【インタビュー】映画『彼女は夢で踊る』加藤雅也「低予算の地方の映画に出るときは、普段とは違うキャラクターが演じられることに意義がある」

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2020年10月19日 06:11  エンタメOVO

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写真ストリップ劇場の社長を演じた加藤雅也
ストリップ劇場の社長を演じた加藤雅也

 広島の老舗ストリップ劇場に閉館の時が迫っていた。社長の木下(加藤雅也)は、過去の華やかな時代や、自らの若き日(犬飼貴丈)の恋に思いをはせる。『シネマの天使』(15)で、閉館する実在の映画館を描いた時川英之監督が、今回は広島に実在するストリップ劇場を舞台に、現在と過去を交差させながら、主人公の心境や、ストリッパーたちの心意気を描いた『彼女は夢で踊る』が、10月23日から新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショーとなる。本作でストリップ劇場の社長を演じた加藤雅也に、映画への思いや、役作り、広島の印象などを聞いた。




−今回は企画の段階から参加したそうですが、どのような経緯だったのでしょうか。

 ちょうど自分がDJの仕事を始めた頃に、時川監督と横山雄二さんの『ラジオの恋』(14)という映画があることを知って、興味を持ちました。それで監督とお会いして縁ができました。それから1年後ぐらいに、たまたま映画のキャンペーンで広島に行って再会したときに、横山さんから「老舗のストリップ劇場が閉館する」という話が出ました。それで「映画の役割の一つとして、みんなの思い出の場所である建物を映像の中に残すというのがある。それをやってみないか」となったのが始まりです。

−これまでにないストリップ劇場の社長役。もじゃもじゃ頭に、眼鏡にひげ、広島なのになぜか関西弁と、随分と作り込んだ印象を受けましたが。

 言葉は、実際の館長が大阪から広島に来た人なので特に作ってはいません。でも外見は、僕が「これならストリップ劇場の館長に見えるかな」とイメージした形で作りました。それと、こういう役は、東京のメジャーの作品では僕にオファーは来ません。なので、こういう地方発信の映画でお話を頂いたときは、普段とは違うキャラクターが演じられることに意義があるわけです。「こんな役もやれる」というプレゼンテーションの意味もあります。だから、いつもと変わらない風貌で、同じようなことをやったのでは面白くないし、役者としていろいろな形を表現する、という意味ではプラスになると思います。今回はいろいろなことが表現できたので、やっていてとても楽しかったです。

−自分の若き日を演じた犬飼貴丈さんの印象は?

 事務所の後輩でもある犬飼が出ていた昼ドラを見たときに、「透明感があって、日本にはあまりいないタイプの俳優だ」と感じました。それで、「この役には彼が合っていると思うから一度会ってみて」と監督に推薦しました。監督は別の人にも当たっていましたが、犬飼と会った瞬間に「この人でいきます」と。犬飼はまだ「仮面ライダー」に出る前でしたが、彼の持っている純粋さがよく出ていたと思います。それで、同一人物なのに、犬飼と僕の表現が違い過ぎると言われたら、その通りなんですが、純粋にストリップや踊り子を愛した人間が、僕が演じた人間になるまでの何十年かの間には紆余(うよ)曲折があるので、それが同じではおかしいわけです。変わるところに人生が見えるので、今回は彼の持つ純粋さがなければ駄目だったと思います。

−実際の劇場で撮影したこともありますが、とても広島の街に溶け込んでいる感じがしました。撮影をしながら、土地の持つ力のようなものを感じましたか。

 それは感じました。長く住んだわけではありませんが、ずっと劇場の近くのホテルに寝泊まりしていましたし、ほとんどのスタッフやエキストラが広島の人だったので、その人たちの持っている雰囲気や言葉の中で、食事をしたり、話をしたりするわけですから、知らず知らずのうちに感化されたのでしょう。例えば、外国に行って、特に意識しなくても、その土地や言葉になじんでいくのと同じような感覚です。人間は無意識に目や耳から入ってくるものを吸収しますから。

 それと、広島の街には、この映画が必要としたエネルギーがありました。街によって違う空気感やエネルギーがあるので、地方で撮影をするときは、それを感じ取ることが大切になります。街の持つ力は大きいです。また、音楽と同じように、その街の持っているリズムを捉えることが、そこに溶け込むことにもつながるので、今回は、広島の街のリズムをつかんでしまえば、短い期間でも大丈夫だったのかなと思います。

−リズムと言えば、劇中で加藤さんが松山千春さんの「恋」を口ずさむ姿と、ラストのレディオヘッドの「クリープ」に乗って踊る姿がとても印象に残りました。

 「恋」は、千春さんがまだ売れなかった頃に、ストリップ劇場でアルバイトをしていたこともあったので、使わせてくださったそうです。ラストのところは、実際に「クリープ」を流しながら撮りました。実はまだ曲の使用権が取れていなかったのですが、もし他の曲になっても踊り方は変わらなかったと思います。あれは「俺は世の中の流れなんかには合わせない」というメッセージも込めて、自分の独自のリズムで狂ったように踊ったので。

−音楽の効用という点ではいかがですか。

 最近、音楽の持っている力の強さを感じます。それは先ほど話した呼吸やリズムを読み取ることにもつながります。例えば、去年大河ドラマの「いだてん」で、語学に堪能な役をやらせてもらったけれど、外国語と日本語ではリズムが違います。ただ、それを捉えてやれば、割とそれっぽく聞こえる。大事なのはリズムなんです。歌手の人が演技をすると上手なのはリズムを捉えているから。その点、ショーケン(萩原健一)さんや緒形拳さんはリズムを捉えるのがうまかったんだと思いますね。

−いよいよ東京での上映が始まります。改めてこの映画の見どころを。

 ストリップと言えば、どうしても、裸や、公序良俗に反するもの、女性が見るものではない、というイメージや先入観があると思いますが、この映画は、監督がストリップ劇場を舞台にしたラブストーリーとして仕上げました。もちろん、多少裸は出てきますが、映倫がPG12(12歳未満(小学生以下)の鑑賞には、成人保護者の助言や指導が適当とされる)にしたことが、これはラブストーリーであり、アートであると認めてくれた何よりの証拠です。だから、女性が見てもいいものになっていると思うし、ストリップが日本の文化の一つであることも感じてもらえると思います。今は新型コロナウイルスの影響があるので、「こういう映画があることを知っておいてください」としか言えないのが残念なのですが、とてもすてきな映画になっていると思います。

(取材・文・写真/田中雄二)


(C)2019 映画「彼女は夢で踊る」製作委員会

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