「コロナ禍にも悲観せず」笑いと自虐の『シルバー川柳』、前向きさ失わない高齢者の強さ

7

2020年09月21日 09:30  ORICON NEWS

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ORICON NEWS

写真『シルバー川柳』2020年の入選作。この句の裏側にはホロリとさせられるドラマが…(C)ポプラ社
『シルバー川柳』2020年の入選作。この句の裏側にはホロリとさせられるドラマが…(C)ポプラ社
 『ばあさんの 手づくりマスク 息できず』(埼玉県・82歳男性)。なんとユーモラスで、どこか切なく、クスッと笑わせるフレーズだろうか。もはや風物詩となった『シルバー川柳』の入選作20選が、8日、公益社団法人・全国有料老人ホーム協会により発表された。今年は新型コロナウイルスにまつわる作品が多く、『耳鳴りも ピーシーアールと 音がする』(千葉県・73歳男性)、『頭頂部 だけが見えてる オンライン』(北海道・53歳男性)など、不安の多い日々をも明るく乗り越える、ユニークな力作が集まった。

【川柳一覧】「テレワーク やってみたいが 俺…」コロナに負けない高齢者の自虐!シュールで笑える傑作選

■コロナ禍でも応募増、外出自粛で介護の限界を詠んだ句も

 回を重ねるごとに、幅広い年代から注目を集めるようになった『シルバー川柳』。SNSなどを中心に、「今回もキレッキレ! ギリギリの自虐ネタは強い」、「シュール、ブラックの絶妙な塩梅」、「ユーモアセンスがすごい。脱帽です」と、いつにも増して若年層から絶賛の声が殺到している。

 今年の応募期間は、3月1日から6月14日の3ヵ月半。コロナ禍による自粛期間と重なったこともあり、当初は応募数の減少が心配されていた。だが、いざ募集を開始するとコロナ関連の句を中心に応募数は増加。主催する全国有料老人ホーム協会の古川祥子さんは、当時の状況を振り返る。

 「みなさん外出もできない状況だったので、応募が減るのではと危惧していたんです。でも、家にいる時間、老人ホーム内で過ごす時間が長くなった分、仲間たちで熱心に句を作って応募してきてくださったようです。最終的には、例年以上に多くの句が集まりました」(古川さん)

 とはいえ、とくに感染リスク、重症化リスクが高いとされる高齢者。外出はもちろん、身内に会うことすらままならない日々が続いている。あふれるユーモアが特徴の『シルバー川柳』とはいえ、今回ばかりは現状を悲観するような内容にはならなかったのだろうか

 「意外にも、悲観した句はそんなに多くなくて。ソーシャルディスタンスを生かした夫婦の関係性や、コロナに関係なくずっと家にいることなど、日常をコロナと紐づけた句が多かったです。あったとしても、唯一の外出先である病院に行けなくて誰とも会えない、という寂しさを吐露したものくらい。ただ、家にこもり介護サービスを利用できないことで、介護の限界を思い知ったことを表現した句もありました。自治体でデイサービスを休業要請する判断もあったため、自宅で老々介護をするしかないご夫婦も多くいて。そういった実情を綴った句には、介護する側の限界を感じましたし、本当に胸が痛みました」(古川さん)

 老人ホームでももちろん、コロナ禍による影響は絶大だった。

 「家族との面会にも制限が出たため、オンライン面会も行っていますが、直接会えないことで認知症が進んでしまう不安があるかもしれません。また、入居者の方だけではなく、介護スタッフ側にも影響は多大。介護中の感染予防はもちろん、業務外でも県外に出られないなど、必死で緊張した日々を送ってきました」

 このようなままならない日常ではあるものの、「外出できない、人に会えないからこそ、川柳に応募することが外との繋がり、仲間との繋がりになった」と古川さんは語る。

 「状況が状況だけに、悲観していると思われがちなのですが、高齢者の皆さんはすごく前向きです。それはおそらく、長年生きてきた生活の知恵であり、精神力や社会に対する順応力がすごく高いからだと思います。今の高齢者は、戦争やオイルショックなど数々の緊急事態を乗り越えていらした方々。生きてきた中で、つらいことも笑いに変えたほうが楽しく生きられると知っているんですよね。孤独とかマイナスなことも、プラスに詠んでいらっしゃる方が多かったです」

