J3最下位から2年でV字回復。ギラヴァンツがJ1へミラクル昇格なるか

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2020年09月29日 07:11  webスポルティーバ

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 優勝候補に挙げられていたクラブが下位リーグに降格したり、逆に昇格1年目のクラブがいきなり優勝したり。カテゴリーを問わず、Jリーグでは、そんなサプライズが珍しくない。

 毎年のように起こるのであれば、それをサプライズと呼んでいいのかどうか、疑わしくなるほどだ。

 今季J2でも、意外なクラブが優勝争いを引っ張り、波乱の展開を見せている。サプライズの主役は、ギラヴァンツ北九州である。




 今季開幕前の北九州は、率直に言って、とてもJ1昇格候補と呼べる存在ではなかった。それどころか、昨季のJ3優勝で4シーズンぶりにJ2へ復帰したばかりなのに、再びJ3への逆戻りを予想する声も少なくなかった。

 全22クラブ中10位台に食い込めれば、御の字。そんな見方が大勢だったはずだ。

 実際、スタートは最悪だった。開幕戦からいきなりの2連敗。北九州の頭上には、分厚い暗雲が立ち込めていた。

 ところが、2勝3敗1分けと黒星がひとつ先行して迎えた第7節で勝利すると、そこから怒涛の9連勝。2連敗後は20位だった順位も右肩上がりにグイグイと上がっていき、第18節終了時点ではとうとう首位に立ったのである。

 成績を見れば意外な躍進も、ピッチ上で展開されるサッカーに奇をてらったところはなく、あくまでもオーソドックスなものだ。

 幅を使ってボールを動かしながら、タイミングを見て縦にスピードアップ。ボールを失っても、素早い守備への切り替えで高い位置からプレスをかけていく。そんな作業を丁寧に繰り返した結果が、これまでの成績である。

 チームの得点源となっているのは2トップ、10ゴールのFWディサロ燦シルヴァーノと、7ゴールのFW町野修斗だ。そこに加え、テクニックと突破力に優れたサイドハーフ陣、MF高橋大悟、MF椿直起、MF新垣貴之が攻撃に厚みを作り出している。

 20代前半の若い選手が多いなか、31歳のキャプテン、MF加藤弘堅が攻守をうまく連動させ、好調なチームを支えているのも頼もしい。

 チームを率いる小林伸二監督は、J3だった昨季から指揮を執っており、継続したチーム作りという強みもある。加えて60歳のベテラン監督は、過去に異なる3クラブ(2002年大分トリニータ、2008年モンテディオ山形、2013年徳島ヴォルティス)を初のJ1昇格に導いた経験を持つ、Jリーグきっての昇格請負人である。

 こうなると、北九州の躍進が、一過性のサプライズとは思えなくなってくる。

 しかしながら、積み重ねた勝ち点に比例して、ライバルからの警戒が強まるのは必然の流れ。首位に立ってしまえば、その試練を避けては通れない。

 第18節からの3連勝で、順調にトップを走っていた北九州だったが、第21節で水戸ホーリーホックに0−3と敗れたのに続き、直近の第22節でも東京ヴェルディに0−1と敗れ、開幕直後以来となる連敗。勝ち点でも徳島ヴォルディスに44で並ばれ、得失点差で首位の座を明け渡すことになった。

 東京Vの永井秀樹監督は、第22節の北九州戦を「1カ月ほど前(第14節)にアウェーで非常に悔しい負け(1−2)をした。その悔しさが残るなかでのリベンジマッチだった」と評したが、今後は多くのクラブが東京V同様、先の借りを返すべく、北九州に挑んでくるはずだ。

 もちろん、「リベンジ」とは気持ちや姿勢だけを意味しない。

 永井監督は事前に北九州を分析し、「(北九州の)サイドバックが高い位置を取るので、その背後を効率よく使う」という狙いがあったことを明かしていたが、こうした包囲網は当然、他クラブにも広がっていくはずだ。

 それでも北九州は、いかに対戦相手に分析され、対策を講じられようと、成す術なく敗れているわけではない。

 小林監督は「(東京Vに対策されても)後半は我々が先手を取って、(相手の)システムに合わせた(前へのボールの)持ち出しができた」と語り、「もう少し圧をかけ続け、点が取れればよかったが」と悔やみつつも、「後半の修正はすごくうまくいった」と選手たちを称える。

 キャプテンの加藤もまた、手痛い連敗にも下を向くことなく、「相手どうこうではなく、自分たちがやるべきことをしっかりやらないといけないと感じた」と言い、力強くこう続ける。

「何節か前から、少し自分たちに合わせてサッカーをしてくるチームが出てきたと感じる。でも、(自分たちに)合わせてもらっている時点で先手を取れていると思う。伸二さん(が監督)になって、去年から積み重ねてきたことをやれば、得点できるし、勝ち点も取れる。相手ではなく、自分たち(次第)かなと思っている」

 確かに痛い連敗であるのは間違いないが、内容的に見れば、過度に悲観的になる必要はないのだろう。

 振り返ってみると、2010年のJFLからJ2に昇格して以来、北九州は波乱に満ちた歴史を歩んできた。

 J2での初めてのシーズンとなった2010年は、わずか1勝しかできずに最下位(全19クラブ)。だが、その後はひと桁順位とふた桁順位を行ったり来たりしながら、2014年にはクラブ史上最高の5位に入った。本来ならJ1昇格プレーオフに進出できる順位である。昇格に必要なクラブライセンスを持っていなかったため、プレーオフには出場できなかったものの、実力の上ではJ1昇格を視野に捉えていた。

 翌2015年も7位につけ、夢のJ1まであと一歩――。そう思った矢先、2016年にまさかの最下位(全22クラブ)に終わり、J3降格。すると、加速度的に進む転落に歯止めをかけることができないまま、2018年には、J3ですら最下位(全17クラブ)の屈辱を味わった。

 ところが、北九州はここから奇跡的なV字回復を見せる。

 小林監督が新たに就任したチームは、わずか1シーズンにして最下位から優勝へと一気に反転攻勢をかけ、J2復帰。そして迎えた今季、驚異のV字回復は依然、急激な右肩上がりのまま続いている。

 もちろん、そもそも下位が予想されていたダークホースにJ1での経験豊富な選手がそろっているはずはなく、お世辞にも選手層が厚いとは言い難い。にもかかわらず、各クラブが全42試合を戦わなければならないJ2リーグは、ようやく折り返し地点を過ぎたばかりだ。

 加藤の言葉を借りれば、「(今季)J3から上がってきて、うまくいきすぎている部分もある」のは確かだろう。

 とはいえ、北九州が見せるサッカーは、特定の外国人ストライカーに頼るような爆発力はないものの、技術的にも戦術的にも非常に落ち着いている。単なる勢いでここまで来たわけではないことは、試合を見ていればよくわかる。この連敗をきっかけにズルズル後退していくとは考えにくく、J1昇格候補のひとつとして、今後も粘り強く戦っていくに違いない。

 わずか2年ほど前には、Jリーグの最底辺に沈んでいた北九州が演じる、奇跡の復活劇。はたして、その結末はいかなるものになるのだろうか。

このニュースに関するつぶやき

  • 小林監督は元々、「昇格請負人」でしたが、Jリーグ最底辺からの大逆襲。ドラマみたいな話ですね。
    • イイネ!11
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