理想の打線に! キーマン2人の成長【原巨人は黄金期を迎えたのか?】

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2020年10月08日 22:52  ベースボールキング

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ベースボールキング

巨人・吉川尚(右から2人目)=東京ドーム(C) Kyodo News
◆ 第2回:形成されたチームの骨格

 ビクトリーロードへ、一直線の10月。原巨人の今月に入っての成績は8日現在(以下同じ)5勝3敗。決して絶好調とは言えないが、それでも優勝マジックはどんどん減っていく。来週中には一桁に到達するだろう。現時点のマジック対象チームである阪神が追撃どころか青息吐息だからだ。

 エース・菅野智之投手は開幕以来、土つかずの13連勝、4番・岡本和真選手の本塁打、打点両タイトルへの挑戦。チームの柱が盤石であれば首位快走も「当然」と言いたいところだが、今年の巨人打線は昨年と一味違う。セ・リーグの打撃成績を見ても上位10人の中に巨人勢は一人もいない。

 昨年の打率最終成績を見ると、坂本勇人選手が5位、丸佳浩選手が9位、さらに亀井善行選手が11位に名を連ねている。ところが今季は現時点で坂本、丸以外に吉川尚輝、岡本各選手が2割8分台で並んでいるのだ。ちなみに規定打席不足ながら中島宏之、大城卓三両選手も同水準で気を吐いている。これは何を意味しているのか?

 今までの「サカ・マル・オカ」トリオに依存していた打線が厚みを増し、どこからでも得点できる理想形が完成に近づいている証だろう。


◆ 前途多難だった今季のスタート

 コロナ禍で開幕を迎えた特異なシーズン。各球団とも全戦力が揃うのは難しい。10月に入っても優勝争いをするロッテが主力選手を含む集団感染で苦しい戦いを余儀なくされている。巨人も例外ではなかった。

 開幕直前の6月3日に坂本、大城両選手の陽性が発覚、2人は入院生活を送っている。そんな事情も手伝って坂本は6月こそ、まずまずの成績を残したが、7月から8月にかけては不振が続き、持ち前の打棒を発揮しだしたのは9月に入ってから。だが、腰の張りや下半身のコンディション不良で先発メンバーから外れることも珍しくない。

 大城は6月の月間打率が「.188」と出遅れている。さらに丸も6月は同じく「.158」と絶不調のスタート。それでも首位戦線に躍り出ることが出来たのは「日替わり打線」と呼ばれた二次戦力の厚みと指揮官の絶妙なハンドリングがあったからだ。

 第三次原政権が誕生した昨年、春の時点ではレギュラーを確約されていたのは坂本と丸だけ。今季はそこに岡本が加わったものの、8人の野手のうち、5人はまだ未確定とされてきた。その中で激しい競争を勝ち抜いて主力レギュラーの座を勝ち取ったのが大城と吉川尚である。


◆ 定まったセンターライン

 「打てる捕手」として首脳陣の期待を集めていた大城だが、昨年までは正捕手の小林誠司という厚い壁が立ちはだかっていた。昨年の捕手としての出場試合は小林の「91」に対して大城は「62」。特にエースの菅野と山口俊(今季からブルージェイズ移籍)の登板時は小林が先発マスクを被る機会が多かった。

 ところが今季は小林の故障と自身の成長もあって出場機会を増やすと、攻守両面で大活躍。打率.288に9本塁打と持ち前の勝負強い打撃だけでなく、リードを含めた守りの面でも進歩を遂げ、今では菅野をはじめ投手陣からも全幅の信頼を寄せられている。

 巨人のウィークポイントと指摘されていた二塁では、早くからレギュラー定着を期待されてきた吉川尚がやっと花開いてきた。開幕では「1番」を任されながら結果を出せずに、控えに甘んじるケースも。8月には極度の不振に陥り原監督をして「よしかわ」ならぬ「悪川君」と皮肉られるほど、どん底を味わった。

 腰痛などの故障が多くレギュラー定着の障害にもなっていたが、盗塁王を狙えるほどの俊足と、広島・菊池涼介選手に引けをとらないほどの守備範囲の広さを誇るポテンシャルの持ち主。打順も7〜8番に下げられていたが、秋口から調子を取り戻すと、あっという間に打率も上昇(.284)して再び1番打者に返り咲いた。今度こそは本物と期待させる活躍ぶりだ。


◆ 見え始めた黄金期への道筋

 坂本、丸、岡本の看板打者にキーマンとして期待してきた大城と吉川尚まで打線の軸が固まれば、原野球の理想形は近づく。しかもここへ来て育成出身の松原聖弥選手の急成長で「ヨシ・マツ」の1、2番コンビも誕生。ここまで形が出来上がって来ると、あとは下位打線に中島やZ.ウィーラー選手らの“移籍組”を配すれば基本形は完成。少しでも調子が悪ければ代役はいくらでもいる。

 長丁場を戦うチームにとって、1人、2人のスーパースターと「その他大勢」より、どの選手も水準以上が並ぶ打線の方が脅威であり、勝つ確率は高まる。

 生え抜きでスター候補でもある大城と吉川尚。長年の懸案だった打線のキーマンを一挙に2人手に入れたことで、原巨人は間違いなく黄金期への道を歩み始めた。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

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  • パーラが控えにいるレベルだからな。他球団なら、主力なのに
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