ケガでバレエ断念…女優・趣里「舞台で踊れてうれしい」 15歳で英国に留学経験も

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2020年09月15日 11:30  AERA dot.

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写真趣里 (撮影/写真部・掛祥葉子)
趣里 (撮影/写真部・掛祥葉子)
 朝ドラ「とと姉ちゃん」で一躍注目を集め、数々の人気ドラマや舞台、映画に出演する趣里さん。9月9〜18日に公演の舞台「わたしの耳」に出演する。ケガをきっかけにクラシックバレエの道を諦め、役者の世界へと舵を切りました。作家の林真理子さんが、趣里さんのこれまでの歩みを聞きました。

*  *  *
林:趣里さんは、2年前に主演なさった映画「生きてるだけで、愛。」で、賞もたくさんいただいたんですよね。

趣里:はい、うれしかったです。

林:うつで過眠症で、自分をコントロールできない女の人が、何とかそんな自分と決別したいともがいているという役で、狂気をはらんだようなコワい表情をするかと思うと、恋人としゃべるときは素っ頓狂なコミカルな表情をして、そして最後は、同じ人とは思えないぐらいの神々しいきれいな表情になって、ほんとにすごい演技だなと思いました。

趣里:ありがとうございます。私、ずっとバレエをやっていて、でもケガをしちゃって諦めざるを得なくて。そのときのどうしようもない気持ちや、何とか気持ちを奮い立たせたときのこと、いろいろなことを考えながらあの寧子という役をやってました。監督(関根光才)も長編は初めてで、思いが合ったというか、すごくやりがいがありました。

林:趣里さんは今はテレビよりも、映画とか舞台に軸を置いていらっしゃるんですか。

趣里:自分ではどちらが軸というふうには決めてないんですけれど、舞台は毎年2〜3本はやっています。

林:今度、いよいよ自粛明け初めてとなるシス・カンパニーの舞台にお出になるんですね。

趣里:そうなんです。コロナで「桜の園」も中止になってしまって。

林:そう! 私、チケット買ってすごい楽しみにしてたのに残念でした。今度は「わたしの耳」(9月9〜18日)というお芝居で、そのあとすぐ同じ作者の「あなたの目」(22日〜10月1日)というのをやるんですね。

趣里:ピーター・シェーファーという劇作家さんが舞台用に二つ書き下ろして、二つとも同じ役者さんが演じることもあるようなんですが、今回は別々のチームで演じます。

林:趣里さんは「わたしの耳」のほうにお出になるんですね。

趣里:はい。私、いつも変わった役が多いんですけど、今回は20代の等身大のふつうの女の子の役なんですが、とにかくセリフ量の多い男性2人に挟まれて感情を変化させていくので、大変です。

林:3人芝居で、共演はウエンツ(瑛士)さんと、もう一人は?

趣里:かもめんたるの岩崎う大さんというお笑い芸人さんなんですけど、劇団もやってらっしゃるんです。

林:演出はどなたなんですか。

趣里:マギーさんです。「ジョビジョバ」というコントユニットのリーダーをされている方なんです。

林:このごろわかんないですよ。外国の人だと思うと日本人だったり……。ナントカビッチとか。

趣里:ケラリーノ・サンドロヴィッチさんですか(笑)。いろんなお名前がありますよね。

林:舞台は何カ月ぶりですか。

趣里:1月のシス・カンパニーの「風博士」というお芝居以来です。

林:「風博士」も見ました。しかしこのコロナで舞台の方は大変だったみたいですね。

趣里:中止になった方々は、精神的にもけっこう大変だったと思います。私たちの仕事って本当に必要なのかなと思ったり、一方で誰か一人でも「見てよかった」と思ってくれる人がいたら、やる意味があるのかなと思ったりしました。でも結局「頑張ろう」という気持ちになりました。

林:私、このところ立て続けに歌舞伎を見に行ってるんですけど、客席が半分だから、皆さん「拍手を2倍します」という感じで、けっこう感動的で、一緒に行った人なんか泣いてましたよ。今度の「わたしの耳」も客席は半分にするんですか。

趣里:半分以下なんです。新国立劇場の小劇場なんですけど、普段は400人ぐらい入れるのが、今回は半分以下なんです。

林:ますますチケットが取れないですね。シス・カンパニーの公演って、みんなずっと行列して当日券を買うぐらいの人気だから。

趣里:でも、配信があるそうです。1日だけ。

林:芝居好きな人は、配信じゃ見た気がしないと思うな。

趣里:ですよね。生の良さっていうのは、やっぱりありますもんね。

林:シス・カンパニー代表の北村明子さんって素敵な方ですよね。元女優さんで。

趣里:すごく素敵な方です。私、バレエをしているときからシスさんの舞台を見に行っていたんです。そのときは、「絶対、女優さんなんかやっちゃダメよ」って北村さんに言われて、その後、お芝居を始めてからお会いしたときには、「やるならやんなさい。やんなきゃダメ」と背中を押していただいて、励まされました。

林:北村さんにもここに出ていただきましたが、「理想の劇場が自分の頭の中にあって、誰と誰にこういう役で出てもらって……と考えるのがいちばん至福のときだ」とおっしゃってました。今度のお芝居も、コロナのあいだ北村さんの頭の中に劇場があって、その中に趣里さんがいたんですよ。

趣里:うれしいです。北村さんのシス・カンパニーの舞台に出るというのが目標で、私は「アルカディア」(2016年)が初めてのシス公演だったんです。今回で4本目なんです。

林:私、趣里さんを初めて拝見したのが、その「アルカディア」だったんですよ。

趣里:えっ、そうなんですか?

