「セルフレジ万引き」増加中! 商品をスキャンせず持ち逃げ、バレると「機械のせい」……万引きGメンはどう出る!?

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2020年10月24日 19:02  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

 こんにちは、保安員の澄江です。

 先日、普段通っている馴染みのスーパーで、図らずも盗んだと疑われても仕方のないことをしてしまいました。無論、商品をエコバッグに隠匿したりするような行為をしたわけではありません。商品の読み取りから会計まで、全て購入者が済ませる、いわゆるフルセルフレジで精算したしたのですが、家に帰り、ポイントを確認するべくレシートをチェックしたところ、レシートに記載されていない商品があったのです。その商品は、2キロの新米。バーコードを読み取り機に当てて、チェック音を聞いた記憶もあるのに、なぜだか支払いがなされていません。お店に電話をかけて、使ったレジの位置と時間、ポイントカードの番号を伝えて事情を説明すると、次回の来店時に支払ってくれれば構わないと対応されました。しかしながら、それも気持ち悪いので、すぐに伺うことにして支払いを済ませます。

「この度は、失礼しました。こういうことって、ほかにもあります?」
「ええ、たまにありますよ」
「ピッていう音、鳴っていたんですけどね」
「混雑する時間ですし、他のお客さまの音と混同されたのかもしれませんね。重い商品なので、読み取るときに揺らいで、うまくスキャンできなかったとも考えられます。どうか、お気になさらないでください」

 サービスカウンターに出向いて事情を話すと、電話口に出たと思われる女性スタッフの方が、嫌な顔ひとつみせずに対応してくれました。帰りの道中、過去に見たセルフレジを悪用した捕捉事案と、自分の行動を照らし合わせながら家路を辿ります。

(もし、現場で同じことをする人を見かけたら、きっと声をかけているはず。悪意がないとはいえ、もし声をかけられていたら、どうなっていたかしら……)

 少しでもタイミングが悪ければ、自分のキャリアが崩壊していた可能性まで考えられ、改めて安堵した次第です。今回は、フルセルフレジを悪用する万引き犯について、お話ししたいと思います。

 当日の現場は、大型ショッピングセンターY。挨拶のため総合事務所に到着すると、店長はお休みとのことで、どことなく亀田史郎さんに似ている副店長が対応してくださいました。形式的な挨拶を済ませて、いつものように注意事項を確認すると、副店長が苦虫を噛み潰したような顔で言います。

「ここは、セルフレジでチェッカーをスルーする人が、たくさんいてさ。導入してからは、売場で商品を隠す人を、全然見かけなくなったくらいなんだよね」

 この店は、将来的に店舗の無人化運営を見据えているようで、店員さんが商品をスキャンして、支払いのみ機械でするセパレート式のセルフレジだけではなく、その全てをお客さんが行うフルセルフレジも複数台導入しています。お客さんに精算の手間を預けることで、確かに人員コストは下げられるかもしれませんが、不正行為による被害を考えると、その全てが無駄のような気がしないでもありません。

「あなた、そういう人も、捕まえられるの?」
「はい、何人か扱ったことあります。否認される方が多いから、大変なんですよね」

 フルセルフレジにおける犯行は、捕捉後に犯意を否認される方が目立ち、その処理には余計な時間がかかります。悪い人の目で監視スタッフの様子を窺い、おかしな手つきで商品を隠しているにもかかわらず、精算したつもりだったと居直る人が多いのです。一見して、言い訳しやすい環境と思えますが、各台には比較的高性能の防犯カメラが設置されており、咄嗟に思いついたような嘘は通用しません。精算の様子は一部始終記録されており、その映像からも犯意は特定できるのです。

「そうなんだ。大変でしょうけど、今日はセルフレジを中心に警戒してもらえるかな。期待してますよ」

 セルフレジを中心にと言われても、商品を手にするところから見ないと、なにも始まりません。通常通りに巡回をして不審者の発見に勤しみ、その結果として、そうした手口を用いる被疑者が現れるのです。いつも通り、比較的高価で万引きされやすい商品を手に取る方々を確認して回ることに決めた私は、化粧品や高級食材などの売場を中心に警戒することにしました。

 すると、勤務中盤に差し掛かったところで、どことなく工藤静香さんを意識している感じがする50代前半と思しき髪の長い痩せた女が目に止まります。ポイントデーでもないのに、比較的高価なオリゴ糖と蜂蜜のボトルを3本ずつカゴに入れるところを目撃してしまい、ちゃんと買うのか気になったのです。追尾すると、次に複数のクレイジーソルトをカゴに入れた女は、牛すね肉、スペアリブ、菓子パン、モッツァレラチーズ、そして最後に高価な赤ワインを2本カゴに入れて、レジの方へと向かって行きました。

