半沢直樹に学ぶ「ストレス社会を乗り切る術」 鍵になる「レジリエンス」とは?

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2020年09月30日 11:30  AERA dot.

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写真「半沢直樹」役の堺雅人 (c)朝日新聞社
「半沢直樹」役の堺雅人 (c)朝日新聞社
 目の前の逆境やトラブルを乗り越える力「レジリエンス」が改めて注目されている。人気ドラマ「半沢直樹」(TBS系)の主人公はまさに、こうした強い精神力を持つ究極の人物として描かれていた。新型コロナウイルスへの対応などストレスが絶えない社会で、いかに感情や行動を前向きにコントロールしていくか。レジリエンスに関して多くの著書がある人材育成コンサルタントの内田和俊氏が、その心得を教えてくれた。

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 レジリエンスとは、ストレスによってゆがんでしまった心を「元の正常な状態に戻す力」で、「心の自然治癒力」とも表現できる。ビジネスパーソンの間で“ストレス耐性”を高めるスキルとして認知されてきたものだ。ただ、ストレス耐性を高めるだけではない。あらゆる世代において、自らの価値や存在意義を認める「自己肯定感」を高めるのにも有効だ。

 半沢直樹は揺るぎない自己肯定感に裏打ちされているからこそ、大和田取締役をはじめ、中野渡頭取や白井大臣、箕部幹事長に対してもひるむことなく、毅然(きぜん)とした態度で対等に渡り合い、啖呵(たんか)を切ってみせた。半沢とまではいかなくても、レジリエンスを高めるにはどうするか。

 一つ目のポイントは、考え方や視点を「短期」から「中長期」へ変えることだ。

 あらゆる場面で「効率化」の名のもと、短期での結果を求められがちだ。だが、レジリエンスを高める観点では、短期で物事を判断することは望ましいとは言えない。例えば、短期の視点だと「失敗」と判断されてしまう出来事も、中長期の視点に立つと「大成功」や「大発見」のきっかけであったということは、多くの成功秘話が教えてくれている。

 視点を中長期へ変えれば、穏やかな感情を取り戻すことができ、「もう少しがんばろう」という気持ちにもつながる。

 ドラマでは、帝国航空の再建をめぐる攻防があった。政府肝いりのタスクフォースによる「短期視点」の安易な債権放棄案に対して、半沢は「中長期視点」に立った自力再建案を主張し、帝国航空の経営陣だけでなく、社員までも鼓舞した。

 二つ目のポイントは、「すべての出来事の肯定的な側面を見つける」という習慣だ。

 あらゆる出来事をポジティブに解釈することと誤解されやすいが、そうではない。どんなにネガティブな出来事であっても、そこに何かプラスの側面を見つけようとする習慣を意味する。

 今回のシリーズの半沢も、実はここから始まった。東京中央銀行から東京セントラル証券へ出向という形で“左遷”されても、証券会社のために役に立とうと奮闘。文句一つ言わず、肯定的な側面に目を向け、部下らと目の前の仕事を進めた。

 私たちの生活でも、例えば体調を崩してしまうことはネガティブなことだが、改めて健康の大切さを痛感する。これに気づけたことは、病気の肯定的な側面だろう。病気をしたことで周囲の優しさに触れ、人のありがたさや温かさ、愛情を実感する機会にもなる。大病を、自身の生活習慣を抜本的に見直すきっかけにする人もいる。結果的に大病を患う前よりも、元気になったという人を私はたくさん見てきた。

 コロナ禍のいまも、マイナスにとらえるのは簡単だが、プラス面にも目を向けてほしい。何げない日常が当たり前ではなかったと再認識できる。無駄の多い生活に気づき、断捨離に励んだ人も多いはずだ。

 三つ目のポイントは、行動を変えてみることだ。自己肯定感の低い人は「Yes」や「No」の意思表示が苦手。少し考えれば無理な依頼も、あいまいな対応で受け入れてしまうことがある。

 その結果、往々にして次のような結末に至る。

(1)期限ギリギリになって「やっぱり無理でした。何とかならない?」と泣きを入れる。
(2)期限を過ぎているのに依頼されたものを提出できない。
(3)完成度が低い状態、いわゆる“やっつけ仕事”で提出してしまう。

 これでは結果的に、自分にも相手にも得はない。やはり無理なら最初の段階で、「No」と意思表示をすべきだったのだ。

 とはいえ、アタマでは理解していても、「オール・オア・ナッシング(すべてか無か)」の発想で、「Yes」もしくは「No」をなかなかハッキリ言えないのが、私たち日本人の悲しい性──。

 そこで強くお勧めしたいのが、「Yes」もしくは「No」の後に「but〜」を添えた表現。全肯定もしくは全否定ではなく、条件や代替案を示すという言い方だ。

 ドラマでも、半沢がこの表現を使って反転攻勢へのきっかけとした。紀本常務の捨て身の説得によって、役員会で帝国航空の債権放棄案が認められる場面。半沢はすかさずこう発した。

<メインバンクの開発投資銀行が債権放棄に反対した場合は、当行もそれに準ずる、その条件を付していただけませんか>

 このとき半沢は債権放棄の決定自体には逆らえず、つまりは「Yes」。だが「but」として債権放棄“拒絶”につなげる条件を中野渡頭取に受け入れさせたのだ。

 次のような事例があったとしよう。「来週の金曜日までの期限付きで5点の依頼」を受けた場合、全肯定もしくは全否定で応じようとしないことが大事だ。「来週の金曜日まではちょっと厳しいけど、再来週の水曜までなら、何とかできそうです」「5点は無理だけど、3点なら何とかなります」

 こんな感じならハードルがぐっと下がる。断るにしろ、引き受けるにしろ、他の選択肢を知っていれば、いざというときに実行できる。安請け合いした結果、自己嫌悪に陥るという、お決まりのパターンからも解放されていくにちがいない。

 コロナ禍で思うようにいかない面も多い生活だが、少しでも意識や行動が前向きになれば、必ずやストレスを上手に乗り切ることができ、自己肯定感も高まるはずだ。

 余談だが、9月3日に国連児童基金(ユニセフ)が公表した「先進国・新興国38カ国に住む子どもの幸福度調査の結果」は、衝撃的なものだった。日本の子どもは、「身体的健康」は1位だったものの、「精神的幸福度」は37位と、調査対象国の中でワースト2位となった。

 前述のとおり、レジリエンスを高めれば、自己肯定感を高めることにつながる。若いころからレジリエンスを意識し、それを身につけることで、必ずや長い人生を2倍どころか1000倍をも楽しめるはずだ。(人材育成コンサルタント・内田和俊)

※週刊朝日  2020年10月9日号

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