澤村、北、黒尾、及川、牛若、木兎……『ハイキュー!!』モンスターたちを率いたタダモノではないリーダーたち

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2020年09月13日 08:01  リアルサウンド

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 バレーボールに青春をかけた高校生たちを描く『ハイキュー!!』には、個性豊かなチームが揃い、各チームの特性もさまざまだ。それぞれのチームを指導するのはコーチや監督なわけだが、コート内外でチームメイトをまとめるのはキャプテンとなる。「(春高に出場しているチームで)凄い奴が居ないチームがそもそもねえよな」と菅原が言うが、強くて個性的すぎるプレーヤーたちをまとめるリーダーも一筋縄ではいかないメンバーばかりだ。


今回はハイキューに登場する主なチームのキャプテンについて比較していく。


縁の下の力持ち 烏野・澤村&稲荷崎・北

 稲荷崎高校の北はレギュラーではないが、試合中に投入されるとピリッと締まる。モットーは「ちゃんとやる」。練習も、健康管理も、食事管理も毎日きちんと積み重ねていく。「練習でやってへんことを本番でやろうとすんのは嫌いやけどな」というセリフから、その性格が表わされていると言えるだろう。


 一方、澤村も堅実なタイプである。烏野高校は猪突猛進なイメージを持たれがちだが根拠のない無茶はしない。さまざまなパターンの練習を重ねており、その練習の中ではやっているけど、本番では見せていなかったり、練習してきたものが試合中に完成するというケースはある。澤村もコツコツと練習を積み重ねるタイプであり、それがチーム全体に波及していると言ってもいいだろう。


 派手な選手に視線を奪われがちだが、そんな選手たちのフォローをし、時に喝を入れる。いないと、チームの安定が揺らぐ。土台がしっかりしているからこそ、チームメイトたちは好きにプレーできるのだ。


オールラウンダー 音駒・黒尾&青葉城西・及川

 チームメイトにいじられつつも、愛されているのが音駒の黒尾と青葉城西の及川だ。


 及川はセッターでありながら強烈なスパイクも打ち、守りもでき、ビッグサーバーだ。もちろんセッターとしての技術はピカイチ。それなのに、同級生からは雑な扱いを受け、2年生のメンバーからもちょっと舐められていたりする。それでも、肝心な試合のときには「信じているぞ、キャプテン」とはっきり言葉で伝えられるほど、信頼されている。


 黒尾も守りの音駒と言われる中で、リベロに次ぐレシーブ力を持ち、春高では澤村たち烏野を脅かすビッグサーバーとして育っていた。ミドルプロッカーとしては「相手チームからすると嫌なブロッカー」と評されるほど、優れたブロックも見せる。指導がうまく、他チームであるが烏野高校の月島がバレーボールを続けているのは黒尾の力が大きいだろう。しかし、同級生の夜久から受ける扱いはやはりちょっと雑で、後輩も緊張感なく接している。


 2人は、決して怒らない。悪く言えば、ヘラヘラしているということになるのだろうか。青葉城西と音駒にはビシッと叱る3年生が別にいてくれるから、うまく調和が保たれているのかもしれない。


 さらに、2人の共通点として、チームメイトに幼馴染がいるということもあげられる。どんなにカッコつけていても、カッコ悪いところを知られている相手だ。プレーどころか、生活の中でさえも「らしくない」ことはできないし、それでいて、「こいつがいるから大丈夫」という安心感もあるのではないだろうか。


プレーで引っ張る 白鳥沢・牛若&梟谷・木兎

 圧倒的なパワーでチームを引っ張るのが牛若だ。そのカリスマ性で後輩が自然とついてくる。チームメイトたちは牛若に一言かけられると不調も持ち直す。それに、他のチームからも一目置かれている。ジュニア合宿に参加した影山が佐久早から問われた言葉からもそれが分かる。「白鳥沢はなんで負けたの?」「若利君は不調だったわけ?」「どんな手使った?」「誰か若利君止めた??」と、他チームであってもその強さには全幅の信頼を置いている。


 パワーで引っ張るというのは誰でもできるわけではない。とにかくバレーがうまく、強くならなければならない。牛若のあとを継いでキャプテンになった選手は誰なのかは分からないが、また全く違うチームになっているのではないだろうか。


 全国で5本の指に入るスパイカーの木兎もプレーで引っ張るタイプ、と言いたいところだが、性格が末っ子気質なため、引っ張るというより、支えられている。副キャプテンの赤葦には、試合だけでなく、事務的な作業も支えてもらっていたのではないだろうか。しかし、木兎のプレーがチームの支柱になっていたことは間違いないし、試合ではそのパワーがチームを引っ張っていることが多いのは確かだ。


スタイルは違うがそれぞれ「パワーで引っ張る」という点では、共通しているのではないだろうか。


チームメイトからの圧倒的な「信頼」と「愛」

 個性派のチームをまとめているタダものではないキャプテンたちを見てきた。チームメイトの言葉の端々から、キャプテンが愛されている存在であることや、信頼されていることは想像できる。このキャプテンについていこう、キャプテンがいれば大丈夫、と思わせることができるのも人徳であり、才能だ。


 もともとそうだったのか、それともキャプテンというポジションにつくことで形成されたのかは、描かれず想像するしか無いが、作中でモンスター世代と言われているだけあって、キャプテンのうち3人がナショナルチームに所属した。選手にならなかった3人は警察官、日本バレーボール協会所属、農家になった。いずれも責任感が必要な職種である。大人になったそんな彼らの姿を見ても、しかるべき人がキャプテンを努めていたと言えるのではないだろうか。


(文=ふくだりょうこ(@pukuryo))


■書籍情報
『ハイキュー!!』(ジャンプ・コミックス)既刊44巻
著者:古舘春一
出版社:株式会社 集英社
https://www.shonenjump.com/j/rensai/haikyu.html


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