安東弘樹のクルマ向上委員会! 第38回 国産ワゴンの輝き、再び? 安東弘樹が新型レヴォーグ開発者を直撃!

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2020年10月02日 07:02  マイナビニュース

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サーキットで新旧「レヴォーグ」を乗り比べた結果、進化の度合いをはっきりと感じることができたという安東弘樹さん。試乗後は開発責任者の五島さんを直撃し、気になるポイントを聞いた。まずは、なぜレヴォーグは電動化しなかったのかという話題からだ。

※文と写真はマイナビニュース編集部・藤田が担当しました

○ドライブモードに盛り込んだ工夫

安東さん(以下、安):まずは電動化についてなんですけど、パワーブーストという意味でも、「e-BOXER」(スバルのハイブリッドシステム)を搭載するなどの選択肢はありえたのではないかと思いますが、いかがですか?

五島さん(以下、五):そうですね、将来はどうなるか分かりませんが、まだ考えていません。より使いやすいようにということで、「STIスポーツ」(新型レヴォーグの最上級グレード)もレギュラーガソリンで走る仕様としましたし、パワートレインはコンベンショナルなものにしました。

安:新型になって、レヴォーグの価格は上がるんでしょうか?

五:価格帯はかなり、キープしました。「GT」というグレードだと、税込みで300万円ちょっとでしょうか。どのグレードでも「アイサイトX」を搭載したモデル選んでもらえるんですが、アイサイトXとナビが付いて+35万円ですから、かなり頑張ったのではないかと思います。

安:STIスポーツだと、コミコミで400万円を少し超えるくらいですかね。「GT-H」グレードだと400万円に収まりそうです。

五:大体、300〜400万円に収まるはずです。

安:だとすると、お買い得かもしれませんね。あと、燃費はいかがですか?

五:JC08モードで16.5km/L(18インチタイヤ装着車)ですね。旧型は16でした。

安:WLTCだと15km/Lくらい……実質燃費だと12km/Lには届かないですかね……。

デザインは普通にカッコいいですね。もともとカッコよかったですけど。

五:室内で見るより、日の光に当たった方がよく見えますよね。

安:売れそうなデザインだと感じました。

安:CVT(無段変速機、トランスミッションのこと)も、「よくぞここまで進化させたなー!」という感じです。

五:まだまだ、いろいろと進化させていきたいとは思っているのですが、今はもう少し、CVTで頑張っていこうかなと思っています。

安:先に現行型に乗って、そのあとに新型を運転したんですけど、同じように踏んでサーキットを回った結果、新型と現行型では速度域が違いました。同じ操作をしていても、走りがスムーズという感じです。

五:新型の試作車を作った時は、まず、外板は現行型のままで、ボディだけ設計して製作したんですけど、その頃からこんな感じの素性の良さがありました。そこからサスペンションや電子制御ダンパーなどをチューニングしていったんですが、素性の良さはずっと感じていました。現時点で「マイナーチェンジまで済んでいるのか?」というくらいの熟成具合ですね(笑)。

安:そのあたりは、素直にすごいと思いました。ただ、一般道で普通に乗るとした場合、どのくらいの人に伝わるのかな、というのは少し疑問なんですけどね。

五:STIスポーツはドライブモードセレクトで乗り味を大きく変えられるんですけど、その違いは、一般道の方がより明らかに感じていただけると思っています。品質確認で外を走っていて、昨日も首都高に乗ったんですが、つなぎ目を乗り越える感じなんかは、「コンフォート」モードとそれ以外ではかなり違います。加速度センサーで速度とGを認識しつつ、状況に合わせてダンパーを制御する仕組みなんですが、フロントが段差を乗り越えて、次にリアが乗り越える頃には、サスペンションが変わっている。それくらい素早い制御になっているんです。

安:先ほど、「コンフォート」モードにしてから、あえてサーキットの縁石に乗ってみたんですが、違いがはっきりと感じられました。

五:「コンフォート」と「スポーツ」の間では、振れ幅をかなり大きくしてあります。

それと、「コンフォート」に盛り込んだアイデアとしては、エアコンの「マイルドモード」というものがあります。内気循環にしていると窓が曇ってきますが、このモードは湿度センサーを使用して、曇るギリギリのところで外気を入れるようにしてあります。そうすると、湿度を高めに保てる。これだと乾燥を防げるので、肌にもいいかなと思いまして(※)。

※編集部注:一概にはいえないが、夫婦で新型レヴォーグを使うと仮定した場合、運転好きな夫はスポーティーなドライブモードを選択し、乗り心地重視の奥様は「コンフォート」モードを選ぶというケースが考えられる。「コンフォート」モードでエアコンのマイルドモードを使えるようにしているのは、こんな仮定を踏まえての工夫のようだ

安:そういった細かい工夫は女性に受けるかもしれませんね。そのあたりをプッシュするように、セールスの方にはレクチャーしているんですか?

