技術ではなく気持ちの問題? 楽天・涌井秀章が「復活」できた理由とは…

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2020年09月23日 16:05  AERA dot.

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写真楽天1年目の今季、見事な復活を果たした涌井秀章 (c)朝日新聞社
楽天1年目の今季、見事な復活を果たした涌井秀章 (c)朝日新聞社
 楽天のベテラン右腕・涌井秀章がチームをけん引している。

 西武、ロッテと渡り歩き、昨オフにトレードで楽天に移籍。近年は苦しい投球が続いていたが、今シーズンは本来の調子を取り戻したかのように見える。何がこの男を変えたのだろうか……。

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 これが「終わりが近い」とささやかれていた投手なのだろうか。昨年はわずか3勝に終わり限界説まで飛び交っていた涌井。今年は開幕からローテーションを守り、8月26日まで無傷の8連勝をマーク。8月5日のソフトバンク戦では、球団初のノーヒットノーランにあと一歩と迫る、1安打完封勝利を収めた。

「成績はもちろん、野球に対する姿勢など存在そのものが大きい。素晴らしい投手が加入してくれた」

 エースと呼んでもおかしくない活躍をみせる涌井を、楽天球団関係者は絶賛する。

「若い投手が多いので参考になることばかり。特にオンとオフの切り替え。普段は気さくな人なのに、ユニフォームを着ると人が変わる。自分が納得するまで練習し、その間は人を寄せ付けないオーラがある」

 高校時代から人並外れた練習量には定評があった。30代半ばになってもチームトップクラスを誇る。

 昨年との違いは何なのか。

 技術的には即効性ある新球種をマスター、投球スタイルをマイナーチェンジしたことが大きい。

「真っ直ぐとそこまで変わらない球速で食い込んで行くから、打者も狙いを絞ることはなかなかできないと思う。ストライクゾーンで動いて行くから」(涌井)

 マスコミでも話題となった『こやシン』と呼ばれる速いシンカー。小山伸一郎投手コーチから教えてもらったもので、130キロ台と球速もありバットの芯を外すことができる。『ツーシーム』とも言えるこの球を生かすことで、球数減につながった。それを従来の多彩な球種と組み合わせ、緩急をより使えるようになった。

「総合的な技術の高さは変わらない。それよりも気持ちの充実度がまったく違う」

 プロ入り時から見続けてきた在京テレビ局野球担当は、不調の原因は気持ちの問題だったと推測する。

「西武、ロッテ時代にはモチベーションがかなり下がった時期もある。楽天に移籍したことで、涌井自身の中に高まるものがあったのではないか」

 また、再び“やる気”を取り戻した理由の一つに、MLBでサイ・ヤング賞候補となるほどの活躍を披露しているダルビッシュ有(カブス)の存在もあるという。

「(これまでの涌井のキャリアの中で)いくつかのポイントがあった。1つ目は西武時代の11年オフ、当時日本ハムのダルがメジャー挑戦した時だ。お互いが認め合う素晴らしい関係で投げ合った時は絶対に引かないほど、ライバル心を燃やした。そんな存在が日本球界からいなくなり、心に穴が開いたようだった」

 切磋琢磨した球界屈指の名投手2人。公私ともに仲の良かったダルビッシュがメジャーに移籍し、国内での刺激がなくなった。

 悩み抜いた末の決断。涌井は13年オフにFA宣言、9年間在籍した西武からロッテ移籍する。

 西武時代は08年に日本一を経験。自身も最多勝2回(07、09)沢村賞(09)など、多くのタイトルを獲得した。『西武の涌井』は自他共に認める日本を代表する右腕となったが、モチベーションを保つことができなかった。投手としての本能が移籍を決意させた。

 しかし環境を変え自身に刺激を与えようとしたが、うまく行かなかった。

「ロッテは出身地・松戸市のある千葉のチーム。周囲も『里帰りだ』と盛り上がった。でも本人はいたって冷静だった。『幕張(ロッテ本拠地)も、所沢(西武本拠地)も高速道路を使えば、松戸までそんな変わんない』と言っていたくらい。チームも優勝を狙えるほどではなく、涌井自身もますますしんどくなったのではないか」

 涌井がかつて在籍した松戸シニアのチームメートは、ロッテ移籍後の涌井の様子に関して回想する。

 ロッテ移籍1年目の14年は8勝12敗と不甲斐ない成績。そこへ現れたのが、当時日本ハムの大谷翔平(エンゼルス)だった。

 投打の二刀流で結果を残し、近未来のメジャー挑戦も確実視されていた怪物。ダルビッシュに感じたような熱い気持ちが蘇ったのだろうか。

 涌井は翌15年に15勝を挙げ、大谷と最多勝のタイトルを分け合う投球を見せた。しかしロッテではそこまでが限界だった。

 そして17年オフ、2つ目のポイントを迎える。

 メジャー挑戦を目指し再びFA権を行使するが、獲得球団は現れずロッテ残留となったのだ。

「メジャー願望はダルの影響も大きかった。活躍をリアルタイムで見せられ、現地の話をダル本人からも直接聞いた。『最高峰の舞台で再び投げ合いたい』と思った。条件が悪くても渡米するつもりだったが、それすら叶わなかった。失望感は大きく、側から見ていても元気がなかった」(在京テレビ局野球担当)

 目標が見えなくなり、投球自体も右肩下がりに落ち込んで行った。

 このままプロ生活も終焉を迎えるのか。そんな時に声を掛けてくれたのが、西武時代の同僚だった楽天の石井一久GMだった。

「GM就任直後から石井GMは涌井が欲しかったらしい。涌井も慕っていて、以前からメジャー時代の話など、いろいろと話していた。石井のためなら、と気持ちが再び高ぶったとしてもおかしくない。就任直後はいろいろ言われたが、石井GMはかなりのやり手ですよ」(在京テレビ局野球担当)

 石井GMによる涌井獲得が3つ目のポイントと言えるだろう。

 紆余曲折の末、かつての栄光時代と同様の投球を見せている。予想外と言っては失礼だが、楽天にとっては嬉しい誤算でもある。

 現実的に涌井のメジャー挑戦はなくなった。しかしダルが将来、日本復帰する可能性も考えられる。その時まで涌井が一線級で投げていれば、これだけ楽しみな対戦はない。涌井の完全復調、そして更なる進化は、ファンに大きな夢を見させてくれる。









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  • 過去を振り返らず、未来を見過ぎず、登板したゲームに勝つ事だけなのだろう。。とにかく今日頑張ってね。
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