コロナ禍でも「学校に行きたくない」「死にたい」 SNS相談に寄せられる子どもたちのリアル

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2020年09月16日 15:22  弁護士ドットコム

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都内にある事務所の一室で、カウンセラーなどのスタッフがチャットで相談にのっている。相手の顔はわからないが、「学校のクラスの雰囲気になじめない」「死にたい」といった文字がパソコンの画面に流れてくる――。NPO法人「東京メンタルヘルス・スクエア」(東京・西池袋)によるSNS相談の一コマだ。今年はコロナ禍もあり、相談が増えているという。同団体のカウンセリングセンター長、新行内勝善(しんぎょうち・かつよし)さんに取材した(ライター・渋井哲也)。


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●匿名性が高いツールでは「話しにくい相談内容」が寄せられる

2017年10月、神奈川県座間市で男女9人殺害事件が発覚した。



被告人と被害者である若者たちの接点は、ツイッター。若者たちは「死にたい」と書き込んでいた。事件をきっかけに2018年3月から、厚生労働省が自殺対策の一環として、SNS相談をしている民間団体への補助事業をはじめた。東京メンタルヘルス・スクエアは、その一つだ。



東京メンタルヘルス・スクエアのSNS相談「こころのほっとチャット」は、2019年度の利用が、のべ8492件(男性1375件・女性6928件・相談者は7405人)だった。基本的には10代、20代の若者中心だが、50代、60代も利用している人がいるなど、年齢層は幅広いという。



相談のツールとして使っているのは、東京メンタルヘルス・スクエアのホームページ上にあるウェブチャット(現在、テレワーク中でシステム上アクセスできない)のほか、LINEとツイッター、フェイスブックと複数ある。それぞれに特徴があるそうだ。



「ウェブチャットは、アカウント登録の必要がないために、最も匿名性が高いです。たとえば、性的虐待など、非常に話しにくい相談内容が寄せられます。フェイスブックは、実名の可能性が高いSNSであるため、内容の真実性も高いものになっています。そのため、優先的に相談にのるようにしています」(新行内さん)





●制限時間をもうけているワケは?

SNS相談は、時間制限のないところもあるが、東京メンタルヘルス・スクエアでは「1回50分」の制限時間を設けている。



新行内さんは「相談者も、相談員も、集中力が持つのはだいたい50分ぐらいです。時間制限があると、お互いにその時間を有効に使おうとします」と話す。たしかに、長々と相談したい場合もあるが、堂々めぐりになることも少なくない。"つながっている感覚"のSNSだが相談員の人数も限られている。



「ただし、緊急対応の場合は、50分を超えることもあります。それに、明確に自殺のリスクが高い場合は警察に通報しています。警察が個人を特定して、保護することもあります。また、虐待の相談で、児童相談所につなげたケースもあります」



あるとき、LINE相談で「死にたい」と送ってきた人がいた。やりとりをする中で、自殺多発地域に向かっていることがあった。相談員は、自殺の危険が高いと考え、警察に通報し、発信者情報等から個人を特定した。その後、移動している中で、当事者を警察が保護した例もある。このとき相談員は深夜までやりとりをしていたという。



「いずれも、会話の内容などから、相談者の地域がわかったケースですが、警察に『緊急性がない』と判断される場合もあります。もちろん、相談員としては、相談者を信じて、寄り添って聞いています」(新行内さん)



東京メンタルヘルス・スクエアは、厚労省の補助事業以外も、地方の教育委員会の「教育相談」や、行政の「子ども相談」や「自殺防止のための相談」を請け負っている。また、今年は、新型コロナ関連のメンタルヘルス相談も関わっている。LINE登録は、すでに7万人以上ある。それだけ、相談したい人がいるということだ。



●SNS相談は"怖さ"が少ない

9月10日から16日にかけては、国が定めた「自殺予防週間」だ。しかも、ことしは新型コロナ感染拡大があり、日常の行動が制限されて、メンタルヘルスへの影響も懸念されている。東京メンタルヘルス・スクエアに寄せられる相談件数も増えているという。



「子どもたちに関しては、夏休みが短かったものの、夏休み明けの9月からは、毎年のように"学校へ行きたくない"と感じる子もいるでしょう。学校で相談できればいいのですが、スクールカウンセラーは相談日や場所が決まっています。一方で、SNS相談の場合は時間や場所は問われません。学校に行けなくても、目の前に家族や友だちがいてもできます。登下校中に相談している場合もあります。気軽に相談できるのが利点です。



コロナ禍では、活動が制限されています。SNSで話すことで、なにかしらの返事がほしくても、友だちだと遠慮したり、期待した反応がなかったりする場合があると思います。そんなとき、SNS相談は、専門家であるカウンセラーがその気持を汲み取ってくれるため、"怖さ"は少ないのではないでしょうか。どんな悩みでも相談してほしいと思っています」(新行内さん)





●東京メンタルヘルス・スクエアのSNS相談「こころのほっとチャット」

https://www.npo-tms.or.jp/service/sns.html



●厚生労働省のSNS相談

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/soudan_sns.html



【筆者プロフィール】渋井哲也(しぶい・てつや) フリーライター。中央大学文学部非常勤講師。東洋大学大学院文学研究科教育学専攻博士前期課程修了。教育学修士。若者の生きづらさをテーマに、自殺・自傷行為、いじめや指導死、ネット犯罪などの取材を重ねる。著者に「学校が子どもを殺すとき」「ルポ平成ネット犯罪」など。


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  • 毎日毎日をしっかりとこなしてきた人達には、後から追いつこうにも一生かけても追いつけない大きな開きができます。それなりにこなしておくのは大切ですよ。
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