過熱するコールドタイヤ・ウォーズ。温まるまでが勝負どころ【スーパーフォーミュラ第3戦決勝あと読み】

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2020年10月20日 17:01  AUTOSPORT web

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平川、山本、キャシディの3人で抜きつ抜かれるの優勝争いとなったスーパーフォーミュラ第3戦SUGO決勝
スーパーフォーミュラ第3戦SUGOで今シーズン初優勝を果たしたニック・キャシディ(VANTELIN TEAM TOM’S)がレース後に発した言葉のなかで、もっとも多かったのが「自信があった」というフレーズ。具体的には「コールドタイヤでの走行」に自信を持っており、今回のレースではそのコールド状態でのバトルをキャシディが制することになったが、今季のこれからのスーパーフォーミュラはこのコールドタイヤを制するものがレース、そしてチャンピオン争いを制する展開になりそうだ。

 4番手グリッドから1周目で3番手に順位を上げたキャシディ。「オープニングラップはコールドタイヤだったけど、すごく自信があったんだ」とレース後の会見で語っていたように、タイヤのグリップが低い状態はキャシディにとっては大きなチャンスだった。

 その後、4周目に山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)にオーバーテイクを許してしまうも、セルジオ・セッテ・カマラ(Buzz Racing with B-Max)のクラッシュで再び3番手に上がったところで、キャシディにチャンスが訪れる。セーフティカーが入り、上位陣が揃ってタイヤ交換を行い、ギャップが縮まった状態でのリスタートの機会を得ることになったのだ。

「上位はタイヤも同じだったからリスタートを狙っていた。コールドタイヤでのリスタートにはかなり自信があったからね」と、ここで再び自信をアピールしたキャシディ。

 実際、27周目にレースが再開すると、29周目に2番手の山本をストレートから1コーナーでアウトからオーバーテイク。31周目にはトップの平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)も同じように追い抜き、首位を奪った。

 山本が「セーフティカー開けになかなかタイヤを温められず、ニックにオーバーテイクを許してしまいました」と話せば、平川も「ウォームアップが大変で、なかなか温めきれなかった」と山本と同様のコメントを残した。

 その平川に、31周目のキャシディとのバトルについて聞く。

 キャシディは「ラストコーナーで彼がミスをしたところを狙って、フルスロットルでスリップを利用してかなりリスキーだったけどオーバーテイクしたんだ」と平川へのオーバーテイクを語る。

 一方の平川は、「ミスというかタイヤが冷えていて、内圧が上がりきっていないところで最終コーナーでフロアを擦ってた状況でした。あの時はどうしてもあれ以上は行けなくて、まあ仕方がないですね」と、クールに振り返る。

「タイヤが温まってしまえば問題はないんですけど、今日のこの寒さでは1周、2周では温まらない。レースの時のタイヤの内圧は予選の時より低いので、そういうウォームアップの部分でなかなかうまくいかなかったのだろうと思っています」と続ける平川。

 スーパーGTでチームメイトでもあるキャシディのアウトラップの速さについては、平川も当然、熟知している。

「スーパーGTでも、ニックはアウトラップの1周目とか2周目が速い。スーパーGTのときは助けられていたけど、僕の場合、アウトラップはマージンを持って走っちゃうので、そこは完全にドライバーとして負けている部分だと思います」と、素直に敗北を認める平川。裏を返せば、まだまだ攻める余地が残っていることを平川も理解している。

 今回のSUGO戦は昨年までの6月開催から10月開催に変わって、当然ながら天候コンディションが大きく変わり、低気温の中でどう戦って行くかがポイントになってくる。さらに言えば、この先の11月のオートポリス、12月の鈴鹿、富士と低気温&コールドタイヤの攻略はチャンピオン争いのメインテーマにもなる。今回はタイヤが温まるまで3〜4周を必要としていたが、この先、何周必要になるのか。ルーキーテストなどで走行経験があるとはいえ、実際のレースで順位を争うなかでのアウトラップのプッシュした走行は、どのドライバーもそこまで経験があるわけではない。

 実際、今回も決勝日のウォームアップ走行では関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)が4コーナーで飛び出して赤旗中断、レースでもデビュー戦ながらポールポジションを獲得した欧州での実績豊富なセルジオ・セッテ・カマラ(Buzz Racing with B-Max)がアウトラップで同じく4コーナーでタイヤをロックさせてクラッシュして、コールドタイヤ下でのマシンコントロールの難しさを象徴してしまった。

 そういった状況を考えると、アウトラップに絶対の自信を持つキャシディは、すでに大きなアドバンテージを持っていると言っても過言ではない。

 キャシディを担当する小枝正樹エンジニアが話す。

「ニックのアウトラップ、そこは彼の強みだと思います。スーパーGTでもそうですけど、走り初めのまだ温まりきっていない状態のタイヤで抜いてくるし、今回もそうでした。レース前にニックも『自信はあるんだ』って言っていたんですよね。スーパーGTでもかなり助かっているので、このスーパーフォーミュラでも大きな武器になると思います」と小枝エンジニア。

「タイヤに熱を入れるのも早いし、タイヤを保たせる走りもできる。タイヤのマネジメント、コントロールがうまいのが彼の持ち味ですね」とキャシディの特徴を話す。

 アグレッシブにして繊細。キャシディが今回のSUGOでタイヤが温まりきっていない周回を勝負どころとしたように、今シーズンのスーパーフォーミュラはコールドタイヤの攻略が、シリーズを制する大きなポイントになりそうだ。

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