Jリーグで活きのいいドリブラーが日本サッカーの閉塞感を打ち破る!

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2020年10月26日 06:11  webスポルティーバ

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 しがないフリーのスポーツライターにとって、交通費がかさむ地方取材のハードルは決して低くない。今年はさらにコロナ禍における自粛意識も重なり、地方に足を運ぶことはまったくなくなった。ゆえに7月に再開された今季のJ1取材の行き先は、自ずと首都圏クラブのスタジアムに限られている。




 幸いなことに今季のJ1には、関東に本拠を置くクラブが8チームもあり(昨季は6チーム)、毎節複数の会場で試合は行なわれるから、赴く先の選択肢は豊富にある。アウェーにやって来た関東圏外のクラブの戦いも、昨季以上にカバーすることができている。

 しかし、巡り合わせの妙というべきか。ここまで唯一、直接目に触れられなかったクラブがある。セレッソ大阪だ。

 2年目のロティーナ監督のもとで躍進を遂げ、今季のJ1のメインキャストのひとつであるこのチームのことは、大いに興味を持っていた。だが、なぜか関東遠征にやって来たC大阪の試合のタイミングに、こちらの都合がうまくハマらなかったのだ。

 もちろん映像は見ていたし、ロティーナ監督が整備した守備組織の強固さも理解している。清武弘嗣が今年はケガなくハイパフォーマンスを続けていることもチェックしているし、西川潤という大物ルーキーの存在も認識している。

 モンテディオ山形から加入した坂元達裕のブレイクも知っているが、昨季はJ2にいたこの選手のプレーはまだ見たことがなかった。だから、未見のこのドリブラーのパフォーマンスを確認することが、埼玉スタジアムに赴いた最大の目的だった。

 調子を上げてきた浦和レッズに対し、坂元のプレーはどこまで通じるのか。もっともこの日の坂元は、そのポテンシャルを十分に発揮したとは言い難かった。

 立ちあがりこそキレのあるステップで逆を取り、相手に倒されてファウルをもらうシーンを連発。巧みな胸トラップでボールを浮かし、そのまま身体を反転させて相手を抜き去るなど、テクニックの高さも垣間見せていた。

 しかし、次第にいい形でボールを受けられなくなると、無理な仕掛けからボールを失う機会が増加。効果的な崩しを繰り出せないまま、73分にピッチを退いている。

 加入1年目の今季、ここまで1試合を除く24試合にスタメン出場し、2得点・6アシストと目に見える結果も出している。C大阪の躍進の立役者のひとりであることは間違いない。

 だが、相手の対策が厳しくなっていることも、また確か。そこをいかに乗り越えていくかが、24歳になったばかりのドリブラーのこれからのテーマとなるだろう。

 坂元が苦しんだのとは対照的に輝きを放ったのは、浦和の左サイドでプレーした汰木康也だ。

 24番を背負う痩身のサイドハーフは、1点ビハインドの32分に、巧みなキックフェイントで狭いエリアをかわそうとしたところを倒されてPK奪取に成功。さらに71分には敵陣深くのゴールライン際でするすると相手を抜いていき、マルティノスのダメ押しゴールを演出している。

 2ゴールに絡んだこの汰木こそが、C大阪の堅守を打ち破る立役者となったことは間違いない。「前にボールを運べる選手が多かった」と、大槻毅監督も勝因のひとつにこのドリブラーの存在を上げている。

 面白いことに、汰木もまた坂元と同じ山形からステップアップを果たした選手である。

 横浜F・マリノスの下部組織から2014年に山形でプロデビュー。5シーズンプレーした後、昨季浦和に加入した。東洋大から昨季山形に入った坂元とは直接的な接点はないはずだが、年齢的にもひとつ上の"先輩"として意地を見せた格好だ。

 加入1年目の昨季は8試合の出場にとどまったが、2年目の今季は左サイドハーフとして開幕からスタメンを確保。8月、9月とその座を失う時期もあったが、第21節のサガン鳥栖戦で初ゴールを奪うとスタメンに返り咲き、第22節の柏レイソル戦、第23節のベガルタ仙台戦とアシストを連発し、C大阪戦でも勝利につながる活躍を見せた。

 突如覚醒したドリブラーは、「結果はまだ物足りないと感じている」と決して満足せず、「欲を言えばもっとゴールに絡みたい。1試合に1本はアシストだったり、ゴールだったり、結果を出したい。そこにこだわって努力していくだけ」と、どこまでも貪欲だ。

 汰木のブレイクに合わせるように、浦和もここ4試合負けなしと復調の兆しを見せている。今季も終盤戦を迎えたなか、このキレキレの"突破者"が、さらなる浮上のカギを握るだろう。

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 坂元、汰木だけではなく、今季のJ1では活きのいいドリブラーの台頭が目立つ。

 川崎フロンターレの三笘薫を筆頭に、横浜FCの斉藤光毅と松尾佑介、北海道コンサドーレ札幌の金子拓郎、名古屋グランパスの相馬勇紀らが、単独で局面を切り拓き、チームに勢いをもたらしている。

 守備戦術が整備されるにつれ、パスだけでは打開できない状況が生まれる。それは引いた相手に苦しむ"対アジア"の日本代表の積年の課題でもある。

 そんな閉塞感を打ち破るために求められるのは、やはり「個の力」である。ドリブラーの価値は、今後ますます高まっていくはずだ。

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