「フォートナイト」のエピックがIT業界の巨人・アップルに「勝てる」と言える二つの事情

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2020年09月28日 08:00  AERA dot.

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写真5月時点で3億5千万人が登録し、ゲームを超える仮想空間となったフォートナイト。世界一を決める大会はテニスの全米オープン決勝と同じ会場で行われた/2019年7月(写真:gettyimages)
5月時点で3億5千万人が登録し、ゲームを超える仮想空間となったフォートナイト。世界一を決める大会はテニスの全米オープン決勝と同じ会場で行われた/2019年7月(写真:gettyimages)
 米アップルと世界的人気ゲーム・フォートナイトのエピックが鋭く対立している。アップルがアプリ提供者に課す、売り上げの30%という手数料率が高すぎるとして、エピックがより料率の低いゲームストアを展開したのだ。アップルの「支配からの解放」を叫ぶエピックは、次代の支配者になる実力を秘める。両者の対立の背景に迫った、AERA 2020年9月28日号の記事を紹介する。

【図解】アップルとエピック対立の構図が一目でわかる

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 エピックがここまで真っ向からアップルに対抗できる背景には、大きく二つの事情があるようだ。ゲームを中心にアプリ業界に詳しいKADOKAWAの浜村弘一シニアアドバイザーは「クラウド技術の進歩で誰もがプラットフォーマーになれるようになった」ことを強調する。

 かつてゲームのプラットフォームとはゲーム機本体のことだった。80年代、ファミコンに対抗するためハドソンがNECと協力して「PCエンジン」を開発したように、自前のソフトを自由に売るためには、まず自前のハードを立ち上げなければならなかった。しかし現在はエピックが「ストア」を立ち上げたように、比較的容易にオンラインでゲームを配信できる。

 もう一つは、エピックの独自性と技術力だ。

 フォートナイトは複数人が撃ち合って1人が生き残るバトルロイヤル型がメインのシューティングゲームだが、大きな特徴は、ゲーム内で戦闘から身を守ったりするためにあらゆるものを建築できる自由度の高さにある。これにより、ライブ会場をゲーム内に築いた上で、米津玄師さんら著名ミュージシャンがライブを開くことも可能になった。企業からはゲーム内広告にも注目が集まり、シューティングゲームという枠を超えた仮想空間「メタバース」が形成されるようになっている。

■ゲーム以外でも不可欠

 フォートナイトが単なるゲームではなく、世界中の人々が行き交う仮想空間になったのは、基本使用料が無料であることに加え、利用者が各社のゲーム機やスマホから同じ世界に同時接続できる「クロスプラットフォーム」という仕組みのおかげだ。複数の種類の家庭用ゲーム機で同じゲームが発売されることはこれまでもあったが、あくまでそのゲーム機を使っているプレーヤー同士だけがオンラインで対戦したりするだけだった。

 利用者にとってはすばらしい仕組みだが、プラットフォーム側からみると危険きわまりない。利用者がゲーム機の垣根を越えられるようになれば、ゲーム機の独自性が失われ、ゲーム機が売れなくなりかねない。たとえば、もしスマホやプレステ4から「あつまれどうぶつの森」の世界を楽しめたら、ニンテンドースイッチを買う人は当然減ってしまうことになる。

 エピックの独自性と技術力を示すもう一つの存在が、世界中のゲーム開発者がこぞって使用するゲーム開発ツール「アンリアルエンジン」だ。ライセンス使用料を基本的に無料としていることや利用のしやすさからあらゆるゲームの開発に使われ、家庭用ゲーム業界はエピックなしでは成立しないほどだ。

 アンリアルエンジンに代表されるゲームエンジンは、立体的なコンピューターグラフィックス(CG)や登場人物、複雑で詳細な背景を手軽に作り出すことができるため、現在のゲーム制作現場では欠かせないツールだ。さらにアンリアルエンジンはテレビドラマに使われるCGを作成する際にも活用されるようになるなど、映像制作の現場にも普及が進みつつある。

■「基本無料」貫けるのか

 フォートナイトが生み出した仮想空間は、新しいインターネット上のインフラであり、生活空間とも言える。IT各社も同様のインフラ実現を目指そうとしている。エピックがメタバースを実現させたのは、同社の基本無料や手数料率を下げるという企業姿勢にあるとも言えるため、アップルとの対立でこうした姿勢に変化がみられるのか、各社はエピックの動向を注視している状況だ。

 手数料率の対立を超えてさまざまな事情から注目されているエピック対アップルだが、ともあれ、現在、iPhone利用者がフォートナイトを利用できなくなっているというユーザー視点は忘れてはならない。

 技術的にはiPhone利用者がアップルのアプリストアを経由せず、フォートナイトを利用できるようにすることも不可能ではないはずだが、ITリテラシー(活用力)が高くない一般の利用者にはやはりアップルのストアが便利という事実は変えようがない。

 世界中にアプリを配信するための広告などの費用が必要なアップルが、手数料率30%を下げる可能性は低いとみられる。エピックは今後、自由な競争の促進という大義名分を維持し続けるのか、それともアップルと同様に支配する側に回る未来が訪れるのか。GAFA並みの潜在能力を秘めるこの企業への関心は今後も高まりそうだ。(ライター・平土令)

※AERA 2020年9月28日号より抜粋

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