神崎川などが流れ、海抜ゼロメートル地帯も広がる。淀川沿いを走る谷町線や、淀川をまたぐ御堂筋線、今里筋線で多くの駅が水没する。大阪湾近くを走る中央線やニュートラムの駅では津波による浸水リスクがある。

「地下鉄網が被害を拡大させる恐れがあります」

 こう言うのは『首都水没』の著書があるリバーフロント研究所技術審議役の土屋信行さんだ。2009年、国の中央防災会議は、こんなシミュレーションを公表した。

 200年に一度の豪雨が降り、東京都北区志茂で荒川の堤防が決壊。11分後に南北線の赤羽岩淵駅に水が到達し、大量の水が地下へ流れ込む。約4時間後には千代田線の町屋駅、8時間後には日比谷線の入谷駅からも流入する。東京駅と銀座駅では、地下鉄を通じて地表よりも6時間も早く水が到達。大手町駅でも7時間早く水が出る。霞ケ関駅や赤坂駅、六本木駅では地上に水は来ないが、駅内で浸水する。

 最終的には17路線97駅が浸水し、そのうち81駅で駅の改札などの部分が水でいっぱいとなる“水没状態”に。特に一番深いところを走る大江戸線は、最初に水没する──。

 止水対策がほとんどない条件でのシミュレーションだが、地下鉄のリスクが大きいことがわかる。

 大阪でも国交省近畿地方整備局などが淀川決壊の場合のシミュレーションを公表しており、14路線、100駅が浸水、1日約398万人の乗降客に影響が出るとしている。

 土屋さんはこう語る。

「北千住駅の近くには地下から地上に出るトンネルがありますが、5〜10メートルもの浸水が想定されている。ここから水が入り、千代田線をつたって東京駅にまで水が来ることがあり得る。新幹線の駅や地下街も浸水すれば、被害は大きくなる」

東西線の南砂町駅。駅に入るためには10段の階段を上った後、地下へ下る。なんとも面倒な構造だが、浸水対策の一環だ。付近は埋め立て地で、標高はマイナス0.6メートル。近くに住む女性(77)は言う。

「今では想像つかないけど、主人が『幼いころここで海水浴をよくした』と言っていた」

 駅の出入り口には防水扉もあり、水を防ぐ準備がしっかりとされている。

 東京メトロでは、浸水リスクのある駅で出入り口の止水板のかさ上げや完全防水化などを実施。浸水したらポンプで排水する対策を取っている。今年2月には、千代田線の北千住駅近くにある地上と地下をつなぐトンネル出入り口に防水ゲートを設置。1枚3トンの扉を3枚閉めて、大量浸水を防ぐ。

 都営地下鉄や大阪メトロでも、浸水対策や避難訓練などを行う。江東5区における大規模水害については、国や自治体も参加して避難対策などを検討している。

 しかし、決して万全とは言えない。地下鉄につながる地下街やオフィスビルなどの出入り口から、浸水してくるリスクがある。関西大学の石垣泰輔教授(防災水工学)はこう指摘する。

「バリアフリーが進み、水が入りやすくなっている施設もある。また、ビルによっては対策に差がある。1999年と03年に博多駅(福岡市)周辺で浸水した際には、2度目の浸水を免れたところと、2度とも浸水したところがあった」

 地下で浸水に遭遇したら、どう対応するべきか。

 石垣教授によると、水が入ってこない出入り口から脱出するのが重要だ。地上で10センチの浸水でも、水が階段に流れ込んで加速すれば、子供や高齢者が階段を上るのは危ない。

 地下街の出入り口にあるガラス扉にも注意が必要だ。消防法の関係で外開きになっており、そこが30センチも浸水すると中から開けるのは困難になる。

「階段で足をすくわれて転倒すると、どこまでも流されてしまうこともある。また、ガラス扉は40、50センチも浸水すると、水圧で砕け散ることもある。看板などが流れてくることもあり、危険は多い」

 防災の研究者とデザイナーらでつくるNPO法人「防災デザイン研究会」の担当者は、「生き残りたければ早く地上に出るべきだ」と助言する。浸水後に停電が起きると、エレベーターやエスカレーターが止まるリスクがある。暗闇の中で避難する可能性もある。

「地下にいると地上がどうなっているのか把握しにくい。初動が遅れて避難が困難になるリスクもある。博多駅周辺で浸水した際には、逃げ遅れて亡くなった人もいる。こうしたことを教訓とするべきだ」

(本誌・吉崎洋夫、松岡瑛理)

※週刊朝日  2020年9月18日号より抜粋

このニュースに関するつぶやき

  • 近くにある河川が氾濫して地下や地上にある駅が水没するって指標でしょ。それは理解できるが、高架上にある駅まで水没するって?。もし本当なら大阪市は上町台地以外すべて水没してるよ。
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