35周年「金曜ロードSHOW!」“テレビで観る映画”を守り続ける意味

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2020年10月23日 08:40  ORICON NEWS

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写真『金曜ロードショー』オープニングタイトル(1985年〜1997年) 画像提供/日本テレビ
『金曜ロードショー』オープニングタイトル(1985年〜1997年) 画像提供/日本テレビ
 1985年10月の放送開始から今年で35周年となる日本テレビ系『金曜ロードSHOW!』(放送開始時は『金曜ロードショー』)。洋邦問わず、過去作から最新作までがラインアップされ、「この番組で初めて映画作品に触れた」という人も多いだろう。そんな『金ロー』は、今や地上波ゴールデンで定期放送される唯一の映画番組。レンタルや映像パッケージ、そして配信と時代と共に映画に触れるメディアが多様化する中、さまざまな取り組みで新たな価値を見いだしている。他局の映画番組が次々と撤退していくなか、「テレビで観る映画」を守り続ける意味とは?プロデューサーの北條伸樹氏に話を聞いた。

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■観るつもりなかった映画作品との“偶然の出会い”

 アラフォー以上の世代とって『金曜ロードショー』と言えば、水野晴郎さんの名解説でも親しまれた映画番組。「私もその世代です(笑)」という北條氏が同番組のプロデューサーに就任した2017年は、各局が地上波での映画番組をなくした年だった。

「ちょうどテレビ朝日さんの『日曜洋画劇場』が終わり、『金曜ロードSHOW!』が最後の民放ゴールデンタイムの映画番組になった年でした。(映画番組の枠の減少は)やはり配信をはじめとするメディアの多様化が大きいでしょうね。テレビにおいても映画は録画やタイムシフト視聴されやすいコンテンツで、リアルタイム視聴の苦戦がさらに浮き彫りになった時期でした」

 テレビ番組の時間に合わせて生活するのではなく、観たいものを自分の都合のいい時に観る。メディアの多様化は、視聴者に利便性をもたらすと同時に、映画番組をテレビで観るというひとつの文化の灯を脅かす存在になった。だが、北條氏は「テレビで観る映画」にはもっと別の価値があるという。

「『配信』というのは基本的に自分から情報を取りに行くわけで、つまりコアな映画ファンだと思うんです。観たい作品を自分の意志で観る。劇場に映画を観に足を運ぶのと同じです。一方でテレビはもっとライトと言いますか、わざわざ観ようと思わなかった映画との偶然の出会いを提供できるのが『テレビで観る映画』の価値ではないかと考えているところです」

 映画館に気軽にアクセスできない層、特に子どもにとって、「テレビで観る映画」は貴重な機会。人生で初めて観た映画作品が『金曜ロードショー』だったという人や、これをきっかけに映画ファンになったという人など、「映画の原体験」として、『金曜ロードショー』が果たす役割は、昔も今も非常に大きい。

■“バルス祭り”が生まれた背景「視聴者の自発的な盛り上がりに水を差さない」

 こうした状況を鑑みて、作品のラインアップも意識して選んでいると北條氏は言う。

「かつて以上にファミリー向けを意識している傾向はありますね。ただ、ときにはチャレンジ的な作品も意識的にラインナップしています。昨年10月には『IT/イット THE END “それ”が観えたら、終わり。』の公開に先駆けて、前作の『IT/イット “それ”が観えたら、終わり。』を放送。R15作品をややマイルドに編集したので、コアなホラーファンには物足りなかったかもしれませんが、ホラー入門編としてはアリだったんじゃないかなと思ってます」

 放送する作品選定については、昨年末から視聴者リクエストを反映した企画をスタート。今年から「見たい!見せたい!名作映画 金曜“リクエスト”ロードSHOW!」と題し、これまでに、『天使にラブ・ソングを…』、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』3部作、『E.T.』、『プラダを着た悪魔』といった人気作を放送。いずれも大きな反響があったという。

