人脈は「作れない」

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2020年10月16日 07:02  @IT

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写真明るく返事をしたけれど、実はちょっと(かなり)不安
明るく返事をしたけれど、実はちょっと(かなり)不安

 「仕事では、人脈が大切だ」――よく、耳にする話です。「人脈があると、周囲が知らない情報が回ってくる」「人脈があると、困ったときに助けてもらえる」「人脈があると、仕事の依頼が来る」といった具合に。



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 人とのつながりの大切さは、これをお読みの多くの方に同意していただけるでしょう。一方で、人とのつながりを作るのはなかなか難しい。どうすればできるのでしょうか。



※「人脈」という言葉は、相手を利用する/利用されるような感じがするため、個人的には「人とのつながり」と言った方がしっくりきます。本稿では人脈を人とのつながりと記します



●知人がつないでくれた偶然の出会い



 ここで、つい最近あった私の体験をお話しさせてください。



 先日、長野県志賀高原に行ってきました。「コワーキングスペースhiroen」を運営している井戸聞多さんに会うためです。私が井戸さんを知ったのは、@IT自分戦略研究所の記事「地方暮らし、東京勤務 アフターコロナのリモートワーク」でした。



 記事にはこうありました。



“井戸さんは2019年の夏ごろから、長野県志賀高原に住みながら横浜の勤務地に週1回出勤するデュアルライフをスタートした。2020年の1月からは「移動自体がリスクになる」と考え、会社と協議の上フルリモートに切り替え、「横浜の事業所に所属しながら自分の好きなエリアで暮らす」という勤務スタイルを確立した。”



 私は新潟県妙高市に住んでおり、志賀高原まで車で1時間ほど。「こんな近くに、こんなすごい働き方をしている人がいるんだ!」と驚き、「めっちゃいい内容だった」とリンクとともにSNSに書き込みました。



 すると、かつてからの知人で、東京と長野で2拠点生活を送りながら、地方に関心がある都市部の方のコミュニティー「Localist Tokyo」を運営している湯浅章太郎さんが、「井戸さんの取り組みは本当に興味深いですよね。僕も志賀高原行かなきゃ」とコメントを寄せてくれました。



 「井戸さんをご存じでしたらご一緒したいです!」と返信したところ、「予定を合わせて行きましょう!」と、トントン拍子で話が進みました。



●人見知り、不安になる



 「ご一緒したいです!」と返信しておきながら、ここで、誤解を恐れず正直な気持ちをお話しすると、私の「ご一緒したいです!」とコメントしたときの「気持ちのレベルゲージ」は、実は、10のうち6ぐらいでした。というのも、井戸さんについて私が知っていた情報は冒頭の記事の内容だけで、どんな人かは分かりません。また、私は人見知りです。「優しい人だといいけどな」なんて思っていました。



 とはいえ、話は進みます。連絡はSNSのグループチャットでやりとりしました。井戸さんとは面識がありませんでしたが、湯浅さんが間に入ってくれているので安心できました。また、やりとりしていたら、文面から井戸さんの人柄や雰囲気が何となく伝わってきて、「ひょっとしたら、大丈夫かも」と思うようになってきました。



 そして、当日。身支度をして、車を発進させました。



●井戸さんと私の共通点



 ところで、湯浅さんが「会いに行きましょう」と私を誘ってくれたのは、きっと、私がいままで取り組んできたことと井戸さんの取り組みに、何かしらの共通点があると感じたからのはずです。



 ここで、私がいままで取り組んできたことを簡単にお話しさせてください。



 私は新潟県妙高市で「NPO法人しごとのみらい」を経営しながら、2017年から東京のIT企業「サイボウズ」で、「週2日社員」「複業」「フルリモートワーク」という働き方をしています。



 また、「地方が軸で、東京でも働く」という働き方を始めて1カ月ほど経過したとき、「この働き方の逆ができたら――つまり、地方の企業に、都市部の人たちが複業できたら――地方の企業にとっても、都市部で地方に関心がある方にとってもいいに違いない」と感じ、その仕組みが作れないかと試行錯誤してきました。



 そういった働き方に関心を寄せてくれたのか、地元妙高市の企画政策課から「テレワークを活用して、都市部の人たちと交流する仕組みを作りたい」と声を掛けられ、現在はワーケーションの事業開発に取り組んでいます。



 このようにリモートワークや2拠点居住など、井戸さんと共通点があることが分かります。



●体の大きい男性、現る



 夕方、志賀高原に着きました。ちなみに、井戸さんは現在、横浜の会社は退職され、奥さんのご実家である志賀高原のホテル事業を営みながら、コワーキングスペースをはじめ、地域での事業開発に取り組んでいます。宿泊はもちろん、井戸さんのホテルです。



