一軍の舞台で残した爪痕 広島の高卒2年目・羽月隆太郎の武器は“思考力”

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2020年09月19日 11:24  ベースボールキング

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広島・羽月隆太郎 (C) Kyodo News
◆ 「一つ一つの選択を間違えて後悔したくない」

 大きく見せようと背伸びはしない。セ・リーグ野手最小に並ぶ身長1メートル67の小兵。広島・羽月隆太郎の思考力は、地に足がついている。

 自慢は50メートル5秒7の走力。二塁に三塁、遊撃をこなす堅実な守備力もある。犠打も上手い。条件を見れば、1人何役もこなす典型的な「ユーティリティー」タイプ。ただし、羽月はそれをよしとしない。むしろ危機感すら覚えている。

 「僕のタイプは打たないと、一軍に上がってもベンチを温めることになる。守備固めでも代走でもなくて、僕がなりたいのはレギュラー」


 主戦とする二遊間には、菊池涼介や田中広輔らがいる。とはいえ、二軍で悠長に出番を待ち続けるつもりは毛頭ない。高卒1年目の終えたオフシーズンの過ごし方をターニングポイントと捉えていた。

 「これからのプロ野球生活、一つ一つの選択を間違えて後悔したくない。一つ間違えるだけで取り返しのつかない故障をしたり、目標から大きく道を外れることになるかもしれない」


 オフ期間は、選択の連続である。体を大きくするか、維持すべきか…。秋季キャンプで鍛えた打撃・守備を見直す環境づくりも、自己責任のもとで求められる。

 プロ入り後初のオフ期間。同僚と過ごすことも考えたが、単身修行を決断した。拠点としたのは、広島市内のトレーニングジム。オリックスやMLBのナショナルズでトレーナー経験のある、高島誠氏に師事した。

 自身の故障歴も考慮して、「体を動かしながら鍛える」ことに重点を置いた。ウエートトレーニングのみに頼らず、障害物を乗り越えながら移動する「パルクール」など体の動かし方を学んだ。

 また、オフ期間ながら実戦感覚も軽視しない。同施設には打撃投手とのフリー打撃が行える環境が整っていた。さらに、オリックスのエース・山岡泰輔、ソフトバンクの高橋礼らも同施設で自主トレを行っていたことで、実際に対戦する機会にも恵まれた。


◆ 自身を成長させる“妥協なき思考力”

 考え抜いた選択が正しかったことは、今季の台頭が示している。

 8月7日の阪神戦、「2番・二塁」でプロ初先発・初出場を果たすと、いきなり2安打・3打点の活躍。

 約3週間の一軍同行で20打数4安打、打率は.200ちょうど。5度の先発機会を与えられるなど、首脳陣に強烈な印象を残して二軍に戻った。


 こだわりは、練習から手に取るように分かる。フリー打撃では徹底して左方向へ打ち返し、セーフティーバントを積極的に取り入れる。

 「自分の足を生かすために、練習から強く低いゴロを打ち返そうと思っている」

 長所を生かす術は、二軍首脳陣から叩き込まれた。


 ただし、「コツコツと逆方向」だけではない意外性がある。

 初出場した同7日の阪神戦では右中間への2点三塁打、同14日の阪神戦でも、右中間への二塁打を放った。小柄のイメージとは少し離れた屈強な下半身は、オフ期間のトレーニングの賜物だろう。


 高卒2年目のドラフト7位。将来性重視の指名から、早速一軍の戦力となった。

 妥協なき思考力が小兵を大きく伸ばしている。


文=河合洋介(スポーツニッポン・カープ担当)

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