「10年後の悪夢が突然現実に」 JR西日本社長が語る巨額赤字・終電繰り上げ・3密防止システム

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2020年10月22日 08:00  AERA dot.

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写真長谷川一明(はせがわ・かずあき)/1981年、東京大学法学部卒。国鉄入社後87年からJR西日本。常務、副社長などを経て2019年12月から現職(撮影/写真部・東川哲也)
長谷川一明(はせがわ・かずあき)/1981年、東京大学法学部卒。国鉄入社後87年からJR西日本。常務、副社長などを経て2019年12月から現職(撮影/写真部・東川哲也)
 コロナ禍による利用者の激減で苦境に立つ運輸業界。鉄道各社は今年度の巨額赤字を見込む。AERA 2020年10月26日号は、全国に先駆けて終電繰り上げを発表したJR西日本社長に見通しを聞いた。

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 全国の鉄道会社に先駆けて終電の繰り上げを発表したJR西日本。背景には巨額の赤字見通しがある。長谷川一明社長(63)がその真相を語った。

──今年度決算の純損益が2400億円の赤字になるという見通しを発表しました。

 4月以降は新幹線は前年比7割減、京阪神圏の近距離のお客様は3〜4割減、定期のお客様が2割減という状況です。年明けにはワクチンや治療薬が開発され、社会的な安心感が出てくることで徐々に回復するとみており、3月には新幹線で前年比4割減程度まで戻るのではと。それでも大変な赤字見通しが避けられませんでした。

──来年度以降はどの程度回復すると見ていますか。

 従来の形の鉄道利用に戻ることはないと考えています。良くて9割程度ではないでしょうか。従来の営業利益率が12%程度でしたから、お客様が十数%も減ってしまうと、これはもう利益を出すのが大変厳しくなる。

 もちろん、少子高齢化と人口減による乗客減少への危機感は持っていましたが、10年後に想定していた「あまり来てほしくない未来」が突然現れたという状況です。2020年の翌年が2030年だった、ということなので、これまでのやり方を大幅に変えるしかありません。

■安全とコスト削減両立

──コスト削減策の一つが、終電の繰り上げですね。

 元々は昨年秋に、線路の補修作業時間を確保するために終電を早めることを検討したいと世の中に問題提起をし、アンケートなども進めてきました。そこにコロナ禍が重なった。深夜0時以降のご利用というのは従来も全体の1%未満だったのですが、今年度はこの部分のご利用が他の時間帯に比べても加速度的に減少しています。この状況を受けて、21年春のダイヤから最大で30分の終電繰り上げを行うことにしました。

──飲み会は減っていても、沿線で深夜まで働く人に不便を強いることになりませんか。

 我々も、医療機関などへの影響は懸念しまして、個別に聞き取りを行ったところ、交代制の勤務態勢のため終電の時間帯に出退勤するということはほとんどない、というご回答でした。また、繰り上げは他社路線への乗り継ぎに支障のない範囲で行います。アンケートでも終電繰り上げに反対またはどちらかと言えば反対の方が十数%おられましたが、「他社の終電への接続を確保する」という条件でお聞きすると半分に減りました。

 終電繰り上げにより路線補修に使える時間が長くなることで、限られた人員でも効率的に作業を行うことができます。厳しい経営環境の中、安全確保とコスト削減を両立させる必要があるということをご理解いただきたいと思います。

──コスト削減と安全確保の両立は簡単ではありません。

 近年急増するゲリラ豪雨への対策はその一例です。従来は平均12キロ間隔で自前の雨量計を設置して運行可否を判断してきましたが、ごく局地的な豪雨の観測は難しく、16年7月には広島県内の芸備線で列車が線路上の土砂に乗り上げる事故がありました。そこで国土交通省や気象庁のレーダーによる雨量情報を活用し、点ではなく面で降雨状況を確認できる仕組みを9月から一部で導入しました。コストを下げつつむしろ安全性を高められると考えており、全ての路線に順次導入する予定です。

■変動運賃阻む規制の壁

──コロナ禍で列車内の「密」を嫌う人が多くなっています。

 通勤時間帯の「密」を軽減する方策として考えているのが、ラッシュ以外の時間帯に列車に乗っていただくと運賃が安くなる時間変動型運賃です。技術的には可能なのですが、現状では国交省に認めていただけない。というのも、全体で我々がいただく運賃収入が変わらないようにするには、形として、混んでいる時間帯の運賃を上げなくてはなりません。今年夏からJR東日本さんなどとも一緒に、国交省に対して我々が儲けるための値上げではないとご説明し、導入を認めていただけるようお願いしているところです。

──高速道路はリアルタイムで混雑具合がわかるのに、列車はその仕組みがありません。

 駅や電車の時間帯別の混雑率は公表していますが、確かにリアルタイムではありません。お客様の意識が「密」を避ける方向へと変わっている中で、そういったデジタル投資はもっと進めなければと考えています。車両にセンサーやカメラを設置して、その情報をAIで解析してリアルタイムの混雑状況を知るといった方向性は必要だと考えていますが、全車両となるとコスト面も検証が必要です。

(聞き手/編集部・上栗崇)

※AERA 2020年10月26日号より抜粋

このニュースに関するつぶやき

  • 新幹線+在来線及び高速在来線+バス・タクシーみたいな相互リンクするフィーダー方式を全国で。
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  • JR西日本大赤字ですか。利用客多いと思ったのに。
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