 入口に設置された5円のレジ袋を手に取り、フルセルフレジのエリアに入った女は、サポート役の店員さんから一番離れた台に陣取ります。店員さんに背中を向ける形で、レジ袋をスキャンしないまま精算台にセットすると、何食わぬ顔で商品の精算を始めました。

(レジ袋だけではなさそうね)

 ちらちらと女が店員さんのほうを気にしている隙に、女の手とレジのモニターが確認できる位置まで移動して精算状況を確認すると、ここでは公表しかねる手口で、いくつもの商品をレジ袋に隠しているのを現認できました。会計時、酒類を購入したことから年齢確認のためにサポート役の店員さんが駆けつけましたが、女の悪事に気付いている様子はありません。店員さんが離れ、スキャンした商品のみ精算を済ませた女は、かなりの早足で店を出ていきます。後方を振り返りながら店の外に出た女が、出入口脇に停められた電動自転車に手をかけたところで、そっと声をかけました。

「あの、お客様? 店の者ですが、そちらのお会計、ちょっと確認させていただけますか?」
「はあ? なんですか? お店開けなきゃいけないから、時間ないんですけど」
「すぐに終わりますよ。レシートは、ございますか?」
「これですけど……」

 なぜだかわかりませんが素直にレシートを出してくれたので、レジ袋に入れた商品と照合させていただくと、案の定、複数取りした商品の精算が一部しかなされていません。はっきり言ってしまえば、買ったモノより盗んでいるモノのほうが多い状況です。

「お支払い済んでないモノ、たくさんあるんですけど……」
「え? ウソ? 私、全部通しましたよ」

 そう言い張るので、直接本人に照合してもらうと、どこかわざとらしく狼狽してみせた女が、意味不明の言い訳を始めました。

「あれ? ホントだ。なんでだろう? もしかして、機械が壊れているんじゃないですか」
「お釣りまで出ているのに。壊れているわけないじゃないですか。そんな言い訳、通りませんよ」
「はあ? そんなこと言われても……。以後、気をつけますね。お金、払ってきます」

 店内に戻ろうとする女を呼び止め、事務所で払ってもらうよう促すと、時間がないと言いながらも同行に応じてくれました。事務所に到着して、身分証明書の提示をお願いすると、女は52歳。旦那さんと二人、隣町で小さな洋食屋を営んでおられるそうで、店を開けないといけないので時間がないのだと繰り返しています。

 この日の被害は、レジ袋を含めて計10点、合計8,000円ほどとなりました。

 どうにも落ち着かない様子でいる女に、被害品の伝票を確認してもらうと、現金の持ち合わせがないのでカードで払いたいと、まるで悪気のない感じで話しています。すると、事務所内のロッカーから「(秘)不審者ファイル」を取り出してパラパラとめくっていた副店長が、興奮気味に声を上げました。

「ウチのブラックリストに、あんたの写真があるんだけどさ、同じこと何度もしているよね?」
「いえ、本当に払ったつもりでいました。すみません。これからは、気をつけます」
「いや、あんた出入禁止だから、二度と来ないでくれる? 今日は、いままでの被害も含めて、きちんと警察に調べてもらいますから」

 おそらくは言い訳を用意した上での犯行と思われ、声をかけられたときの対応もシミュレーションしてきたのでしょう。まもなく臨場した警察官に引き渡された女は、否認を続けたことが影響したのか、犯歴がないにもかかわらず基本送致されることになりました。

「店で使うモノだって話しているから、仕入れ目的みたいな感じだろうね。本人は認めないけど、計画的にやっている感じだよ。コロナのおかげで、お店やっている人の万引きが増えてきたよなあ」

 処理を終えて警察官と一緒に地域課を出ると、女のガラウケにきていた旦那さんが、廊下に設置されたベンチシートに大股を広げて座っておられました。憎悪あふれるような目で睨まれ、とても怖かったです。
(文=澄江、監修=伊東ゆう)

このニュースに関するつぶやき

  • セルフレジで小銭が飲まれることがある。しっかり数えてピッタリ金額分入れたのに足りない。店員に言ったら、機械でそれは有り得ないの一点張り。有人レジが確実だ。
    • イイネ!1
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