19歳の娘を過干渉に育ててしまったと悔やむ48歳母に、鴻上尚史が指南した「健康的に自立」させる方法

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2020年09月15日 16:00  AERA dot.

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写真鴻上尚史さん(撮影/写真部・小山幸佑)
鴻上尚史さん(撮影/写真部・小山幸佑)
 大学生になった娘は小さな失敗や予想外のことに弱く、過干渉に育ててしまったことを悔やむ48歳の母親。今後、娘にどう接すればいいか悩む相談者に、鴻上尚史が教示したのは「子供がちゃんと間違えるチャンス」の与え方。

【相談79】私は過干渉な母に育てられ、自分も娘に同じことをしてしまいました(48歳 女性 でーじー)

 鴻上さんいつも読ませていただき、助けていただいている気持ちです。有難うございます。今日は娘のことについてお聞きできればと思い書かせていただきます。私には息子22歳と娘19歳の二人の子供がいます。今は二人とも実家を出てそれぞれ一人暮らしをしながら大学に通っています。私も実家からは離れたところに嫁いでいます。

 今思えば私自身、過干渉な母に育てられたのですが、私も娘に同じことをしてしまいました。娘は小さいころから気性が激しいところがあり、私が見てあげなくてはという思いで育ててきました。そのせいか私の意見を聞いてから行動するようになってしまいました。大学生になった今でも人に驚かれるほど連絡が来ます。夫にも距離がおかしいのではないかと言われていましたが、私自身認めることができずにいました。娘に答えてあげたい、優しくしてあげたいと思い込んでいたのだと思います。

 しかし結果的に娘が失敗から立ち直る力や試行錯誤する経験を奪ってしまったのではないかと、とても後悔しています。外での娘は男女問わずお友達にも恵まれ頑張り屋ですが、小さな失敗や予想外のことに弱く感情を爆発させることも多いのです。自分にも自信がなく、悪い想像ばかりしています。そんな娘を見ていると、私の責任だと強く感じ、これからは娘も私も楽しく過ごしていくためにはどうしたらいいのかと考えても考えつかず、鴻上さんのご意見をいただけたらと思いました。読みづらい文章で申し訳ありません。宜しくお願い致します。

【鴻上さんの答え】
 でーじーさん。気付いたのですね。「私自身、過干渉な母に育てられたのですが、私も娘に同じことをしてしまいました」と気付いたのですね。

「私自身認めることができずにいました」と書くということは、今はもう認めることができるということですね。素敵なことじゃないですか。

 気付くということは、次のステップに進めるということです。自分を客観的に見られるようになったということですから。

 でーじーさんは、僕がこの連載で書いたことをご存知ですね。「子育ては子供を守り育てることではなく、健康的に自立させること」という言葉です。

 親の中には、自分の淋しさに負けて、子供の自立を阻む人がいます。子供が自立してしまうと、頼ってくれず、自分の存在意義を感じられなくなり、淋しくてたまらなくなるからです。

 でも、でーじーさんは大丈夫ですね。

「子供が自立して頻繁には電話がかかってこなくなる淋しさ」と「子供が健康的に自立する大切さ」を天秤にかけて、ちゃんと、「自立する大切さ」を選べますね。

 では、娘さんを健康的に自立するように導きましょう。

 それが、親としては、最後の子育てです。

 でーじーさんが娘さんについて書く「小さな失敗や予想外のことに弱く感情を爆発させることも多いのです。自分にも自信がなく、悪い想像ばかりしています」というのは、娘さんが健康的に自立してないからです。

 どうして感情を爆発させるかというと、でーじーさんが引き受けてくれると思っているからでしょう。

 くよくよと悪い想像をしてしまうのも、それをいちいち相談するのも、でーじーさんに頼りたいと思い、そして頼らせてくれるからだと思います。

 でーじーさんがここで、「娘が心配だ。やっぱり、私が面倒をちゃんと見ないと」と思ったら、この状況はいつまでも続きます。

「娘は弱いから助ける。助けるからいつまでも弱い」という「ニワトリが先かタマゴが先か」関係には出口がありません。お互いが不幸になるだけだと思います。

 それは、でーじーさんが書くように、将来、「娘が失敗から立ち直る力や試行錯誤する経験を奪ってしま」うことになるからです。

 これからも、娘さんからの相談の電話がかかってくるでしょう。

 その時に「こうしなさい」「こうするのがいい」「これに決まっている」という言い方ではなく、「あなたはどうしたいの?」「それはあなたが決めることよ」「私にはよく分からないわ」と、ゆっくりと娘さんが自分で思考できるように導くのです。

 一気に突き放すと、たぶん、娘さんは大混乱に陥るでしょう。

 そうではなく、ゆっくりとゆっくりと、娘さんに自分で考えるように導くのです。もうすぐ二十歳になるんだから、自分で考えなさいと。

 で、娘さんがどんなに「それは違うと思う」という判断を出しても、命にかかわらない限り、でーじーさんは口を出してはいけません。

 子供には「間違う権利」があります。

 子供から「間違う権利」を取り上げてしまっている親がいます。

 全部先回りして、全部準備して、全部アドバイスして、子供が絶対に間違わないようにする親です。それはつまり、子供から間違うチャンスを取り上げているのです。

 子供は間違えて成長します。間違えたことは、忘れないからです。でも、他人のアドバイスは忘れます。特に、うまくいったアドバイスは忘れます。

 数学でいきなり「正解は、xイコール25だよ」と教えられたようなものです。

 その場では助かりますが、何の応用もききません。

 自分で考えて、答えを出して、間違って、また考えて答えを出して、そうやって人間は成長するのです。

 まさに、それがでーじーさんが書く「失敗から立ち直る力」です。

 ですから、でーじーさん。娘さんがちゃんと間違えるようにチャンスをあげて下さい。

 娘さんは、間違って、感情が爆発して、すぐにでーじーさんに電話をかけてくるでしょう。

 助けたい、アドバイスしたい、すべて受け入れたい、という気持ちをぐっと我慢して、「それは大変だったね。でも、もう二十歳になるんだから、自分で考えないと。あなたは次にどうしたいの?」と言って下さい。

 少しずつ少しずつ、そうやって娘さんを健康的に自立するように導くのです。

 それが、でーじーさんの大切な仕事だと思います。

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このニュースに関するつぶやき

  • これ、親子関係ではないけど、私もやっと昨日 落し込めたとこでした☆
    • イイネ!3
    • コメント 1件
  • ひょっとしてだが人よりはるかに感情のふり幅が大きい場合、発達障害を疑ってみた方がいい時もあるよ。
    • イイネ!21
    • コメント 0件

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