種村有菜が語る、漫画制作とゲームの仕事のちがい 「出過ぎず、黙らず、いいなと思った案はどんどん言うように」

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2020年09月27日 10:01  リアルサウンド

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 美しい絵と優しい物語が紡ぐ絵本には、いくつになっても心惹かれるもの。童心にかえるように絵の世界に没頭してしまう。DMM GAMESが配信する人気着せ替えゲーム「Alice Closet(アリスクローゼット)」を、描き下ろしイラストとオリジナルストーリーで書籍化した『Alice Closet Illustrated Book あなたとアリスの運命の絆』は、そんな美麗な世界に迷い込んでは、時を忘れて堪能できる作品だ。


 本作は『神風怪盗ジャンヌ』、『満月をさがして』などで読者の心を魅了する漫画家・種村有菜の書き下ろしとなっており、美しいイラストと物語がそっと心を癒してくれる。今回はメールインタビューで、イラストだけでなく、原作のゲーム「Alice Closet」でのキャラクター原案をも担当した種村に、インスピレーションの源や影響を受けた作品など、制作の裏側について応えてもらった。(Nana Numoto)


関連:【画像】種村有菜の描いた自画像


■漫画制作とゲームの仕事のちがい


ーー種村先生といえば、漫画だけにとどまらず、『アイドリッシュセブン』などゲームのキャラクター原案なども手掛けていらっしゃいますが、どのような経緯でゲームのキャラクター原案に挑戦されたのでしょうか。


種村有菜(以下、種村):どのコンテンツも先方から依頼があり、お受けしたという流れになります。漫画と違い、キャラクターに対してクライアントのイメージというものがすでにありますので、自由にデザインしたというよりはある程度そのイメージの範囲内で何パターンかラフを起こして選んでもらい、ブラッシュアップというようにじりじりとにじり寄って進めていきました。


ーー実際にご自身で作っていく漫画制作と共同で作り上げていくゲームのお仕事では、進め方に違いや特別に気をつけていたことなどはありましたか?


種村:個人制作の漫画と違い(作画はスタッフにお手伝いしていただきますが、ここでは内容のことを指しています)大きなチームの一員として企画に参加するので、出過ぎず、黙らず、いいなと思った案はどんどん言うようにはしています。


ーーなるほど、種村先生の個性とゲームの方向性が、絶妙な塩梅の上に成り立っているのですね。『Alice Closet』は「童話の世界観」がモチーフになっているように見受けられますが、こういった作品へのインスピレーションはどこから得られているのでしょうか。


種村:そうですね、モチーフはクライアント様が決めたもので私発案ではありませんが、童話の世界の一般的なイメージと、Alice Closet独自のイメージ、その2つを合わせてキャラクターに表現できればいいなと思いました。


■〈主題〉の決め方は作品ごとに違う


ーー今回、モチーフが先生発案ではないとのことですが、これまでの作品でもファンタジックな世界観を描くことは多かったと思います。漫画制作において、この主題でいこうと決めるきっかけになることはありますか? 具体的な作品名と共にお話しを伺えれば幸いです。


種村:漫画の作品は各作品で発案の元が違っていたりします。キャラクターから、タイトルから、設定から、ジャンルから、色んな角度で始まっています。例えば『満月をさがして』は病弱の女の子が好きな人に会いたい+死神という設定から決めました。タイトルは元々小さい頃描いていた絵につけていたもので、でも今とは全然違うキャラクターを描いてましたね。確か絵本の中の男の子に恋した女の子(現実では孤児でつらい目にあっている)が、ある夜絵本の中から男の子が出てきて一晩空を飛んだりして楽しく過ごす、お別れの時にそんなにこの世界がつらいなら一緒に行こうと言われ、養母が部屋に入ってくると女の子はもういなくて絵本には男の子とその女の子が仲良く月の前を飛んでる絵が足されている……という話だったと思います(暗い……)。


ーーそのお話は、いつ頃思いつかれたのですか?


