一番“強烈”なのは…見ていても痛さ伝わる、レスラーの「打撃技」といえば?

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2020年09月22日 17:00  AERA dot.

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写真バラエティ番組で“ビンタ”のイメージが付いた蝶野正洋(右) (c)朝日新聞社
バラエティ番組で“ビンタ”のイメージが付いた蝶野正洋(右) (c)朝日新聞社
 プロレスの醍醐味は『打撃戦』にある。

 丸太のような腕から繰り出す強烈な打撃には、一撃必殺の説得力がある。また受け止めるための鍛え上げた肉体も見るものを熱くさせる。

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 ビンタ、パンチ、チョップ……。打撃技には様々なものがある。

 中には拳を使用した『パンチ』など使用禁止の反則攻撃もあるが、5カウントまで許されるのもプロレスの懐の広さ。名選手ほど反則攻撃を交えつつ、攻撃の流れを作り出すのに長けている。

 基本、反則技とされる『パンチ』の名手は、アントニオ猪木だ。

『ナックルアロー』とも呼ばれ、試合の流れを変える際に多用される。相手を掴み、弓を引くように大きく振りかぶり右拳を相手の額にぶつける。場内を興奮の渦に巻き込む、猪木のレパートリーの1つだ。

『ナックルアロー』から延髄斬り、フォールへの必殺フルコース。新日本が金曜夜8時生中継時代、放送時間ギリギリに収まるこのムーブはファンを熱狂させた。

 テリー・ファンクの『左ストレート』でも会場が大いに盛り上がった。テキサス・ブロンコは流血しフラフラになりながらも、状況を打開するためパンチを放った。ベビー(=善玉)であるテリーの勝利を信じるファンの熱狂を生み出した。

 左腕をフォークで刺されながらも、兄ドリーと共にアブドーラ・ザ・ブッチャー&ザ・シーク組に殴りかかっていったシーン(77年12月15日、東京・蔵前)。そして強烈なパワーを誇るスタン・ハンセン、ブルーザー・ブロディに怯まず出していった左拳。テリーのファイティング・スピリットに何度も鳥肌が立った。

 天龍源一郎の『グーパンチ』も強烈そのものだった。

 左拳を立て続けに相手の顔面に打ち込むスタイルは、まるでボクシングの『ジャブ』。その破壊力は凄まじく、95年12月8日(東京・大田区体育館)の一騎討ちで対戦した神取忍の顔面を腫れ上がらせた。

「覚悟は決まっています」と神取が発言し、「だったらいいよ」と答えた天龍の男気。『グーパンチ』を通じたプロレス魂のやり取りだった。

 プロレスにおいて拳攻撃は反則だが、平手打ちはルール内。俗に言う『ビンタ』は、『張り手』などと呼ばれる。最初に思い浮かぶのは、拳同様にアントニオ猪木だ。

 試合中はもちろん、素人相手にも気合いを入れるサービス『闘魂注入ビンタ』で使用する。これは当時国会議員(90年)だった猪木が受験を控えた予備校生に腹部へパンチさせたところ、急所気味に入った。キレ気味の猪木が反射的に『張り手』を出してしまったのが始まり、とも言われている。

 蝶野正洋は、どちらかと言えばテレビの印象が強くなった。年末恒例、日本テレビ系『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』(絶対に笑ってはいけないシリーズ)の、月亭方正(山崎邦正)にビンタをするイメージが世間にも刺さっている。

「若い子らの間では、『ビンタの蝶野』のイメージなので、それを売名に使っていきたい」と防災・救命の啓発活動も行っているほどだ。

『張り手』1つで、試合中に強烈な説得力をみせるのが鈴木みのる。

「誰もが使う技だけで明らかに他のプロレスラーと違う姿がみせられる。形だけで必殺技なんて作るもんじゃねーよ」(鈴木・NJPW公式サイト)

