82歳の超人気インスタグラマーも ひとり時間を楽しむシニアたち

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2020年09月19日 16:00  AERA dot.

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写真木村眞由美さんのインスタグラム
木村眞由美さんのインスタグラム
 新型コロナウイルスの感染を避けるため、自宅にこもり続けるシニアは少なくない。そんな中、82歳のインスタグラマーや90歳のLINEユーザーなど、「ひとり時間」を楽しむ人もいる。

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 82歳のファッショニスタが選ぶのは、鮮やかな赤い口紅。真っ白なシルバーヘアに映えて美しい。デミタスカップを右手にカフェで粋なポーズを取るのは、インスタグラマーとして有名な木村眞由美さんだ。神戸市のセレクトショップ「hananoki」の経営者でもある。

 日々、インスタグラムにファッショナブルな装いの自分の写真を投稿する。フォロワー数は7万1千人強。昨年秋には、自分がモデルを務めるファッション本を出版した。コロナ禍でも毎日、健康のために店に顔を出している。

「チェリーピンクや赤、黄色など、きれいな色の服を選んで憂うつな空気を吹き飛ばすようにしています。コロナ禍ではマスクでイヤリングなど耳のアクセサリーができませんから、指輪を二つ三つ重ねたり、大ぶりのペンダントで遊び心を出してます」

 インスタを始めたきっかけは、夫に先立たれた喪失感。「ぽっかりと心に穴が開いた」というひとりの生活で、買い物もできなくなった。ご飯を作るのも食べるのも嫌になってやせた。

 心配した2人の息子が提案した。

「お母さん、インスタをやってみないか。仲間が増えるよ」

 スマホの操作すらろくにわからなかった。インスタなども知らなかった。それでも挑戦しようと思ったのは、息子たちがこうアドバイスしてくれたからだ。

「得意のファッションを掲載しては」

 店の40代のスタッフも応援したいと撮影役を買って出てくれた。

 もちろん、インスタへの写真の投稿やメッセージの打ち込みは、自分でやっている。

「はじめて写真をアップしたのは5年前。『いいね!』は二つでしたよ。それが10になり、いまでは7万のフォロワーがつきました。ひとり暮らしの自宅に帰ると、インスタに『おかえりー』なんてメッセージが届いたりするので、コロナで会えなくてもお友達や仲間とつながっている喜びがあります」

 70代や80代の人にも挑戦してほしいと、エールを送る。

「はじめは、お料理の写真などをアップするのもいいですよ。高齢でひとり暮らしだと作るのも面倒になりますが、インスタにアップする、と思うと嫌でも作らざるを得ません」

 LINEに挑戦する高齢者も少なくない。岡山県在住の岡佐智子さん(90)もそのひとりだ。

 シニア向けスマホを昨年末に買ったが、使うのは通話だけだった。そこにコロナが襲って関東に住む娘一家やひ孫たちと会えなくなり、電話でのやりとりだけになった。

 5月ごろ、佐智子さんはLINEでビデオ通話を試みた。長女の玲子さんが、LINEのアプリをスマホにダウンロードしてくれていたのだ。

「何カ月かぶりに母の顔を見ることができて、涙が出ました」

 そう語る玲子さんは、家族の動画や写真を送り、メッセージのやりとりも始めた。

 佐智子さんは言う。

「間違ってカメラを押したり、失敗もあります。でも、近所に住む長男のお嫁さんや行きつけの美容院など、みんなが『今日はスマホのどこを聞きたいの?』って教えてくれるんです」

 東京に住む孫も、ひ孫3兄弟の写真を送ってくれる。

「『かわいいね。これから出かけるね』とメッセージを送ると、『だいじょうぶ?』との返事がきました」

 と佐智子さんは笑う。

 こうしたやりとりを家族とするために、コロナ禍でSNSやパソコンに挑戦するシニアの人たちが増えている。

 全国約200カ所でパソコン教室を展開する「わかるとできる」の広報担当者によれば、政府の緊急事態宣言が解除された後の7月から9月上旬までの入会者数は、前年同期と比べて大幅に増えた。特に60歳以上の人たちが、スマホやテレビ会議システム「Zoom」(ズーム)で「友達や家族と話したい」と意欲をみせている。

 積極的に外に出て、ひとり時間を活力に変える人もいる。

 宮内庁長官を長年務めた羽毛田信吾さん(78)は、コロナ禍で畑仕事にいそしんだ。政府の緊急事態宣言下で、館長を務める昭和館(東京都千代田区)や理事長を務める団体での勤務も少しばかり減った。自宅から徒歩10分の畑では、キュウリやスイカが取れた。知り合いへのおすそわけで、会話も生まれた。

「コロナで大変な状況にある人たちを思うと、心苦しさもあります。それでも、ささやかな畑で土に触れて、植物の生命力にいやされる思いでした」

 今年は、植えたゴマで油を搾る予定だ。

 上皇さまと上皇后美智子さまの恋のキューピッドを務めた織田和雄さん(84)は、25年前からひとり暮らしを続ける。

「コロナ禍でも生活は変わりません。毎日3食を自分で料理して、テニスクラブが再開してからは週2日、2セットほどテニスの試合をする生活です。すこぶる元気ですよ」

 コロナ禍でも続けた学びが仕事につながったのは山崖佳昭さん(80)だ。大学時代は工学部で学んだが、文豪の名著を原書で読みたいと、学生のころからロシア語の勉強をしてきた。定年退職後、学び直そうと自治体のロシア語講座に申し込んだ。講座が終わってからも同じシニアの受講仲間と相談し、同好会のような形で同じ先生に師事した。コロナ感染症が拡大しても予防措置をしてレッスンを受けた。

 気楽な趣味のつもりだった。だが、7月に突然、知り合いを通じて、企業からビジネス書類の翻訳作業を頼まれた。A4書類25枚を2週間以内に仕上げなければならず、ハードな内容だった。

「ロシア語はニッチな分野なので、白羽の矢が立ったのでしょう。重圧はありましたが、信頼する先生の下、学び続けてよかった」

 実際、シニアの語学熱は衰えず、駅前留学NOVAでも60歳以上のオンライン受講数がコロナ以降、1.6倍に増えた。(本誌・永井貴子)

※週刊朝日  2020年9月25日号より抜粋

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