なぜ単線の路線で電車はぶつからないの? いちばん分かりやすい「単線」と「閉そくの仕組み」のお話

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2020年09月19日 10:03  ねとらぼ

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写真なぜ「単線」で電車はぶつからないのでしょう……?
なぜ「単線」で電車はぶつからないのでしょう……?

 都会育ちの子にとって、鉄道路線は複線が当たり前です。道路と同じように、電車は一方通行で、並んだ線路を走り、行き違います。そんな私が田舎で受けたカルチャーショックの1つが「単線」でした。



【画像】コレ1枚で分かる、鉄道の「閉そく」の仕組み



 私と単線の出会いは小学生の頃、富山地方鉄道の小さな駅でした。両親が東京生まれ東京育ちの私には「田舎」がありません。田舎がある子がうらやましい。そこで、仲良しだったご近所さんの帰省にくっついて富山へ行きました。そのご近所さんの実家の最寄り駅が単線で、プラットホームが1つ。えっ、何これ……。



 初めて単線を見たときは「反対方向の電車は来ないのかな」と思いました。でも、右に行く電車も左に行く電車も同じ線路と知ったときは「どうして衝突しないんだろう」と不思議に思いました。そして、途中の駅ですれ違う様子を見て「あぁ、ぶつからないんだ」と安心したものでした。



 でも、それぞれが勝手に走っていたら「駅と駅の間の線路上で鉢合わせしないのかな」とも思いました。もともと電車が好きな子どもでしたから、この体験は鉄道に興味を深めていくきっかけの1つになりました。



 その後、全国の鉄道を乗り歩いてみると、東京のように「複線や複々線で電車が2〜3分おきに来る鉄道のほうが特殊だ」と思うようになりました。



 単線の列車の行き違いと言えば、2020年9月1日に兵庫県の北条鉄道で「行き違い設備」が完成しました。



 これまで北条鉄道は、起点から終点まで1つの列車が往復するだけでした。それが、この新しい行き違い設備によって同時に2本の列車を運行できるようになりました。そのキモが「ICカード」を使った日本初の方法にあります。



 今回は、列車を安全に運行するためにとても大切な鉄道の仕組み「閉そく」を解説します。



●鉄道の「閉そく」って何? 「走っちゃダメな区間」と「通行手形」がある



 列車は運行スケジュールが定められています。あらかじめ決められた時刻で走れば、単線でも車両同士が駅で安全にすれ違えます。



 しかし何らかの事情で片方の電車が遅れた場合はどうでしょう。到着予定の列車が遅れているのに反対側の電車が時刻を厳守して発車してしまうと、駅間(1本の線路上)で鉢合わせになります。ダイヤの乱れ、駅員や運転士の勘違いなど、さまざまな原因が事故につながってしまいます。



 そこで考え出された仕組みが「閉そく区間」と「通票(つうひょう)」です。



 線路をいくつかに区切って「その区間に入る列車は1つ」と限定します。この区間を閉そく区間といいます。そして「閉そく区間ごとに通行手形を1つだけ作り、閉そく区間には通行手形を持った列車しか入れないようにしましょう」という仕組みにしました。この通行手形を「通票」といいます。



 原始的な通票は金属製の棒のような形でした。「一目で通票と分かる」かつ「簡単には複製できない」ためです。その形状から「スタフ(竿)」と呼ばれました。



 駅長がスタフを運転士に渡すと出発可能になります。列車はとなりの駅まで走って、スタフをその駅長に渡します。そのスタフを反対方向の列車の運転士に渡すと発車OK。これでこの区間を走る列車は「1つだけ」にできます。バトンリレーのような感じですね。



 スタフは「閉そく区間に1つだけ」と厳格に決められたため、列車は上りと下りが対になります。常に行ったり来たりの単純往復しかできませんが、鉢合わせにはなりません。



 しかし運行本数の多い幹線になると困ることが出てきます。「旅客列車の直後に貨物列車を走らせたい」とか、「各駅停車を駅に待機させて急行列車を優先したい」など。線路を有効に使いたい場面があります。



 そこで考え出された方法が「通券(つうけん)」です。通券はスタフ(通票)を補完する紙片で、2つの駅間で打ち合わせの上で発行されました。しかし、常にスタフを持つ駅が通券を発行する権利を持つと決められたので、「片方向」しか続行運転できない課題がありました。



●「両方」から列車を発車できる仕組み「タブレット(通票)方式」とは



 これに対して、「両方」から列車を発車できる仕組みとして「タブレット(通票)方式」が導入されました。



 タブレット(通票)は金属の円盤。大きさはティーカップのお皿くらいです。これを革製のバッグに入れます。このバッグには大きな金属製の輪っかが付いていて、駅員と運転士さんはこの輪の付いたバッグを受け渡します。



