高齢者“虐待”で警視庁に逮捕された職員は自称「竹の子族元総長」 本誌スクープで発覚

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2020年10月22日 18:40  AERA dot.

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写真村松竜司容疑者(本人のSNSより)
村松竜司容疑者(本人のSNSより)

 本誌が9月4日号で報じた東京都江戸川区の認知症高齢者グループホームでの“虐待疑惑”に、重大な新展開があった。入居者への虐待が指摘されていた元派遣職員の村松竜司容疑者(53)が、10月20日に暴行の疑いで警視庁に逮捕されていたことが複数の関係者への取材でわかったのだ。施設を監督する江戸川区役所も虐待があったと認定し、行政指導に入った。

 関係者によると、当時、派遣職員だった村松容疑者は7月28日午後4時ごろ、入居する90代女性を1人で入浴介助していた際、女性の頭部をバスタオルで何重にもぐるぐる巻きにして覆ったという。一歩間違えば窒息させる恐れもある危険な行為だ。

 この施設では職員1人で入居者1人を入浴介助することになっている。浴室、脱衣所は誰の目もない密室空間だ。ただ、この時は、たまたま脱衣所を通りすがった職員のAさんに見とがめられていた。Aさんは村松容疑者をこう注意している。

「顔ふさいじゃったら危ないよ」
「今みたいに頭ぐるぐる巻いたら窒息するからね。気を付けてね」

 この施設では、コロナ禍で外部からの面会が制限された3月ごろから入居者の顔や体にこぶし大にもなる大きなあざが散見されるようになり、太ももを骨折する入居者もいた。施設内で虐待が行われていることを疑った一部の職員は、事態を是正する糸口をつかむために、施設内部の音声を録音し、本誌に内部告発した。上記のやり取りも、こうして記録された音声の中に残っていた。

 本誌が入手した事件当日の施設の「ヒヤリハット報告書」には村松容疑者の署名で、殴り書きのような文字でこう書かれていた。

<入浴後頭をふいている時にタオルがかおにかぶってしまっていた>

 自分でタオルを巻きつけておきながら、まるで“他人事”のような記述には違和感を覚えざるを得ない。 

 実は、この件は施設内では周知の事実だったという。内部告発したBさんは本誌の取材にこう語る。

「翌日、所長は『これじゃ殺人未遂』とみんなの前で言っていました。みんな知っていると思います」

 90代女性の家族は、取材に対してこう思いを打ち明けた。

「逮捕は当然です。これまでけががあっても何の連絡もなかった。絶対に許せない。使用者にも責任があるはずです」

 村松容疑者は、施設内では「竹の子族の元総長」を自称していたという。

「まったく目立っていない、おとなしいやつ。竹の子族が末期の頃、同世代の周りがみんなやめてもずっと残っていて、長くいるからという理由で総リーダーをやっていた。その時のメンバーは100人もいなかったはず」(当時を知る関係者)

 施設の運営会社によると、男は2019年5月から派遣職員として施設で働き始めた。日勤にも夜勤にも入っていたという。介護資格は何も持っていなかった。

「ヤンキーみたいなしゃべり方をしていた反面、気の弱そうなところもありました。所長から注意される時はだんまりを決め込むんですが、スイッチが入ると他の職員には趣味のアイドルの話までよくしゃべりました。ある職員が『なぜ黙っているの』と聞いた時、『俺を怒らせると血の海を見る』と真顔で答えました。俺は本当は強いんだぞ、とはったりをかましているように思いました」(Bさん)

 入居者に対しては暴力的な一面を見せていたようだ。

「ゲストさんの襟ぐりを掴んで歩かせていたことがあります。お茶を飲ませる時、嫌がっているのに何度も『飲め』と強要するなど、乱暴なところがありました。夜勤の日には、『今日は俺の番だからな。みんなわかっているよな』と、ゲストさんに言い含めていた。何も問題を起こすな、トイレにも呼ぶなという脅しだったと思います。ゲストさんも夜中にトイレだって行きたくなるはずなのに、自分の都合を優先させていました」(職員Cさん)

 事態が深刻化したのはコロナ禍が本格化した今年3月以降。緊急事態宣言が発令され、感染を防ぐために外部からの面会が制限され、施設内が「ブラックボックス」化してからだ。本誌に内部告発した職員たちによると、3〜7月に、少なくとも3人があざや骨折などのけがをしている。前述の録音記録には複数の職員による暴言や、入居者の泣き叫ぶ声が残っていた。その中には、村松容疑者が入居者に対し「ばーか」「今後はビンタじゃ済まないからな」などと暴言を吐いていた記録も残っていた。

 8月にはBさんら内部告発者の通報を受け、江戸川区介護保険課が調査に入った。施設の所長や職員10人以上に個別で聞き取りをして、入居者のけがの様子も確認。そこでの証言をもとに、10月上旬、施設で身体的、心理的な虐待が複数件あったと認定し、運営会社に伝えた。身体的な虐待をしたのは今回逮捕された1人、心理的な虐待をしたのは複数人とした。今後は1カ月以内に、運営会社に改善計画書を出すことを求めている。

「施設側は虐待を認めました。(介護保険法の事業者の)指定の取り消しはあり得ますが、認定したからといって取り消すのではない。懲らしめるというより、虐待がなくなるようにするのが目的。このようなことが起こらないようにするための計画を出してもらい、それが妥当かどうか指導していく」(同課)

 運営会社は8月に本誌が取材した際には、「虐待が行われたという事実や職員の暴力、暴言等は確認できませんでした」としていたが、今回の取材では一転して認め、人事担当者が次のように回答した。

「(村松容疑者が)ゲストさんの顔をタオルで覆ったとわかり、派遣の契約を打ち切りました。社内の調査では暴力によるけがは確認できなかった。暴言は認識していなかったが、行政の調査結果があったので、それもあったと認識している。だが、虐待があったという適切な報告がなされていなかった。施設では虐待という認識がなかったのではないかと推察されます」

「行政に虐待を認定された。しっかり受け止めて、対応策を考えているところです。ほんとうに申し訳ないと認識している。入居者やご家族にご迷惑をおかけしました」

 家族にも説明済みだという。行政指導を受けて10月上旬、虐待があったフロアの入居者の家族に担当者が電話し、週刊朝日で報じられたことや、なるべく早く対策を取ることを説明した。今後も家族には説明するつもりだという。バスタオルを顔にかぶせられた90代女性の家族には10月21日、逮捕を受けて個別で「謝罪したい」と電話したという。

 警察と行政が動いたことにより、急転直下で動いた虐待問題。だが、今回立件されたのはバスタオルの一件だけで、「ブラックボックス」の中で起きていたことの多くは明るみに出ていない。

(井上有紀子)

※週刊朝日オンライン限定記事

このニュースに関するつぶやき

  • こんなクズ金の無駄だろ�ѥ���
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  • 「竹の子族」なんて今の人は誰も知らないんじゃ‥‥
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