 実はこの日の夜、「せっかく井戸さんに会いに行くなら……」と、湯浅さんがオンラインイベントを企画していました。準備のために、到着してすぐに夕食です。



 食事をしていたら、体の大きい男性が姿を現しました。井戸さんです。「お、大きい……」。井戸さんはラグビーをやっていたそうです。ちなみに私は学生時代、吹奏楽部です。ここは共通点ゼロです。「だ、大丈夫かなぁ」



 夕食後はhiroenに移動し、オンラインイベントの準備です。段取りはよく分かりませんでしたが、取りあえず机の移動などを手伝いました(それだけ?)。でも、準備を手伝っていると、「これ、どこに移動しましょうか?」「そこに置いてください」など、少しずつですが会話が始まります。



 準備が終わり、オンラインイベントが始まりました。軽快なトークで語られたのは、井戸さんのこれまでの背景や、現在の取り組み、それに対する思いでした。私は片隅で、2人の会話を静かに聞きました。



●同志、会話がはずむ



 イベント終了後はホテルに戻り、軽くお酒を飲みながら話しました。いま取り組んでいること、それぞれの地域で感じている課題など、共通点は数知れません。「分かりますー」「志賀高原ではそうなんですね」「妙高ではこうですよ」――当初抱いていた不安感、緊張感はどこへやら。すっかり同じ「地域で活動する同志」です。



 このように書くと、井戸さんも私も、とてもうまくいっているように感じるかもしれませんが、正直、うまくいっていることばかりではありません。



 例えば、私のことをお話しすれば、「地方で複業」を実現するためには、地方の企業の理解も必要だし、都市部の人とマッチングする仕組みも必要です。また、最近ワーケーションが注目され始めたとはいえ、その定義は曖昧で「ワークとバケーションなんて、本当にできるのか?」といった、ネガティブな声も少なくありません。「一筋縄ではいかないな」と感じる毎日です。



 すみません、少し愚痴ってしまいました(笑)



 でも、プレイヤー同志の会話、楽しかったなー。イベントの終了が遅かったこともありますが、ふと気付いたら深夜2時を回っていました。



●つながりは、ちょっとした行動の先にある



 今回の出会いの体験を振り返ってみると、そこにあったのは「ひとことのつぶやき」「志を共にする仲間」「ちょっとした行動」でした。湯浅さんが私に声を掛けてくれた正確な理由は本人に聞かないと分かりませんが、恐らく、私の日ごろの取り組みや行動、発信があったからではないかと思います。



 ここで、大切だと思うのは、井戸さんとのつながりが、「作ろう」としてできたものではないということです。



 例えば、人とのつながりを作るために、よく「異業種交流会に参加しよう」などの話を聞きますが、名刺を交換しただけで人のつながりができるとは、正直思えません。



 また、「自分から積極的に関わりに行け」という話もあります。「ぜひ、あいさつさせてください」「情報交換させてください」「お話を伺わせてください」と、相手の懐に飛び込んでいく作戦です。



 でも、こういった話を実際に受けてみると、一方的に「あいさつさせてください」「情報交換させてください」と言われても、時間が奪われている感じがするし、「こちらのことを考えてくれていないな」と思います。相手の都合ではなく、自分の都合だけで人とのつながりを「作ろう」としているときは、なかなかできないものです。



 それよりも、普段思ったり、感じたりしていることを発信すること。「こういう場合は、こうすればいいんじゃないかなぁ」と思っているちょっとしたことをやってみること。そういった小さな発信や行動に、出会いの種があるんじゃないかなぁ。



 でも、ここまで読んで、こんなふうに思っている人もいるかもしれません。「それはあなただからできたことであって、私には何もありません。だから、そんなにトントン拍子に話が進むとは思えません」と。その気持ち、分かります。確かに現実はそうかもしれません。



 しかし……間違えないでください。私だって、最初は何もなかったんです。しかも、新潟の中山間地という、ビジネスや人との出会いにはとても不利な場所に住んでいます。環境としては、きっと、あなたの方が恵まれているはず。しかも、私が始めた時代と違って、いまならいろいろなネットのツールもある……。



 それならば、まずは思ったり感じたりしたことを発信すること、小さな行動を始めること……全ての出会いや人とのつながりは、その連続の先にあるのではないかと思うのです。



●筆者プロフィール



しごとのみらい理事長 竹内義晴



「仕事」の中で起こる問題を、コミュニケーションとコミュニティーの力で解決するコミュニケーショントレーナー。企業研修や、コミュニケーション心理学のトレーニングを行う他、ビジネスパーソンのコーチング、カウンセリングに従事している。著書「感情スイッチを切りかえれば、すべての仕事がうまくいく。(すばる舎)」「うまく伝わらない人のためのコミュニケーション改善マニュアル(秀和システム)」「職場がツライを変える会話のチカラ(こう書房)」「イラッとしたときのあたまとこころの整理術(ベストブック)」「『じぶん設計図』で人生を思いのままにデザインする。(秀和システム)」など。


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