田中みな実を輩出した青学ミスコンが盛り上がる陰で、消費されてく「女子大生たち」

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2020年09月21日 11:30  週刊女性PRIME

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週刊女性PRIME

SNSでも話題!『青山ミスコン2020』(公式ツイッターより)

 各大学が秋学期もオンライン授業の展開を発表し、一年で一番盛り上がる行事である文化祭も、史上初のオンライン開催が検討されている中、今年は青山学院大学のミスコンがSNSを中心に盛り上がりを見せている。

 そもそもミスコンがSNSのタイムラインを埋めるようになったのはいつからだろうか。なぜ彼女たちは長時間ライブ配信をし、SNS上で一般人にもリプライ(返答)を返すのか。

ミスコン運営は「大学非公認」?

 去年は慶應義塾大学の不祥事などもあり、年々立場が危うくなっているミスコン。同じ大学内でミスコン団体が2つ立ち上がった上に、ファイナリストからのセクハラ被害も報道され、ネットを大きく騒がせた。しかし、今年の『ミス青山コンテスト 2020』は、非常にスタンダードな盛り上がりを見せている。

《ファイナリストたちのレベル高すぎ》

《こんなの全員かわいくて選べないだろ》

 と、出場者の顔面偏差値の高さがネットでは話題になっているのだ。毎年ミスコンの金字塔として話題にはなりやすい青学だが、なぜここまでレベルの高い女性が揃うのか。この問題について考察する前に、そもそも「ミスコンとはどうして行われているのか」を、ミスキャンパス評論家の霜田明寛氏に聞いた。

「ミスキャンパスの歴史については諸説ありますが、野際陽子さんも初期のミス立教だったといわれているくらいなので、70年ほどの歴史があるとされています。特に盛り上がり始めたのはここ20年くらいですね。

 1999年にはミス慶應・中野美奈子、2001年には同じくミス慶應に青木裕子などが選出、のちにキー局にアナウンサーとして入社しています。ミスキャン出身の芸能人やアナウンサーが増えて、成功例が目に見えはじめた。出場する側としても“ミスミャンパスコンテストに出ればアナウンサーになれる”という希望が持てるようになって、レベルが高くなっていったという経緯です

 そんな長い歴史のあるミスコンだが、各大学は運営に関わっていないことが多いのだという。

実はミスキャンパスコンテストの設立・運営は、基本的には大学が公式に行っているものではありません。ほとんどの大学は、広告研究会というサークルに所属する大学内の学生が主導して開催されています。大学側がPRとして行っているものではなく、あくまで“広告の研究”を意義としている広告研究会が、独自で学生マーケティングや代理店的な働きを経験するために行っていることなんです

 大学が文化祭を開催する秋時期に向けて、7月頃からファイナリストが発表される。このファイナリストの選出やスカウトも、広告研究会が行っているのだそう。

「10年前は若者向けの新しいコスメブランドや、学生に商品をサンプリングしたい企業がスポンサーになることが多かったですね。文化祭のコンテスト会場に来る大学生にクレンジングやワックスなどのサンプルを配ったりしていました。

 企業からしても、普通の代理店を通すよりも安く、フォロワー数のいる大学生女子が使えますから、最近は大手通信会社のような大口スポンサーもつくようになりました」

ノーギャラで「企業案件」を強いられる

 そもそも、学内に設置された投票箱に学生や来場者が投票するだけだったミスコン。それがいつの間にかネットやSNSを通して「ネット投票」なる一般人向けの投票も始まり、エントリーした彼女たちの活動の場も大きく広がってしまった、と霜田氏。

「2012年くらいから、候補者たちがみんなTwitterをやるようになりました。これは時代の流れとして始まったことですが、とあるネット投票のプラットフォームサイトも出現して、そこから一気に、ミスキャンパスコンテストが一般人や大人にも開かれたものになっていきました。

 最初はネット投票のためのパフォーマンスのひとつだったライブ配信も、今ではマストの活動になっていますね。今年はリアルのイベントがほとんど行えないので、ネット活動の比重が必然的に高くなっている印象です

 インスタグラムで美容商品のPR投稿をしたり、文化祭前には何十時間も生配信ライブを行ったり、無限に来る一般人からのリプライを返したりと、傍目に見ても忙しそうなミスキャンパスたち。某大学の元ミスキャンパスコンテスト出場者に話を聞くと、これらの活動のほとんどが「ノーギャラ」であるということに愚痴をこぼした。

