今季のMLBは「投高打低」。ダルビッシュ有や大谷翔平らの現地評は?

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2020年09月30日 06:11  週プレNEWS

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写真サイ・ヤング賞受賞が期待されるダルビッシュ。昨季途中からナックルカーブ、今季から魔球「スプリーム」を加えて安定感が増した。気になるモジャモジャの髪の毛も現地では好評だという
サイ・ヤング賞受賞が期待されるダルビッシュ。昨季途中からナックルカーブ、今季から魔球「スプリーム」を加えて安定感が増した。気になるモジャモジャの髪の毛も現地では好評だという

開幕すら危ぶまれた今季のMLBも、レギュラーシーズン終盤に入り、プレーオフが始まろうとしている。

全60試合の短縮シーズンは、近年まれに見る「投高打低」のシーズンでもあった。米スポーツ専門誌『スポーツ・イラストレイテッド』は「(開幕2週目時点の)球界全体の平均打率は2割3分で、1972年以降では最も低い数字だ」と指摘。

その数字は大きく改善することなく、日本人選手たちの成績にも影響が出ている。投手陣のなかでは、ダルビッシュ有と前田健太が目覚ましい活躍を見せた。

シカゴ・カブスのダルビッシュは、今季2戦目からの7連勝をはじめ、自身初の月間MVPを受賞するなど、8勝3敗で日本人初の最多勝に輝く大活躍。受賞すれば日本人初となるサイ・ヤング賞の有力候補と目され、『NBCシカゴ』は「有のピッチングはサイ・ヤング賞どころか、シーズンMVPクラスだ」と高く評価する。

まず米メディアが注目したのは変化球。今季から加えた新魔球「スプリーム」もそのひとつだ。ツーシームとスプリットの中間の球で、ストレートのような速球が打者の手元で急に落ち、強打者たちを手玉に取る。

デビッド・ロス監督が「有は投球を完璧にコントロールしている」と大絶賛した制球力も話題になったが、米スポーツ専門チャンネル『ESPN』が取り上げた「投球テンポの変化」も興味深い。

ダルビッシュは「これまではすぐ投げるように言われてきたが、今は次の投球に集中するためにゆっくり時間をかけている」と語る。自分のスタイルを貫いたことがプラスに働いた。

前田健太は、移籍1年目のミネソタ・ツインズで6勝1敗。現地時間8月18日のミルウォーキー・ブルワーズ戦で見せた8回までのノーヒット投球は、今季の好調ぶりを象徴する試合だった。

これまでは右打者を得意としていたが、今季は左右問わずに快投している。現地メディア『ゾーン・カバレッジ』は「左打者に対してアプローチを変えた」という見出しで、「今季、左打者に対してスライダーとチェンジアップを増やしている」と報じた。

そんな変化球を、ツインズのサド・レバインGMは「球界最高のレベルだ」と称賛。米メディアは「スライダーが左打者への対策か」と探りを入れたが、前田は「それはちょっと教えられないですね」と、詳細を明かさなかった。

もうひとつ、好調の理由に挙げられたのは、ダルビッシュにも共通する制球力。今季、前田のストライクゾーンへの制球力は65%前後で推移しており、過去に比べて約5%も高い。変化球と制球力が向上し、ツインズの球団新となる、日本人最多タイの8者連続奪三振も達成した。

一方で、野手の筒香嘉智(つつごう・よしとも)と秋山翔吾、シーズン途中から打者に専念する大谷翔平についての現地評はどうだろうか。メジャー1年目、タンパベイ・レイズの筒香は、打率1割9分9厘、8本塁打と苦しんでいるものの、現地では批判的な評価はない。

今回、かつて黄金時代の西武で活躍し、現レイズの専属解説者であるオレステス・デストラーデ氏から独自にコメントを得た。

デストラーデ氏は、低打率の原因を「適応するには打席数が少なく、まだ投手にも慣れていない」と指摘。しかし、「出場機会が増えれば解決できる問題だ」という。そして、「来季以降にヨシが一塁手で出場できれば、400以上の打席に立つことも可能だ。打率2割8分、30本塁打、100打点近く打てる打者だ、という評価は変わらないよ」とエールを送った。

シンシナティ・レッズで同じくメジャー1年目のシーズンを送る秋山も、開幕序盤は打率1割台と不振を極め、「今の打率やヒット数には悔しさがある」と無念さを明かしていた。しかし試行錯誤を続けた結果、後半戦から徐々に打率を上げ、現在は2割3分9厘とヒットメーカーの片鱗(へんりん)を見せている。

地元紙『シンシナティ・エンクワイアラー』は「弱点だったゾーン高めの速球に対応し始めている」と復調の理由を挙げた。また、デビッド・ベル監督は「前とは表情が違う。かなり早くMLBに適応できていると思う」と、秋山の打撃を評価。「左投手に弱い」という評価は残ったままだが、課題が克服できればさらなる活躍が期待できそうだ。

ロサンゼルス・エンゼルスの大谷は、今季最も苦しんだ選手だろう。2年ぶりに"二刀流"で開幕を迎えたが、今季2度目の登板で右ヒジ付近を故障。以降は打者一本に絞るも、自己ワーストの21打席連続無安打を記録するなど不振に陥った。

大谷は「(ボールとの)距離感とタイミングがズレていた」と自己分析。一方で、地元紙『ロサンゼルス・タイムズ』は「大谷は対左投手の際、一塁側に体を引く癖が見られる。そのため、外に逃げる変化球にバットが届いていない」と指摘。ジョー・マドン監督も「翔平にはシートベルトが必要だ」と冗談を交えつつ、「外に逃げる球に対応できるよう修正を続けさせる」と宿題を課した。

今季の大谷は頻繁に打撃フォームを変えていたが、どれも本人にフィットしなかったことが打撃不調につながったと言えそうだ。

ただ、大谷は足での貢献が目立った。ここまで7盗塁を記録し、成功率は100%。指揮官はこの走力に大変ほれ込んでいる。守備練習にも取り組んでおり、新たな魅力を示した大谷は完全復活に向けてすでに動きだしている。

今季の日本人打者の不調は、シーズンの短さによるところもあるだろう。来季以降、フルシーズンを戦ったときに本領を発揮してくれることを期待している。

取材・文/澤 良憲 写真/アフロ

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