住まいに「団地」という選択

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2020年10月11日 08:01  マイナビニュース

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「団地」……なにか昭和の雰囲気を感じます。広い土地に、どちらかと言えば画一的な形の集合住宅が集団で建っているイメージで、賃貸のケースもあれば分譲住宅の場合もあります。戦後、新しいサラリーマン世代の住まいの象徴として登場した「団地」は、今どのような変化を遂げているのでしょうか。そして、これからの時代、あえて「団地」に住むとは、どのような意味合いかあるのでしょうか。

○団地の歴史

第二次大戦後、人口の増加と都市部への人口集中の流れに対して、政府は住宅の大量供給に迫られました。昭和30年に設立された日本住宅公団や自治体の公社住宅を中心に、都市部の住宅不足解消に向けて多くの団地が建設されました。

新しい欧米の生活スタイルも取り入れて、食事をする茶の間で就寝する従来のスタイルから、椅子式の食事専用のダイニングキッチンが取り入れられました。そうした椅子式の生活や最新のキッチンセット、水洗トイレなどは、若い世代にとってのあこがれとなりました。

昭和40年代からの高度成長期には、スーパーマーケットや銀行、郵便局をはじめとする様々な商業施設や学校、病院なども併設されたニュータウンが郊外に多く建設されていきました。

昭和50年代から、マンションブームが到来していきます。ある意味で団地は一億総中流を象徴しているようでした。新しく登場したマンションは、最新の設備や広いリビング、子供それぞれに個室がある3LDKの間取りなど、より新しいニーズを反映していきました。

その後、子世代が独立して団地から転出したり、出生数が減少したりするとともに、併設されていた施設が閉鎖されたり、高齢化したりしていくところも見られるようになりました。特に高度成長期時代に、郊外の丘陵地を切り開いて作られた団地は、人口の減少や暮らし方の変化による都心回帰により、空室が増えたり高齢化したりしています。丘陵地は高齢者にとっては負担が大きい問題点もあります。またエレベーターがなかったり、間取りや設備が現在の生活レベルにマッチしなかったりするケースもあります。
○変化を求められる団地

団地は新しいニーズに向けて、常に変化していくことを求められています。若者にも住みやすく、高齢者の利便も考えられたものにならなければ、都市部でも衰退しかねません。最近は23区内でも空き家が問題になる時代です。過密化と土地価格の高騰で、敷地は細分化されていきました。以前はそれでもニーズに合っていたかもしれませんが、今や細分化され過ぎて住みにくいものになり、空き家になるケースが増えています。しかし、一旦細分化されてしまった敷地をもとのサイズに戻すことは、不可能に近いのです。

その点、団地には可能性があります。特に賃貸タイプの場合は、独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)のUR賃貸と地域の自治体や大学と共同で、これからの時代のニーズに合った団地を模索しています。
○伸びしろの大きい団地の暮らし

団地は敷地も広く、棟数も戸数も多いので、時代の変化に応じた団地全体の暮らしのリノベーションのようなものの余地が大きいメリットがあります。

空室の一つをリノベーションして保育所やキッズルーム、学童保育の場、住民のための趣味やコミュニケーションの場、高齢者のための食堂、高齢者住居などに作り替え、時代のニーズに応えることは比較的簡単です。実際にUR賃貸を中心にそのような取り組みがなされています。分譲住宅タイプであっても規模が大きければ、管理組合で空室を買い取るなどして、様々な取り組みができないわけではありません。

これが小規模で敷地いっぱい使っている一棟建てのマンションでは難しいでしょう。一見、画一的で面白みのない団地のようですが、意外に潜在的可能性を持ち合わせているように思います。問題は、時代のニーズに合わせてだれがかじ取りをするかです。戦後公団住宅が、DKなど日本人の新しい生活スタイルを先導したように、UR賃貸が、既存の団地を再生していくサンプルになるかもしれません。
○柏市+東京大学+UR共同プロジェクトにみる新しい団地の暮らしへの模索

柏市にある豊四季台団地は完成から50年を経て、高齢者率が上がっています。UR都市機構は柏市と東京大学と連携。団地全体が医療介護施設という発想のもと、「高齢者がいつまでも在宅で安心して生活できるまちづくり」を目指した団地再生の取り組みを進めています。

具体的には、柏市と市の医師会・歯科医師会・薬剤師会で運営する「柏地域医療連携センター」の創設、

多世代が食を楽しむみんなのキッチン(わいわい食堂)、高齢者向け住宅と在宅医療・介護・看護サービス拠点、生活支援サービス、バリアフリーのまちづくり、子育て応援保育サービス、休耕地や住宅地内でのセカンドライフ就農、健康づくりと憩いの場である緑豊かな道や公園の整備などが取り組まれています。

子どもからお年寄りまで、すべての人にやさしい住まいづくりを目指して、UR都市機構は、これ以外にもさまざまなプロジェクトを進めています。
○同潤会アパートにみる集合住宅での暮らし

同潤会は関東大震災の復興のために設立され、鉄筋コンクリートのアパートを月々に建設していきました。

同潤会アパートは団地ではありませんが、表参道ヒルズとなった青山アパートメント、代官山アドレスとなった代官山アパートメントをはじめ、どの建物も生活スタイルが大きく変化した時代であったにも関わらず、60〜70年もの間、愛着を持って住み続けられた集合住宅の在り方は、大いに参考になります。

もちろん立地の良さは重要な要素ではあったと思います。アパートメントによっては異なりますが、食堂・共同浴場・娯楽室・談話室・売店・洗濯室などが充実していて、良質なコミュニケーションが形成されていった結果であったはずです。

残念なことに、戦後、急速に建設された団地には、その部分は切り捨てられてしまいました。住み手も「隣は何をする人ぞ」…といった距離感が煩わしくなく好ましいと望むようにもなったのです。

最近は大規模団地にはDIYルームやキッズルームなど、住民が共同で利用できる施設や設備を設置しているところも増えました。建物も古くなれば、順次最新のニーズを取り入れた建物に建て替えられていくでしょう。自分たちの生活スタイルに見合った取り組みをしている団地を探して住んでみるのも良いと思います。

佐藤章子 さとうあきこ 一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。 この著者の記事一覧はこちら(佐藤章子)

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