「ミスコンが始まってからは、さまざまな理由で実稼働させられる時間が本当に長いです。配信活動には“一定期間内に〇〇時間以上配信する”などのノルマがあるし、それ以外でもイベントや撮影、スポンサー企業との顔合わせに呼ばれたりと毎日ミスコンのために奔走するけれど、私たちのところにはほとんどギャラが入ってこないんです」

 彼女たちはミスコンを盛り上げ、グランプリ獲得に向けて奔走する。そこで生まれた利益はどこへいってしまうのか、彼女はこう続けた。

「ミスコンを運営している広告研究会は、起業家を目指す子などが多くいて、学内でもいわゆる”意識高い系”の子が多く在籍するサークル。トップになると100万円もらえるっていう噂もあるくらいなので、私たちの稼働分で発生する利益は広告研究会に落ちていっているんですよね。スポンサー企業に対しては、就活用のエントリーシートを見てもらって内定の根回しをしてもらう、なんて話も聞いたことがあります。

 その割にスポンサーを取る営業活動も、私たちミスキャンが請け負ったりしているんです。でも、自分の前に先代ミスキャンの先輩たちが稼働してくれているから、それを思うと自分たちも断れない。SNSの運用の仕方や、PR投稿の内容についても細かく注意される。やってることはインフルエンサーマネジメントの会社と一緒です。そうまでしてSNSをチェックされても、自分の窺い知らないところでキレてくる通称“クソリプおじさん“もいるし、気苦労は絶えなかった……」

 ネットで一般投票が始まったことで、学生だけでなく大人に向けてもアイドル活動のようなことをしなければならなくなっているミスキャンたち。中には言葉遣いを注意してくるお門違いな“クソリプおじさん”や、写真から居場所を特定する“特定班”的なミスコンオタクがいたり……。一般人相手の広報活動も、我々が思う以上のストレスを感じるもののようだ。

私益にならない努力も、就職に活かせ

 学生のうちから美人であることを利用され、搾取されているともいえる彼女たち。配信ライブの投げ銭もPR投稿も、個人的にインフルエンサーとして活動すれば私益にすることができるのに、ミスキャンとしての活動ではそれがひとつも自分の利益にならないようだ。

 なぜ彼女たちは、そうまでしてミスコンに出場するのか。就職セミナーを開講し、多くのミスキャンパスをアナウンサーとして送り出してきた霜田氏の見解はこうだ。

「やっぱりマスコミ就職を目指すために、という子は多いですね。高校のうちからアナウンサーの道を目指している子は青山・慶應などの花形ミスコン学校を集中的に受験する子もいます。

 ファイナリストになっていればエントリーシートの足切りにあいづらいですし、人前に出る場数を踏まされている分、面接の場でも舞台慣れが活かせます。

 あとは、自分のSNSについたフォロワー数を利用して、そのままインフルエンサーになっていく子はいたりします。本人たちにも努力したなりのスキルが身についていくという利点はあります」

 やはり青学や慶應など、ミスコン金字塔ともいえる大学に入学する子たちは、最初から芸能界を目指して入学しているパターンも多いという。青学が毎年レベルの高いミスコンを展開するのも、滝川クリステルや田中みな実などアナウンサー輩出校として有名であることは大きな理由のひとつと言えそうだ。

 しかし、その全員が本当にアナウンサーや芸能人になっていくわけではない。ミスキャンとなった彼女たちは、ミスコン終了後どうなっていくのか。

そもそも“学生時代の思い出に”くらいの気持ちで参加する子は、人前に出て活動することの大変さを知って、ミスコン終了後は普通の女子大生に戻っていきます。活動を始める前は、こういった負の部分は知らずに活動し始めますから。

 でも結局、その努力は本人たちの努力ですし、ついたスキルも本人たちのスキルですから。就職セミナーをやっていても、全員をアナウンサーとして送り出せるわけではないですが、ミスキャンで培った自己プロデュースのスキルで、就活はしっかり成功させていきますよ。ミスキャン活動は大変だけど無駄なことではないな、ということを実感します」

 凡人の目から見て、美人は得でいいと映ることもある。しかし、好奇の目に晒されることで不当に被る不利益もあるし、美人だからって努力せずに未来を掴み取っていけるわけではない。大学ミスコンの中には、そんな「社会の縮図」がしっかり再現されていた。

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