 この様子が、ローカル線を紹介する写真や映像で「昔ながらのタブレット交換」などと紹介されるものです。



 そのために「大きな輪っか」をタブレットだと思いがちですが、タブレットの本体はバッグの中に入っている円盤です。



 タブレット方式の手順は複雑です。



 各駅にはとなりの駅と対になる「タブレット閉そく機」があり、そこに複数のタブレットが格納されています。タブレット閉そく機は電信回線で結ばれています。



 駅員がとなりの駅と連絡を取って、ボタンと電鈴を使って定められた手順を実行してタブレットを取り出します。タブレットを運転士に渡し、運転士はタブレットをとなりの駅に運びます。到着した駅で駅員がタブレットを受け取り、タブレット閉そく機に格納します。



 タブレットは複数あるので、どちらの駅からも取り出せます。ただし「1つ取り出したら、それをどちらかの駅で格納するまで次のタブレットを取り出せない」という仕組みになっています。これによって「閉そく区間に1つの列車だけ」の状態となります。



 タブレットは真ん中に丸、四角、三角、楕円のいずれかの穴があいています。基本4種類あります。この穴の形がタブレット閉そく機と対応しており、閉そく機とタブレットの穴が一致することで作動します。隣り合った閉そく区間は異なる穴のタブレットが使われ、混同されないというわけです。



 もっとも近年は「タブレット」といえばiPadのような液晶画面の機械(タブレット端末)ですし、鉄道業界でも乗務員や駅員が業務や顧客サービスのためにタブレット端末を使うようにもなっているのでややこしいです。とはいえ、通券のタブレット(通券)方式は過去のものなので混同されることはなさそうです。



●ローカル線の北条鉄道に採用された「最新式の通票方式」に注目 ローカル線も進化している



 電気技術が発達し、列車の位置を線路側で検知できるようになりました。こうしてタブレット方式は「自動閉そく式」に置き換わりました。



 自動閉そく式では、閉そく区間の両側に信号機を置いて管理します。「閉そく区間に列車が存在しない」ならば両側とも青信号になり、列車が閉そく区間に侵入すれば両側の信号機が赤になります。これで「1つの閉そく区間に1つの列車だけ」となります。駅間の閉そく区間を複数に分割すれば「一方通行状態でも複数の列車を続行運転できる」ようにもなりました。



 もっとも、自動化で便利になる反面、弊害もあります。「列車を検知する装置のコストが高い」ことです。また、行き違いを行う駅では「駅員が」信号やポイントを操作する必要もあります。これを遠隔操作するシステムもありますが、やはり高価です。



 そこで北条鉄道が導入した仕組みが「票券指令閉そく式」です。



 簡単に言うと、かつての金属製タブレットの代わりに「ICカード」を、タブレット閉そく機の代わりに「ICカードリーダー」を使います。



 運転士は閉そく区間用のICカードを持ち、駅の出発時と到着時にICカードリーダーにピッとかざします。このICカードを反対側の列車の運転士と交換します。その情報を本社の運転指令員が確認して、各列車の運転士に出発を許可します。



 この方式のメリットは、信号機方式に比べて設置、運用コストが低いこと。そして、行き違い駅に1日数本のためだけに専任の係員を配置しなくても済むことです。



 運行本数が少なく、売り上げ規模も小さいローカル線で、閉そくシステムが幹線の単線と同じではキツい。今後赤字に悩みつつも、行き違い設備を増やしたい/利用者の利便性を高めたいというローカル鉄道で、票券指令閉そく式が広まるかもしれません。



 感染症の流行などに起因する景気の冷え込みで「閉そく感が漂う今日このごろ」とか、病気の名前だと「腸閉そく」とか。何となく後ろ向きなイメージがある「閉そく」ですが、鉄道ではそんな「閉そく」がとても大切なのです。



(杉山淳一/乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。JR路線の完乗率は100%、日本鉄道全路線の完乗率は99.69%(2020年3月時点))


このニュースに関するつぶやき

  • 単線は、都内でも、西武多摩湖線や、西武国分寺線が有りますね。でも、モロに青梅街道を横切っているので、道路混雑する原因になっています。
    • イイネ!8
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  • 昔、東北本線三沢駅の助役が下り列車の存在を酒酔いで失念。上り列車用の通行券が出ないのを故障と思い発券機を針金でこじ開け、既に下りが接近中なのに通行券を渡してしまった大事故あったね
    • イイネ!28
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