種村:小学生の時に描いた絵で、漫画でもなく、続き物イラストでした。でもそのタイトルはすごく気に入っていて、連載が決まった時に内容からイメージがぴったりかもと思い使うことにしました。


■花・自然・きらびやかな衣装……種村ワールドの秘密


ーー小学生にして、主題に沿ったイラストを描かれていたんですね……! 同じくインスピレーションの話題になりますが、花や自然のモチーフが種村先生の作品には多いと思います。花や人間以外の生き物(動物や妖精)を登場させることに思い入れはありますか?


種村:花はデザイン的にすごく興味深くて描いていても飽きないですね。描くために調べても、同じ色味でも微妙に形が違っていたり、品種によっては全然違ったり。リアルな動物を描くのはちょっと苦手で、描くとなったら骨格から調べないと描けないですね……。1番描きやすいのは馬かな。馬は足の関節の形がかっこよくて萌えますね。


ーーさらにゲーム内では衣装のデザインも手掛けていらっしゃいます。もともと先生の描くドレスは繊細で丁寧な描写が魅力だと感じますが、ゲームに登場させる衣装にすることで気をつけられた点などあれば教えてください。


種村:色鮮やかにするということでしょうか……。私が本当に好きなのは地味な、ほとんど色のない色が好きなので、華やかな色味は本当は無理してますね。頑張って華やかにしています……。


ーー華やかながら、上品な色が多いのはそのためなんですね。今回の絵本はまさに大人の絵本というにふさわしい美しい描き下ろしイラストが魅力だと思いますが、描く中でドレスの色味以外に気をつけられたことはありますか?


種村:とにかく丁寧に、です。あまり画力に自信がないので、その分いつも丁寧に、は心がけています。あと全て挿絵は見開きページでしたので、開いた時のインパクトは考えました。


ーー加えて、背景も先生ご自身が手掛けたとのことで、とくに大変だった点、とくに気に入ってる点などあれば教えてください。


種村:背景は……実は心残りですね。普通の背景になってしまって申し訳ないです。もっとお遊びというか、意味のある、情報を盛り込みたかったな〜と少し後悔が残っています。でもなにぶん枚数がとても多くて、綺麗に丁寧に、だけで精一杯でしたね。もしまた機会があれば、もう少し遊び心を足したいです。


■種村有菜が影響を受けたもの


ーー踏み込んだ質問になりますが、絵本や漫画作品にとどまらず、衣装の着想となるようなブランド、アート作品はあるのでしょうか。種村先生の作品は個性がはっきりと際立つものが多いので気になります。ご自身に影響を与えた作家、作品でも大丈夫です。


種村:それは今まで生きてきて目にしたもの全てから影響は受けていますよね、きっと。好きなものから影響を受けるとは限らないし……。好きなものだと、雑誌のりぼん、少女コミック、ちびまる子ちゃんとムーミン、宮崎駿監督作品、庵野秀明監督作品、です。


ーー好きなものから影響を受けるとは限らない、という言葉にハッとしました。確かにそうかもしれませんね。では、今回はゲームの書籍化ということですが、ご自身も普段ゲームをされることはありますか? もしされる場合、どんな作品をプレイしていますか?


種村:最近はあまりできていませんが、RPGが好きで、気にいると同じゲームを何周もしてしまいます。あといただきストリートやマリオパーティーなど、みんなでわいわいやるゲームを1人でやってます……。


ーーわいわいやるゲームを1人でやってしまう気持ち、わかります。最後に、今回の絵本を手に取る読者に向けてのメッセージをお願いします。


種村:『Alice Closet』の絵本をお手に取ってくださり、誠にありがとうございます。ちょっとAlice Closetのイラストは独特の塗り方をしているのですが、私はこの塗り方が大好きで、この絵本も枚数が多くて時間がかかってしまいましたが、全てのページを楽しく描けました。これからも『Alice Closet』をよろしくお願い致します。


(文・取材=Nana Numoto)


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