ダルビッシュの「魔球」にライバルも羨望。興味深いデータの数々

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2020年09月25日 06:31  webスポルティーバ

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福島良一「MLBコアサイド」

 1973年の初渡米から47年にわたってメジャーリーグの造詣を深めてきた福島良一氏に、さまざまな魅力を伝えてもらう「MLBコアサイド」。今回はダルビッシュ有投手について語ってもらいました。




 ナ・リーグ中地区で首位を走るシカゴ・カブスのエース、ダルビッシュ有投手が今シーズンは一層の輝きを放っています。

 9月23日現在、リーグ1位タイの7勝、6位の防御率2.22、4位タイの88奪三振と、自身初となる最多勝と2度目の奪三振王タイトルを狙える位置につけています。9月の初めには「投手三冠」に躍り出るなど、今季のサイ・ヤング賞の最有力候補のひとりと言って間違いありません。

 ダルビッシュ投手のピッチングについて、MLB公式サイトが興味深いデータを載せていました。その記事によると、今季のダルビッシュは時速90マイル台後半(約158キロ)から60マイル台前半(約100キロ)まで幅広い球速を自在に操り、そのなかで実に11種類もの球種を使い分けているのです。

 まず注目したいのはフォーシーム、いわゆる速球(ストレート)です。ダルビッシュ投手がフォーシームを投げた時、バッターは47スイング中、空振りは21回。これはメジャーの先発投手でトップの空振り率44.7%(25スイング以上)です。

 また、2ストライクと追い込んでからのフォーシームでの奪三振率も、メジャートップの32.5%をマーク。今季は平均球速で自己最高の95.9マイル(約154キロ)を記録するなど、増した速球の勢いが活躍している要因のひとつだと思います。

 ただ、そのフォーシームの威力をより効果的にしているのが、ダルビッシュ投手の持つ多彩な変化球でしょう。米データサイト『ベースボール・サバント』によると、今季のダルビッシュの球種は大まかに、速球(フォーシーム)、シンカー(ツーシーム)、カットボール、スライダー、カーブ、ナックルカーブ、スプリットの7種類あると紹介していました。

 そのなかでも注目したいのは、カットボールが全体の47.5%も占めている点です。昨年トミー・ジョン手術から完全復活した時、ダルビッシュ投手はカットボールを投げる割合を増やしました。その結果、カットボールで多くの三振を奪えるようになったので、今季新たな決め球になったのだと思います。

 8月13日のミルウォーキー・ブルワーズ戦、ダルビッシュ投手は7回一死までノーヒットノーランという快投を演じました。その試合は7回1安打1失点11奪三振でマウンドを降りましたが、実にカットボールで15個もの空振りを奪い、決め球として8つの三振も取っています。

 ところが、8月23日のシカゴ・ホワイトソックス戦では、ダルビッシュ投手のピッチング内容が一変しました。破壊力抜群のホワイトソックス打線に対し、右打者が多いことも考慮したのか、スライダーを多投したのです。結果、スライダーで空振り14個、計7つの三振を奪いました。

 ダルビッシュ投手はホワイトソックス戦後、右打者のストライクゾーンからボールゾーンに逃げていく「チェース(追いかける)スライダー」が効果的だったと言っています。登板3日前にクリーブランド・インディアンスの若きエース、シェーン・ビーバーの投球映像を入手し、新たな魔球を研究したそうです。

 それによって、スライダーの球速は5キロ前後アップし、本人は「(球速が上がったことで)カッター(カットボール)とスライダーの見分けがつかないと思った。カッターの偽装になる」とコメント。右打者の外角ボールゾーンにカットボールと高速スライダーを投げ分けることで相手を幻惑させていたのです。

 この試合最大の見せ場は、4番ホセ・アブレイユとの対決でしょう。アブレイユは直近の2試合で5本塁打を放ち、今季のア・リーグMVP最有力候補に挙げられるキューバ出身のスラッガーです。

 そのアブレイユに対し、ダルビッシュ投手は2回にいきなり先制ホームランを打たれてしまいます。カウント2−1からのカットボールでした。すると、4回の第2打席では初球から立て続けにフォーシームを投げ、強打者アブレイユに真っ向勝負。最後は時速97.4マイル(約156.7キロ)のシンカーで詰まらせて二塁ゴロに打ち取りました。今シーズン一番の名勝負だったと思います。

 ダルビッシュ投手の投げるシンカーも、相手にとって実にやっかいな魔球です。ホワイトソックス戦では2番のヨアン・モンカダに対し、この日最速となる98.3マイル(約158.1キロ)のシンカーで空振り三振を奪いました。158キロのシンカーを打つのは、メジャーの強打者たちでも至難の業でしょう。

 そうかと思うと、9月4日のセントルイス・カージナルス戦ではスプリットを多投したり、9月9日のシンシナティ・レッズ戦では左の強打者ジョーイ・ボットーをカッターで空振り三振を奪うなど、対戦相手や試合ごとに軸となる球種を使い分けています。

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「配球がまったく違うタイプの投手になるのが一番のキー」

 本人もそう言っているように、今季のダルビッシュ投手は試合によって様々な表情を見せてくれます。これはまさに、持ち前の向上心や探求心で日々進化を遂げている証でしょう。

 9月20日に放送された米スポーツ専門局ESPNの全国中継「サンデーナイトベースボール/カブス対ツインズ戦」では、先発したダルビッシュ投手の多彩な球種やその軌道などを徹底分析していました。異なる球種をほぼ同じ高さのリリースポイントから投じられる美しい軌道に、実況アナウンサーや解説陣は「ワオーッ!」と大絶賛。全米中のファンにダルビッシュ投手の魅力を伝えていました。

 ダルビッシュ投手のバリエーション豊かなピッチング内容には、ライバルたちも一目を置いています。サイ・ヤング賞を争うライバルのトレバー・バウアー投手は「ダルビッシュのゲームはなんて刺激的なんだ。彼ほどの才能はないけれども、彼のようにできればなりたい」と語っています。

 世界最高峰のメジャーリーグでも、ダルビッシュ投手ほど速いボールを投げ、なおかつ多彩な球種を自在に交えるピッチャーはなかなかお目にかかれません。毎回パーフェクトゲームを期待したくなるぐらい「アンヒッタブル」な投手です。

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