NTT東日本に聞く、ローカル5Gの取り組み 地方創生に向け産学連携で自治体をサポート

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2020年10月22日 06:12  ITmedia Mobile

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写真2020年7月に東京大学と共同で「ローカル5Gラボ」を設立
2020年7月に東京大学と共同で「ローカル5Gラボ」を設立

 ローカル5Gにはさまざまな事業者が参入しているが、現在のところ規模の面で最大手といえるのはNTT東日本ではないだろうか。同社はグループに携帯大手の一角を占めるNTTドコモを持つが、自らローカル5Gで直接無線通信を直接手掛ける理由はどこにあるのだろうか。同社でローカル5Gのビジネスに関わる3人に話を聞いた。



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●産学連携でローカル5Gに取り組む



 固定通信のイメージが強いNTT東日本だが、ビジネス開発本部 第三部門 IoTサービス推進担当部長の渡辺憲一氏によると、実はWi-Fiを用いた無線通信は以前から手掛けているとのこと。実際、オフィスや店舗などに向けWi-Fi環境を整備する「ギガらくWi-Fi」など、Wi-Fiを活用したソリューションには現在も力を入れており、日本のWi-Fi普及にも大きく貢献してきたという。



 それゆえ同社にとってローカル5Gは、企業ネットワークのエンドポイントとして利用する無線通信ソリューションの1つに位置付けられる。ライセンスバンドを使ってWi-Fiよりも高い品質を得られるローカル5Gもメニューの1つとして提供できるよう、取り組みを進めているとのことだ。



 ただ、ローカル5Gは新しい無線通信方式ということもあり、実際の取り組みにあたっては5G研究の第一人者であるという東京大学の中尾彰宏氏に協力を得て、中尾氏の知見を得ながら共同で取り組んでいる。実際、NTT東日本では東京大学と共同で「ローカル5Gラボ」を設立するなど、産学連携でローカル5Gの活用に向けた実証などを進めているという。



 NTT東日本では既に、100社以上の企業などとローカル5Gの活用について議論を重ねているという。渡辺氏によると、同社とローカル5Gに向けて取り組んでいる企業は製造業はもちろんのこと、物流や都市開発、農業など多岐にわたっており、「本当にさまざまで、どの業種が多いとは言いにくい」とのこと。幅広い業種の企業が関心を抱いているようだ。



 そうした中でも現在は、5Gの高速大容量を生かした高品質の映像伝送に関するニーズが高いというが、ビジネス開発本部 第三部門 IoTサービス推進担当課長の野間仁司氏によると、単に映像を伝送して見るというのではなく、収集した映像データをAIなどを活用して分析し、それを農業であれば収穫予測、物流であれば作業員の動線解析など、さまざまな用途に役立てる狙いが大きいとのことだ。



 そのAIを学習させる上でもデータが必要となるが、Wi-FiやLTEでは学習データを集めるのに時間がかかるため、高速大容量かつ安定した通信を実現できるローカル5Gは、学習データを収集させる上でも有益とみているようだ。



●DXへの危機感から自治体がローカル5Gに関心



 一方で同社は自治体向けのビジネスを多く手掛けていることから、自治体の5G活用に向けた相談や取り組みも多いとのこと。その一例となるのが、2020年2月にNTT東日本と東京大学、そしてローカル5Gの活用に積極的な姿勢を見せている東京都と2020年2月に協定を結んだ。



 3者の協定によって、中小企業振興の拠点である東京都立産業技術研究センターにローカル5Gの環境を整備し、5G関連の新技術・新製品開発に向けた模索などを進めている。子会社のNTTアグリテクノロジーもNTT、そして東京都農林水産振興財団と協定を結んでおり、ローカル5Gを活用した新しい農業技術の実現に取り組んでいる。



 東京都以外にもNTT東日本が産学連携でローカル5Gの活用に向けた動きは多く出てきているという。渡辺氏によると、各エリアの大学は地方創生の取り組みに向けた起点となることが多いことから、産学連携で大学と一緒に自治体での5G活用の取り組みを進められることは、大きなメリットになっているのだそうだ。



 しかしなぜ、自治体がローカル5Gにそれほど強い興味を持っているのだろうか。地域活性化や地方創生においても、デジタルトランスフォーメーションが重要なテーマになってきているためだという。渡辺氏は「農業や防災、地域イベントなど、地域活性化に関する案件に取り組もうとすると必ずITインフラ、中でも無線インフラが必要だという案件が多い」と答えており、3年くらい前からそうした動きが活発になっているのだそうだ。



 またNTT東日本はローカル5Gラボ以外にも、2020年8月11日に東京・秋葉原にオープンしたeスポーツ関連の施設「eXeField Akiba」や、NTTアグリテクノロジーが山梨県山梨市に持つ自社農場など、地域活性化の文脈でモノを考えるラボを持っている。そうしたラボとオープン5Gラボを連携させ、業務から技術までをワンストップで提供できる体制を整えていることも、自治体向けの取り組みを進める上での優位点になっているようだ。



