「現場からは反発も」──現金手渡しの“昭和”な企業が経理の自動化ツールを導入するまで ジェフ市原の業務改善への道のり

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2020年10月22日 17:32  ITmedia NEWS

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写真当初は現金を手渡ししていた(写真はイメージ)
当初は現金を手渡ししていた(写真はイメージ)

 「社員やスタッフが立て替えた経費を、経理が毎月現金で手渡しする様子を見て、まるで昭和だと思いました」――そう語るのはプロサッカークラブのジェフユナイテッド市原・千葉を運営するジェフユナイテッドで、経理部門を統括する小林義幸さん(経営企画部財務部長)だ。



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 同社は小林さん主導の下、経理業務を自動化する取り組みを進めている。「社内では反発もあった」(小林さん)というが、現在は経費精算にかかる時間を従来の2分の1に減らせたとしている。



 現金の手渡しで立て替え精算を行っていた“昭和”な企業をどう説得し、取り組みを進めたのか。「重要なのは経営層と現場の理解を得ること」という小林さんに話を聞いた。



●総勢200人分の立て替え精算を手渡し



 ジェフユナイテッドはプロチームや下部組織の運営や選手の育成をはじめ、試合チケットやグッズの販売、営業、広報、集客などを手掛けている。サッカー教室やフットサルイベントの開催といったサッカーの普及活動も行い、社員以外にも業務委託契約を結ぶ監督やコーチなどチーム運営に関わるスタッフが多数いる。



 小林さんは2019年6月、ジェフユナイテッドの株主であるJR東日本から出向。経理担当は小林さん含め3人だった。着任した当時、経理のメンバーが社員やスタッフに精算分の現金を手渡ししている姿を見て衝撃を受けたという。



 それまでジェフユナイテッドでは、社員やスタッフが試合会場への交通費やボールなど購入費の領収書やレシートを、紙の状態で経理へ提出。経理がそれらを確認し現金を数え、社員やスタッフ約70〜200人分の総額100万円を毎月手渡ししていた。



 「紙の領収書やレシートを確認した後、現金を用意して手渡しという状態では手間と時間がかかります。領収書類に気付かず紛失する可能性もゼロではありません。お金をもらった・もらってないのやりとりもあり得ます。現金を手元に置いておくことも盗難リスクなどセキュリティ面からまずいと思いました」(小林さん)



 精算フローを自動化できるツールを導入すれば、従業員やスタッフの負担が減り、経理も紛失や盗難などのリスクも抑えられる。小林さんは会社に掛け合い、業務を効率化していくことにした。



●「それって必要?」現場が反発



 小林さんの提案に対して経営層も理解を示した。サッカークラブはスポンサーやファンから資金を預かり、クラブの運営に充てている。支出入の流れや精算フローの責任の所在を明らかにし、より高いレベルの内部統制を整備しなければならないというのが経営陣の認識だった。小林さんは「特に社長がツールの価値を理解し、導入に協力的だったのは助かりました」と振り返る。



 そこでまず小林さんは法人クレジットカードを作り、立て替え精算は振り込みで対応するようにした。次に、交通費や購入費の申請や承認をオンライン化し、勘定科目の仕訳作業なども行えるクラウド型の経費精算ツールを導入した。



 しかし問題は現場から理解を得ることだった。ツールの導入によって、社員やスタッフは申請や精算の方法を覚えなければならない。社内では「なぜ間接部門の経理のために新しい仕事をしなくてはいけないのか」「そもそも新しい方法にしなくてはいけないのか」という声が上がったという。



 そこで小林さんらは説明会を開催。申請がオンラインで済む、金額を自動計算することで間違いが少なくなる、紙の書類の紛失リスクが少なくなるといったツール導入のメリットを訴えた。「社員やスタッフがスムーズにツールを使えるよう使い方マニュアルも作成しました」と小林さん。懐疑的な声が上がるたび、社員やスタッフにとってのメリットや使い方を丁寧に伝えていったという。



 ちょうどツールを本格的に使おうとしたタイミングで、新型コロナウイルスの感染が拡大。同社も3月下旬から在宅勤務の体制へ移行することになり、通常より短い準備期間でツールを導入できたという。「コロナの影響でデジタル化を進めたわけではないですが、偶然が重なって旧態依然とした方法が時流に追いつきました」(小林さん)



●経費精算にかかる時間は半減



 ツールを導入後、目に見える効果があった。申請書類や領収書の回収が無くなり、承認や仕訳作業もツール上で行えるようになった。申請データを既存の会計ソフトに取り込むことで、紙のレシートや領収書を確認し金額を会計ソフトに手で打ち込む作業もなくなった。この結果、以前は1カ月かかっていた経費精算の月末処理は、2週間で終わるようになったという。



 精算業務をツール上で行えるようになったため、経理もテレワークができるようになった。導入前は全くできる状態ではなかったが、今は平均して週1回の在宅勤務を行っているという。



 ただし、ツールの使い方に関する質問を受けることは今でも多い。「ツールを使いこなし、会社全体が慣れるにはあと2〜3カ月かかると思います」と小林さん。ツールを定着させて経理業務の効率を上げるため、今後も根気よく説明を続けていくとしている。



 小林さんが積極的に取り組みを進める一因には、経理のメンバーに承認や仕訳などの定型業務とは別の仕事に携わってほしいという思いがある。機械ができることは機械で行い、人にしかできない創造性が発揮できる仕事を担ってほしいという。



 「本来、経理は会社の資金繰りや収益状態、費用の発生状況などを把握し、経営に直結する役割を担う部署です。定型業務を自動化することで、経理が経営に携わる他の仕事をする余力を作ることができます」(小林さん)



●法改正で「現状は劇的には変わらない」



 経理業務のペーパーレス化や効率化を巡っては、国の法整備も進む。10月1日には「改正電子帳簿保存法」が施行。これまで領収書や請求書などのデータには、提出や改ざん防止のためにその時刻にデータが確実に存在していたことを証明する「タイムスタンプ」を付与することが、発行側と受取側で必要だった。法改正後はクラウドでやりとりされるデータに限り、受取側のタイムスタンプが不要になった。加えて、キャッシュレス決済の明細情報は領収書やレシートの代わりとして使えるようになった。



 規制が緩和されることで、経理業務の効率化や負担軽減につながるのだろうか。小林さんは「少しずつ細かい部分の法改正がされてきているので、今回で劇的に変わることはないとは思います」としつつ、「明細データとして認められる範囲が広がったことで業務の負担が軽くなる面はあるかもしれません」と話す。



 今後もジェフユナイテッドでは経理業務の効率化を進めていく。経理の仕事は立て替え精算の対応だけではない。従業員の給与計算やイベント運営費、スポンサー費など取引先への請求や支払い業務もある。10月には社外への請求書の発行や集金などを自動化するクラウドツールを導入。導入済のツールと組み合わせ、業務の自動化をさらに進めていく考えだ。


このニュースに関するつぶやき

  • 言い出しっぺが最後まで責任を持ってシステムを定着させたから成功したんであって大抵は実務は丸投げして後は知らん顔のバカばかり。
    • イイネ!1
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  • むしろワシみたいな零細個人事業主は、現金手渡しのが手っ取り早いという現実もあるのよね(´-ω-)ウム
    • イイネ!21
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