林:趣里さんが部屋の中に飛び込んできて、相手役の男の人とちょっともつれるような感じになる場面がすごく鮮烈で、一緒に見てた中井美穂さんに「この女優さん、いいね」と言ったら、中井さんが「水谷豊さんと伊藤蘭さんのお嬢さんよ」って言って、それで初めて知ったんです。ご両親のお名前を出さずに、ご自分の力で活躍してらしてすごいなと思って、それ以来ずっと注目してたんです。趣里さんがあのスターのお子さんだってことを知らない人、いっぱいいると思う。

趣里:私、林さんが私を知ってくださっていたというのにびっくりで、うれしいです。

林:趣里さんは何歳からバレエを始めたんですか。

趣里:4歳からです。友達から誘われて、母に「やる?」って言われて、「うーん……」と迷いながら始めたんですけど、誘ってくれた友達はやめちゃって、私はずっと続けたんです。

林:3、4歳でバレエを始めて、だいたいみんな3回ぐらい発表会に出ると気がすんじゃって、「もういっか」って感じになるんですよね(笑)。「くるみ割り人形」を踊ると、本人も気がすむし、うちの娘も「トーシューズを履くまではやりたい」と言って、履いたら気がすんでやめちゃいました。

趣里:私はたまたま入った教室がバレエ団直属の教室で、先輩たちの公演を見たり、ちっちゃくても子役で出られたので、どんどん憧れがふくらんでいったという感じでした。舞台に立って表現したものに対してリアクションしてもらえるのが、すごく幸せだったんだと思います。だから正直、ちょっと心残りはあります。

林:ケガさえしなかったら、という思いはあるでしょうね。

趣里:いま舞台で時々踊らせてもらったり、MV(ミュージックビデオ)などで「ダンスしてください」って言ってくださったりすると、「ああ、踊れる」と思ってうれしいです。

林:バレエをやってる人って、しぐさとか歩き方がきれいだし、背筋がスーッと伸びていて、女優さんとして大きな武器ですよね。

趣里:うれしいです。

林:趣里さんはロンドンにバレエ留学なさってたんですよね。行ったのは15歳ですか。

趣里:15、16歳のころです。中学を卒業して、ロンドンは9月入学なので、それまで、日本のインターナショナルスクールのようなところに行って英語を勉強してから行きました。それでも現地の校長のあいさつがわからなかったです。

林:向こうでは寄宿舎生活だったんですか。

趣里:そうです。一部屋4人で、お風呂もシャワーが10個ぐらい並んでるだけで、浴槽はありませんでした。バスタオルを体に巻いてシャワーまで行って、シャーッと洗って、またバスタオルを巻いて部屋に戻るみたいな感じでしたし、食事は食堂で取っていました。

林:イギリスの寄宿舎の食堂なんて、まずそうですね(笑)。

趣里:おいしくはなかったかもしれません(笑)。

林:よく耐えましたね。

趣里:最初はホームシックになりました。毎日電話してしまって、国際電話だから金額がすごいことになっちゃいました(笑)。でも、イギリスの子も家族に電話して廊下で号泣してたのを見て、ちょっと冷静になれました。私だけじゃないんだ、頑張ろうと思って、それでちょっと変わった気がします。それぐらいレッスンもハードでしたし、加えて午前中が学科で、数学などの授業を受けていました。

林:でも、大ケガしちゃって、それで日本に帰ってきて、高校の卒業認定を取って大学に入ったんでしょう?

趣里:そうなんです。当時は何も事態がわからなくて、みんなどうするんだろうと思ったら、大学に入るみたいだから、私も勉強しなきゃと思って勉強して、受けて入りました。

林:帰国子女枠で入ったんですか。

趣里:いえ、一般入試です。

林:エラい! 専攻は何だったんですか。

趣里:文学部芸術学科です。演劇の歴史を学んだり、映画鑑賞をする授業や、身体表現の授業などがあって、おもしろそうだなと思い選びました。当時はバレエや舞台を見ると「ああ……」ってつらくなっていたんですけど、バレエ以外の表現もあるんだと思い始めて、アクターズクリニックという演技の学校に行き始めました。それが18歳ごろです。

林:どんなことを教わるの?

趣里:海外のメソッドを学んでいました。レッスンが週3ぐらいありました。ワークショップもありましたし、役づくりを細かく書いたノートを提出したりという感じで、けっこうハードでした。原作があれば図書館に行って読んだりもしました。

林:英語の本だったら原書で読めるんでしょう?

趣里:当時はまだ英語に慣れていたので何とか読めました。海外から先生がいらして行うレッスンも、英語でセリフを言ってました。

林:ブロードウェー進出のいちばん近いところにいたわけじゃないですか。

趣里:いえいえ、それほどじゃないんです。ブロードウェーは、バイリンガルぐらいしゃべれないとダメだと思います。英語をすごく頑張って勉強すれば、40歳ぐらいにはなんとかなりますかね?(笑)。でもまず、日本でお仕事をしっかりしないと、と自分では思ってるんです。

※【「けっこうナヨナヨしてて……」、若手女優・趣里が憧れる大女優とは?】へ続く

趣里(しゅり)/1990年、東京都生まれ。4歳からクラシックバレエを習い始め、高校に上がるタイミングでイギリスにバレエ留学。その後、ケガでバレエの道を断念し、2011年「3年B組金八先生ファイナル」で女優デビュー。以降、多数の舞台や映画、ドラマに出演。16年にはNHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」出演で注目を集める。18年の主演映画「生きてるだけで、愛。」で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。舞台「わたしの耳」(シス・カンパニー、9月9〜18日、新国立劇場小劇場)、「ハロルドとモード」(東京公演9月28日〜10月3日、大阪公演10月14〜15日)に出演予定。

(構成/本誌・松岡かすみ、編集協力/一木俊雄)

※週刊朝日  2020年9月18日号より抜粋

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