「いずれも名作ですが、テレビで放送するのは実に久しぶり。『E.T.』に至ってはゴールデン・プライム帯での放送は25年ぶりでした。しかもうれしかったのが、『E.T.』は非常に多くのティーン層の方にご覧頂いたんですよ。親世代にとっては懐かしいこれらの名画も、若い世代にとっては新作と同じ感覚で観れたんじゃないでしょうか」

 新たな取り組みはこれだけではない。データ放送や番組ホームページと連動したかたちで、視聴者同士が“共感”し合う仕組みを構築、運用している。

「今年から始まったものとしては、公式サイト『金曜ロードシネマクラブ』内に『金曜ロードシアター』という視聴者参加型の機能を立ち上げました。こちらは放送を観ながら画面のリアクションボタンを押すことで、全国のどこかで観ている人と作品を共有し、感情を共感できる機能です。まだ立ち上げたばかりなので、今後はもっと機能を充実させていきたいと考えています。
 9月11、18日に「名探偵コナン」を放送した際には、弊社のコナン好きアナウンサーである徳島えりかと尾崎里紗が『金曜ロードシアター』に登場し、いろいろとつぶやいてもらったのですが、今後は映画に出演している俳優さんなどもキャスティングできればと考えています」

 もちろん、『天空の城ラピュタ』の“バルス祭り”など、ジブリ作品でのSNSの盛り上がりも、リアルタイム視聴を促す追い風になっている。

「ジブリ作品はキラーコンテンツですし、SNSの特性である共有する楽しさもあり、リアルタイム視聴の大きなアドバンテージになっています。ただ、視聴者の方の自発的な盛り上がりに水を差すようなことはなるべくしないように心掛けています(笑)」

■番組オリジナルの吹き替えも醍醐味の一つ

「映画との偶然の出会い」「リアルタイムでの視聴者同士の共感」とともに、北條氏のいう「テレビで観る映画」の醍醐味の一つが、「吹き替え」。かつては、放送局が独自にオリジナルで吹き替えを制作しており、作品によっては数パターンの「吹き替え版」が存在。例えば、先日放送された『E.T.』の主人公の声は、現在人気声優として活躍する浪川大輔氏が担当。初々しい子役時代の貴重な声が放送された。

「(放送した『E.T.』は)子役時代の浪川さんの貴重なお仕事の1つですよね。他にも吹き替えバージョンはあるのですが、話題性も加味して映画会社にこちらの吹き替え素材を提供していただきました。ちなみに『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は、山寺宏一さんが主人公の吹き替えバージョンを放送しました」

 劇場やビデオ、DVDなどパッケージでも聞けないオリジナルのものを観ることができたのも「テレビで観る映画」ならではだった。

「ただ、オリジナルで吹き替えを制作しても、権利は局ではなく映画会社に帰属します。だから、例えばフジテレビさんが『ゴールデン洋画劇場』(71年〜01年)で制作した吹き替えも許可を得れば『金曜ロードSHOW!』で放送することも可能なんです。自分もこの番組を担当するまで知らなかったんですが(笑)」

 近年は制作費の関係でなかなか制作できないというが、その灯も絶やさないようにしていきたいと北條氏は言う。

「正直、予算の関係もあって近年はパッケージ版の吹き替えを放送することが増えています。直近で『金曜ロードSHOW!』オリジナルの吹き替えを制作したのは、主人公に寺田心さんをキャスティングした昨年12月放送の『ホームアローン3』でした。今後も1年に1作くらいは続けていきたいですね」

 「今はまだ具体的に話せない」というが、年明けにはオリジナル吹き替えの新作も予定している。

「また来年早々にはオリジナル吹き替えを新たに制作、放送したいと考えています。詳細はまだ言えないのですが、キャストも映画もけっこう話題になるのでは……と思っているので、ぜひ楽しみにしていてください」

 こうした取り組みが奏功し、「現在は少しずつ上向いている状況です」という『金曜ロードSHOW!』。35周年はあくまで通過点。今後も「テレビで観る映画」への逆風に負けず、さまざまな取り組みで、その伝統の灯を守り続けてほしい。

文/児玉澄子

このニュースに関するつぶやき

  • ホラー映画も、放送してほしい。
    • イイネ!3
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  • CM量減らしてほしい……
    • イイネ!21
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