 最近では、コロナ禍によって地方のデジタルトランスフォーメーションを本格的に進めなくてはいけないという危機感が全国で高まっていることから、その危機感をトリガーとしてローカル5Gの活用に向けた相談がなされるケースも増えているとのこと。カメラを使った「三密」の検知など新型コロナウイルスの感染対策に向けた活用、そしてテレワークだけでなく、接客や案内をロボットで代用するなど業務の遠隔化に向けてもローカル5Gを活用したいという声は多いという。



 ただ、ローカル5Gは現状まだ機器が高額だ。ビジネスイノベーション本部 テクニカルソリューション部 ソリューションアーキテクトグループ / 無線ビジネス推進PT(兼)担当部長の門野貴明氏によると、ソリューションを提供する側としては「顧客の課題解決が重要で、それを実現してくれるのであればどの無線方式でも構わない」ことから、実際にはローカル5Gだけでなく、Wi-FiやLPWA、SXGPなど複数の無線手段を検討して実装するケースが多いとのこと。それゆえ当面は、ローカル5Gの最適な活用法などをローカル5Gラボで検証しながら見定めていくことになる。



●ミリ波はどこまで有効活用できるのか



 とはいえ、現在のところローカル5Gに積極的に取り組んでいるのは東京都のような大きな自治体か、「大企業の中でも業界のトッププレイヤークラス」(渡辺氏)が多い。その背景には整備コストが高いという問題や、対応する端末の少なさ、そしてローカル5Gの技術知見が蓄積されていないことなどが挙げられる。



 一方、これまでの取材においては、現在ローカル5G向けに割り当てられているミリ波(28GHz帯)の問題に言及する声が多かった。遠くに飛びにくいなどミリ波の扱いにくさに加え、4Gのアンカーを用意する必要があり整備コストが高いことなどから、ローカル5G事業者からは2020年末に割り当てが予定されているサブ6(4.8GHz帯)を待って、事業を本格化するという声が多い。



 ではNTT東日本は、そのミリ波の扱いに関してどう考えているのだろうか。渡辺氏は28GHz帯について、「伝搬範囲を広げるのは難しいが、高速大容量通信や低遅延など、本来の5Gが持つスペックを生かす上では重要」と評価しているとのこと。実際に顧客からも「高精細映像による会議や、3D・VRの活用、さらには医療現場で細かな映像を見ながら作業をしたいという話をもらうこともある」(門野氏)ことから、そうしたニーズに応える上ではミリ波の重要性が高いという。



 野間氏は、4.8GHz帯である程度のエリアをカバーしながら、その場所だけ広帯域での通信が必要な部分に28GHz帯を活用するなど、ユースケースに応じて双方の帯域をうまく使い分けることを検討していると答えている。一方で、端末メーカーや基地局ベンダーなどからはサブ6、つまり4.8GHz帯にターゲットを合わせて機器開発を進めているとの声が多いようで、4.8GHz帯の割り当てによって「導入金額は一段下がるのではないか」(渡辺氏)と、導入のハードルが大きく下がるとみているようだ。



 では将来的に、ローカル5Gが拠点間をまたいで使用されるケースが出てきた場合、NTTドコモなど公衆向けの5Gサービスを提供するグループ企業との連携はあるのだろうか。渡辺氏は農地間の移動など、拠点をまたいで通信するケースは存在することから他の無線手段との組み合わせは必要と話しており、その際はグループ会社と相談しながら進めることを検討しているとしている。



●取材を終えて:地方創生にむけ自治体向けの取り組みに期待



 立ち上がったばかりのローカル5Gを事業として本格展開する上では、ネットワークに関する知見とソリューションを提供するシステムインテグレーターとしての実績の双方が大きく問われる。そうした意味でいうと、固定だけでなくWi-Fiによる無線通信でも豊富な実績を持ち、なおかつ企業から自治体まで幅広いソリューションを提供しているNTT東日本は、非常に強力なプレイヤーであることに間違いないだろう。



 特に、他のローカル5G事業者が獲得しにくいであろう自治体を多く顧客に持つ点は、NTT東日本の大きな強みといえる。政府は地方創生を5Gの重点テーマとして掲げているだけに、ローカル5Gを活用した自治体向けソリューションでいかに多くの実績を作り出せるか、大きなポイントになるといえそうだ。



 またローカル5G業界では4.8GHzの割り当てを本格的なスタートとみる向きが大きいが、その前にミリ波を有効活用できるソリューションをうまく開拓し、早期の事業拡大につなげられればその優位性は確固なものとなる。3者の発言からは同社がミリ波の活用にも積極的な様子が見えてくることから、ミリ波の有効活用という部分でも今後の動向が注目される。


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