五:してます。セールスには小ネタも大事ですからね(笑)

○ライバルはSUV! ワゴン再訴求を目指して

安:それにしても、レヴォーグというクルマは、日本市場で売れている国産ステーションワゴンとしては稀有、というより唯一といってもいい存在ですよね。こういうクルマが売れてくれると、クルマ文化という観点からも、非常に意義深いと思うんです。

五:新型レヴォーグで訴えたい価値として、今回は「先進安全」「スポーティー」「ワゴン価値」の3点を挙げさせてもらいました。あえて「ワゴン」という言葉を使ったのは、「ワゴン再訴求」という思いがあるからです。「選択肢に入れてくれても、いいんじゃないですか」という感じですかね(笑)。最近は(流行りの)SUVも車高が低くなってきていて、ハッチバックのような価値を訴求し始めていますから、それならば、もっと荷物が積めて、「グランドツーリング」という魅力のあるワゴンという車種を、何とか受け入れて頂けないかなと思っているんです。

安:なるほど。そうすると、ホンダ「CR-V」などのSUVも競合ということになってくるんですか?

五:そうですね、「CX-5」(マツダのSUV)とか「ハリアー」(トヨタのSUV)とか……。今、相手はSUVですね。

安:そうか……。だとすると、ハリアーは強敵ですね!

五:強敵です(笑)。

安:私は今、メルセデス・ベンツの「E220d 4MATIC オールテレイン」というクルマに乗っているんですけど、その前がジャガー「F-PACE」だったんで、SUVからクロスオーバーステーションワゴンに乗り換えたんですね。そうすると、高速道路を長距離走った場合の疲労度が違うんです。どちらのクルマでも九州まで運転したことがあるんですけど、SUVは上屋が大きい分、どうしても重心が高いので揺れ幅も大きくなりますし、横風の影響も、より感じられます。いくら足回りを良くしても、物理的な限界がある。長距離を乗ると、ワゴンの良さが分かりますよね。

五:長距離を乗るという意味では、新機能「アイサイトX」もあります。低重心ならではといいますか、「アクティブレーンチェンジアシスト」(ウィンカーを操作すると、自動的に車線をしてくれる機能)などの制御はすごくスムーズで、そのあと、自分のクルマで車線変更を(手動で)してみると、運転が下手になったような気がするくらいです。滑らかさが全く違うんです。

安:走行安定性など、圧倒的な優位性がワゴンにはあると思います。同乗者も、SUVやミニバンに比べると絶対に疲れないはずです。

マイナビニュース編集部:初代レヴォーグを発売した当時と今とでは、市場環境がかなり変わっていそうですね。この間、SUVの流行でライバルが増えているのではないでしょうか。クルマを便利にも使いたいし、たまには楽しくも走りたいと考える人はSUVを選びがちな気がするんですが、そのあたりはいかがでしょう?

五:スバルのビジネスとしては、「アウトバック」「フォレスター」「XV」とSUVが結構そろってきているんですが、新型レヴォーグの先行受注を見ますと、やはり「レヴォーグ」(現行型)や「レガシィ」からの乗り換えが多いんです。「スバルのワゴン」の価値をご理解いただける方は、まだまだいらっしゃるんだと思います。

五:今回は「1,795」という数字(新型レヴォーグの横幅:1,795mmのこと。日本の道路事情を考えたサイズ感)にも私の意志を込めました。1,800では、たぶんダメだったと思っています。デザインからは「あと5mmくれ!」といわれたんですけどね(笑)。

安:5mmのせめぎあい(笑)。

五:「もう少し横幅があると、フェンダーを出っ張らせることができるんだけど」と。

安:乗った感じとして、(横幅が)狭い感じは全くしませんでした。かといってその分、ドアがペラペラという感じでもなかったです。そこは皆さんの努力の賜物ですね! 今日はありがとうございました!

安東弘樹 あんどうひろき 1967年10月8日生まれ。神奈川県出身。2018年3月末にTBSを退社し、フリーアナウンサーとして活躍。これまでに40台以上を乗り継いだ“クルママニア”で、アナウンサーとして初めて日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める。 この著者の記事一覧はこちら(安東弘樹)
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