 基本と言われる技でも使い方で個性が出せる。『張り手』1つで試合の流れ、場内の雰囲気、勝敗の行方すら左右してしまう。

『張り手』同様、手の平の手首寄り部分で相手を叩くのものが、骨法の技でもある『掌底』。鈴木の『張り手』も、形によってはそう呼ばれることもある。

『掌底』を使用するレスラーは多いが、獣神サンダー・ライガーほど印象的な使い手はいない。相手のアゴを下から突き上げるように射抜く通常形の他、試合展開によって様々なものを使う。一見すると単純に見える打撃であるが、それを多種多様に使用できたのがライガーのプロレス頭脳の良さゆえだ。

 強烈さでトップクラスなのは、ビッグバン・ベイダーの『ベイダー・ハンマー』。オープン・ハンド・ブローと呼ばれ、手の平を開いた状態で相手の首などを殴りつける。元NFL選手で190cm200kgとも言われた巨体を生かし、「相手を思い切り殴りたい」とUWFインター時代から使用し始めた。のちに森嶋猛(ノア)が、同様の技を『モリシ・ハンマー』として使用した。

『チョップ』と呼ばれる手の平横(小指側部分)で殴る技も、各時代に多くの名手がいる。

 力道山の『空手チョップ』は時代を超え語り継がれる必殺技。世界中の猛者を打ち破り、今日へのプロレス道を切り開いてくれた。

 橋本真也の代名詞『袈裟斬りチョップ』も記憶に残る。相手の頸動脈へ手刀を叩き落とす打撃として、橋本の強烈な持ち技だった。

 そして小橋建太の剛腕からの『逆水平チョップ』。05年7月18日、東京ドームで佐々木健介と繰り広げたチョップ合戦は永遠に語り継がれるだろう。

 最後にジャイアント馬場の『脳天唐竹割り』について触れたい。

『16文キック』とともに馬場の代名詞の1つ。この技を出すだけで会場が沸き、試合の流れも変化した。最も有名なのは81年12月13日の東京・蔵前でスタン・ハンセンが全日本初登場を果たした時だ。馬場は乱入の形で現れたハンセンに対し、怒りのチョップを繰り出し額を割った。数ある打撃技の中で最大破壊力なのは、この技だったかもしれない。

 MLBの剛腕投手ランディ・ジョンソン(マリナーズ他)の例を出す。160キロを超える真っ直ぐを武器に303勝を挙げたレジェンド。特徴は身長208cmの上背とメジャー屈指の腕の長さだ。

「長身で腕が長い方が指先のスピードは速い。釣竿は長い方が遠くまで投げられるのと同じで、強く速く振れる。また筋力トレーニングで腕が太くなり過ぎると重くなり、速さが妨げられる」(姫野龍太郎氏・理化学研究所『Ballpark奇跡のピッチング術』05年成美堂出版)

 物理上では腕が長いほど手先を速く振れる。長身細身(身長209cm)で余分な筋肉もついていなかった馬場のチョップの速さは、ずば抜けていたことになる。投球とチョップは異なるが、馬場は元巨人の投手だったというところも興味深い。

 現実世界で味わうことのできないものをプロレスには求める。だからこそ打撃戦の『撃ち合い』は、究極のエンターテインメント。音、飛び散る汗、表情。見ている側にも痛みが伝わってくるが、これらは日常では決して味わえないものだ。レスラーたちの強靭な肉体とタフな精神力にはあらためで脱帽する。(文・山岡則夫)

●プロフィール
山岡則夫/1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌『Ballpark Time!』を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、編集・製作するほか、多くの雑誌、書籍、ホームページ等に寄稿している。Ballpark Time!公式ページ、facebook(Ballpark Time)に取材日記を不定期更新中。現在の肩書きはスポーツスペクテイター。







このニュースに関するつぶやき

  • 地獄突きだろ、この一撃で相手は地獄に落ちる!
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  • やっぱ、スタン・ハンセンのウエスタンラリアットとハルク・ホーガンのアックスボンバーだろ?
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