菅首相の学術会議任命拒否は「露骨に違憲」で「日本のイノベーションをも消す行為」と専門家

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2020年10月26日 16:00  AERA dot.

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写真自身のブレーンを集めた成長戦略会議で発言する菅首相。異論を認めず、人事権を使って排除することをためらわない強権的な体質が目立つ (c)朝日新聞社
自身のブレーンを集めた成長戦略会議で発言する菅首相。異論を認めず、人事権を使って排除することをためらわない強権的な体質が目立つ (c)朝日新聞社
 人情派のパンケーキおじさん。菅首相のそんなイメージ戦略が早くも破綻している。見えてきたのは権力をかさに着て異論を封殺する戦前戦中的な政治姿勢だ。AERA 2020年11月2日号では、菅首相が学術会議の候補の任命を拒否した問題について、専門家らに話を聞いた。

【写真】任命拒否に関与していたと言われる官邸官僚はこの人

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 出だしからつまずき、めっきが剥がれかかっている。あれよという間に政権を手中にした菅義偉首相のことだ。たたき上げで苦労人の「人情派」といったイメージとは対極の、冷徹で強権的な本質が早くも顔をのぞかせてきた。日本学術会議が推薦した候補6人を任命せず、故・中曽根康弘元首相の内閣と自民党による合同葬に際して教育現場に弔意の表明を求めたやり方が波紋を広げている。

■露骨に学問の自由侵害

「憲法23条は『学問の自由は、これを保障する』という一行だけで、学者の研究成果や発表は自由に認めるということを明確に規定している。これについて戦前のように政府が『けしからん』ということはできませんよということです」

 終戦時に12歳だった政治評論家の森田實さん(88)は戦中、戦後の学術と政治の在り方の生き証人だ。それゆえに安倍−菅ラインで進んできた学問の自由の侵害に敏感に反応する。

「厳密に言えば、候補者案に同意せず補充を見送るという安倍政権のやり方も憲法違反ですが、6人の排除が表に出た菅内閣のやり方は露骨。しかし、明らかな憲法23条違反になるので、彼らが政府批判をしたから外したとは言えない。しかも道徳的、個人的な欠陥を理由にすることもできない。なぜなら学術会議が推薦する段階でそういう人は除外するはずですから」

 日本学術会議は国民生活に科学を反映、浸透させることを目的に1949年1月、首相の所管のもと、政府から独立して職務を行う「特別の機関」として設立。約87万人の科学者を代表するいわば「学者の国会」として政策提言などを行ってきた。定員210人、任期は6年で再選はできず、3年ごとに半数を改選することなどが日本学術会議法で定められている。

 今回は9月まで会長職にあった山極寿一・前京都大学総長が8月末、105人の新会員候補の一覧表を安倍晋三首相(当時)に提出したが、9月16日に跡を襲った菅首相はこのうち芦名定道・京都大学大学院教授(キリスト教学)ら6人の任命を拒否した。結局、ノーベル物理学賞受賞者の梶田隆章・東京大学宇宙線研究所所長を新会長に10月1日に発足した新体制で、この6人は任から漏れた。

 設立当初は学者間の選挙で会員を選ぶ方式だったが、83年の法改正に伴い研究分野ごとに候補者を推薦し、それを首相が任命する方式に改められた。

 このため独立性の担保については国会でも議論になり、当時の中曽根首相や政府担当者が再三にわたり「形だけの推薦制」を強調、学会からの推薦者を拒否せずそのまま任命することを明確に答弁していた。タカ派的な言動で知られた中曽根氏も、憲法の重みをきちんと認識したうえで政権運営をしていたことがこの件だけでも窺い知れる。

■闘わぬ学術会議に失望

 ところが菅政権は任命拒否理由を「総合的・俯瞰的な判断」として説明することなく、同会議を行政改革対象にして強引に事態の収拾を図ろうとしている。これに対し、安倍政権時代の2016年に定年退職の会員の補充人事の選考過程で、同会議の案に官邸が難色を示して推薦見送りになったことを、当時会長だった大西隆氏が明らかにするなど、学術界も闘う姿勢は見せている。しかし、複数の国立大学で教鞭を執ったことがある名誉教授はこう指摘する。

「独立性が担保されているはずの学術会議の人事を政権がキャンセルしたということを、大西さんにはあの当時にきちんと世に問うて欲しかった。もっと残念なのは新会長の梶田さんが、首相と会ったのに何も言わずに帰ってきてしまったことです」

 6人は、安保法制や憲法解釈などの問題で政府の主張に異論を唱えた人ばかりだ。これを理由も示さず任命拒否する菅政権の姿勢を見過ごせば、森友・加計学園問題や「桜を見る会」などの疑惑を曖昧なまま放置してきた政権の体質を助長しかねない。名誉教授はこう続ける。

「名簿を提出した山極前会長、任命拒否を受けて首相と会談した梶田会長のいずれもが、学術会議の主張を政府に示す迫力を持って欲しかった。安倍政権では特定秘密保護法など国民を束縛するような法律が作られた。それが学問、学術にまで及ぶということは、日本の中のイノベーションをも消してしまう行為であることを科学者らしい言葉で説得すべきだったと思います」

(編集部・大平誠)

※AERA 2020年11月2日号より抜粋

このニュースに関するつぶやき

  • へー、学術会議以外の全国民は、学問の自由を侵害されてんだぁ。へー
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