話題の映画『ミッドナイトスワン』に感動!トランスジェンダーを演じる草剛の名演と孤独な少女との絆に泣く!

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2020年09月26日 18:22  Pouch[ポーチ]

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【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。

今回ピックアップするのは草剛主演の最新作『ミッドナイトスワン』(2020年9月25日公開)です。

草さんがトランスジェンダーを熱演していることが話題の本作。試写で見させていただいたのですが、草さんが本当に素晴らしかったし、作品にも圧倒されました! まずは物語から。

【物語】

ニューハーフショークラブで働いているトランスジェンダーの凪沙(草剛)のもとに、広島の実家から、親戚の娘・一果(服部樹咲)がやってきます。母親(水川あさみ)に育児放棄されていたため、預かることになったのです。

一果は愛想のない子で、さっそく学校でトラブルを起こし、保護者として凪沙が呼び出されるほどの問題児。しかし、バレリーナに憧れる乙女な一面もありました。ふたりは生活を共にするうちに次第に心を許していき、凪沙は「一果の母になりたい」と本気で願うようになるのですが……。

【自分らしく生きることが困難な世界】

草剛さんに圧倒される映画でした! 

男の体に生まれてしまったことに苦しみながらも、自分に正直に「いつかは体も女になりたい」と、女性として生き抜こうとしている凪沙。しかし、自分らしく生きることさえ、マイノリティにとっては茨の道。世の中は不公平で、かつ、社会の底辺で生きる凪沙のような人間は、這い上がることもできないのです。

そんな凪沙が希望を託したのが一果。

虐待を受けて傷つきながら生きてきた一果の唯一の希望がバレエだと知った凪沙は「バレリーナになる望みをかなえてあげたい」と、サポートするのです。

もう本当にお母さんみたいでしたよ。ニューハーフクラブでもトラブルを起こした同僚にとことん寄り添ってあげるなど、凪沙は本当に面倒見がよく、母性が強い女性なのです。

【願いが指の隙間からハラハラと落ちていく……】

一果は、バレエの才能を開花させていくにしたがって、表情も明るくなっていき、年相応の可愛さも見せていきます。そんな彼女を菩薩のようなまなざしで見つめる凪沙……。

でも彼女の愛情も、一果の母親が迎えに来ることで壊れてしまいます。二人の時間を失った凪沙は、ずっと願っていたことに挑戦し、一果の母になる強い決心を抱きますが……。

彼女の願いはいつも叶わず、指の隙間からハラハラとこぼれてしまう……。

凪沙が「なんで私ばっかり」と涙を流すシーンが何度かあるのですが、努力してもチャレンジしても、家族の理解を得られず、社会の厚い壁に跳ね飛ばされてしまう凪沙。

そんな彼女を見ていると、側に駆け寄って背中をさすってあげたり、抱きしめてあげたりしたくなります。もう本当に気の毒で……。

【内田英治監督の素晴らしい演出と脚本に拍手!】

『ミッドナイトスワン』の構成は巧みで、トランスジェンダーの主人公の葛藤だけでなく、そこに孤独な少女のエピソードを重ねて、物語にすごく厚みを出しています。

また一果の物語にもかなり比重を置いていて、彼女とバレエとの出会いやバレエ仲間との友情、母親との関係など、暗黒の少女時代から人生を切り開いていく様も丁寧に描かれているところも良かったです。

内田英治監督のオリジナル脚本ですが、トランスジェンダーの世界と少女が夢見るバレエの世界が、ひとつの作品の中で分断されることなく美しく繋がっていて、本当にミラクルな作品なのです!

【草剛の神パフォーマンス!】

またキャストも全員が好パフォーマンスを見せています。一果を演じる新人女優の服部樹咲さんは、4歳からバレエを始め、国内外のコンクールで上位入賞。

本作でもその実力を余すところなく見せてくれます。女優デビュー作なのに、大人を全く信用していない孤独な少女の心情をきちんと伝える表現力は見事でした。

個人的には一果の親友のりんを演じた上野鈴華さんもよかった。お金持ち自慢の親にうんざりし、危ないバイトに手を染めながらも、バレエを生きがいにする少女の悲哀をしっかり演じきっていました。一果とりんのシーン、すごく好きだったなあ。

そして草さんは、スクリーンではもはや草剛を完全に封印。凪沙としての人生を、その苦しみや悲しみや愛を、時にはしなやかに、時にはスクリーンにたたきつけるような迫力で演じ、圧巻のパフォーマンスでした。2020年の映画賞レース、主演男優賞候補として確実に乗ってくる名演です!

決してハッピーな気持ちになる映画ではないのですが、女性なのに男の体で生まれてしまったために、一生あらがえない苦しみと闘い続けるトランスジェンダー凪沙。映画を観た後の余韻がすごく、様々なシーンがいまも脳裏に焼き付いて離れない傑作です。

執筆:斎藤 香(c)Pouch

『ミッドナイトスワン』
(9月25日(金)より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー)
監督&脚本:内田英治(「全裸監督」「下衆の愛」)
出演:草剛、服部樹咲(新人)、田中俊介、吉村界人、真田怜臣、上野鈴華、佐藤江梨子、平山祐介、根岸季衣、水川あさみ、田口トモロヲ、真飛 聖

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