■川柳に秘められた夫婦のドラマ、「生きていたら、給付金も管理してくれたんだろうなぁ」

 確かに入選作を見ると、コロナ禍という未曽有の事態をテーマにしながらも、それを笑いや自虐に変え、逞しく乗り越える高齢者たちの様子が伺える。『要請を される前から 日々休み』(福井県・55歳男性)、『円満の 秘訣ソーシャル ディスタンス』(北海道・77歳男性)など、なんとも秀逸な作品ばかりだ。そして、一見クスッと笑えてしまうような句に、じつは秘められたドラマがあるのも、『シルバー川柳』の特徴であるという。単行本を担当するポプラ社の浅井四葉さんは、川柳の背景をこう明かす。

 「『ばあさんの 手作りマスク 息できず』はとても人気の高かった句なんですが、作者の方は『裁縫好きな奥さんが作ってくれたんだけど、生地が厚すぎて呼吸が苦しい。これを付けてると、逆にヤバいかも』とお話しされていて。奥様はご主人のことを心配して頑丈なマスクを作り、ご主人はぶつぶつ言いながらも使っている。結局仲良しなんだなというのが、すごく愛らしくてステキだなと思いました。『武勇伝 俺の話は 無観客』は、毎年応募してきてくださる50代女性からの投稿。島根にある絵画教室での一コマだそうです。『教室に来ているおじいちゃんが、それぞれ武勇伝を話しているんですが、誰も聞いてないんです』と。あちこちで、無観客状態で武勇伝が語られているというのを想像したら、いっそう面白く感じました」(浅井さん)

 そして、中にはホロリとくるような裏話を聞くこともあるそう。

 「『妻が言う ひとまず預かる 給付金』(大阪府・70歳男性)という句。じつは作者の方の奥様は、去年お亡くなりになったそうなんです。『自分がサラリーマンだったとき、給料も奥さんに全部任せていたから。生きていたら、給付金も管理してくれたんだろうなぁと思いながら詠んだ』と、教えてくださいました。川柳を始めたのも、闘病中だった奥様に聞かせるためだったそうです。聞いてみないとわからないドラマが裏側にあるんだなと、毎年実感します」

 楽しく笑える言葉の中に、その人の生き方や日常のわびさびまでもが潜んでいる。それこそが、『シルバー川柳』の醍醐味なのかもしれない。

 そんな『シルバー川柳』も、今回で記念すべき20回目を迎えた。コロナ禍という状況下で、はからずもシルバー世代の“芯の強さ”が表れた、真骨頂ともいえる内容となった。

 「当初はこんなに続くとは思っていなかったんです。題材や言葉の制限はなく、とにかく楽しんでもらうことを目的にやってきました。今回のコロナもそうですが、世相が詠まれているぶん、過去の作品を振り返ると時代背景も見えてくるのではないでしょうか。高齢者の方はインターネットやSNSで繋がることも少ないと思いますし、川柳を詠むことで共感を得たり、人と繋がっていることを感じてほしいと思います。若い世代の方々にも、ぜひ楽しんでいただきたいですね」(古川さん)

 コロナ感染防止のための制約が続くなか、世代を問わず、不便や不安を感じる人も多いだろう。そんなときこそ、壁を乗り越える強さや笑い飛ばす前向きさに満ちた『シルバー川柳』から、生き方のヒントを見つけてみるのもいいだろう。

(文:川上きくえ)

このニュースに関するつぶやき

  • そりゃ、年金額はコロナ禍と関係ないから減らないし。
    • イイネ!0
    • コメント 0件
  • 外出できない 人に会えないからこそ 川柳 …
    • イイネ!0
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(2件)

前日のランキングへ

ニュース設定