室井佑月「知の世界への弾圧」

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2020年10月22日 07:00  AERA dot.

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写真室井佑月・作家
室井佑月・作家
 作家の室井佑月氏は、学術会議問題についてある新聞社からインタビューの依頼を受けたという。

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 日本学術会議が推薦した会員候補6人を菅義偉首相が任命しなかった問題について、仏・ルモンド紙は「日本の菅首相、知の世界と戦争状態」と書いた。ほかにも海外の大学や科学雑誌なども、次々と日本への懸念を表明している。

 これが普通の感覚だよね。この国の学者の研究が中国に利用されているとか、国から不当に学者個人にお金が出てるとか、任命されなかった学者とはまったく関係ないデマを流してまでも、必死で政権擁護をしている人たちがいるけど。

 あたしにいわせれば、政治が学問に口を出すって相当に野蛮なこと。そんなん、当たり前のことじゃんか。

 それに排除された学者は安保法制や「共謀罪」法に反対した人であるというから、こうした人たちを排除したいとは、この国がきな臭い方向に進んでいるんじゃないかと不安にもなる。戦争ができる普通の国にしたい、ってやつだ。

 でも、こういうことをいうと、おまえの妄想だろう、といわれてしまう。妄想が妄想でなくなったとき、そんなことはいっていられないんだけどね。

 そして、この件についてある新聞社からインタビュー取材がきた。一度断ったが、翌日もお願いされた。なぜ、あたし? あたしは「あり得ない」の一言しかいえない。

 というか1983年、内閣法制局は学術会議に関する文書に、首相の任命は「形式的任命である」と明確に記している。当時の中曽根康弘首相も「政府が行うのは形式的任命にすぎません」と国会で答弁した。

 つまり変わったのは、日本政府なのだ。あたしに物事の印象を聞くのではなく、なぜ変わったのか政府に問いただすのがスジではないか?

 それに10月3日、あれほど批判されているオフレコ懇談会へ、この新聞社は出向いた。出席しないと、菅首相が怖いからだろう。自分たち会社が怖いと感じることを、なぜ個人にさせようとするのだ、という意地悪な気持ちにもなった。

 3日のオフ懇に出席しなかったのは、東京新聞、朝日新聞、京都新聞。これらの会社は、「会食ではなく会見を」といっている。これも当たり前の話だ。

 それから2日後の5日、菅首相は記者会見ではなく、「グループ・インタビュー」という珍妙なものを行う。選ばれた社が代表して菅首相に質問をする。ほかの社はその音声を聞いているだけ。事前に知らされていたのだろう、首相はただ答えを読んでいるだけに見えた。どうしてこれを許しておくのか。

 ルモンド紙のいうように今、知の世界は戦争をしかけられているのかもしれない。どんな戦争も、あたしたちはただ被害を受ける。

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

※週刊朝日  2020年10月30日号

このニュースに関するつぶやき

  • 2003年だかに見直す事になったのに1983年の話を根拠にするのは無理がある。
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  • 学術会議の「3つの問題点」。学者とは思えないバカっぷりに加え10年間職務果たさず。「軍事研究に慎重であれ」と宣言も「中国科学技術協会」とは協力覚書結ぶhttps://www.zakzak.co.jp/smp/soc/news/201016/dom2010160004-s1.html
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