座って飲むだけ「チェアリング」缶ビールと椅子ひとつで天国に

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2020年10月26日 16:32  日刊SPA!

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写真チェアリング提唱者のスズキナオ氏(右)とパリッコ氏。ユニット「酒の穴」としても活動している。共著に『椅子さえあればどこでも酒場 チェアリング入門』(Pヴァイン)がある
チェアリング提唱者のスズキナオ氏(右)とパリッコ氏。ユニット「酒の穴」としても活動している。共著に『椅子さえあればどこでも酒場 チェアリング入門』(Pヴァイン)がある
 椅子取りゲームの人生に疲れてしまったのか。自分の椅子を持ち歩き、気に入った場所に座るチェアリングが密かにブームだ。会社や家庭に居場所がなくても、自分だけの安らげる居場所は案外近くに見つかるかもしれない。

◆缶ビールと椅子ひとつでオンリーユーの「天国酒場」

 折りたたみ椅子を片手に憩いの場所を探し求め、気に入ったロケーションが見つかったら、腰を下ろして自由気ままに酒を楽しむ……。そんな新しい野外飲みスタイル「チェアリング」がコロナ禍で注目を集めている。生みの親の一人、居酒屋ライターのスズキナオ氏は「チェアリングは最も密から遠い」とそのメリットを話す。

「人混みを避けながら、公園、河川敷、街中のどこにでも椅子を置いて飲める。特に水辺では、複数人で飲んでも、海や川のほうに自然と顔が向くので飛沫をお互いに飛ばしてしまう危険は少ない。普段は気にしない水面や梢の揺らぎを眺めながら、お酒を飲むのはいいものですよ」

◆今の季節は金木犀の香りも心地よい

 チェアリングの基本は、機動性を高めるという点で「軽装備」だという。そのため、酒のつまみも現地調達が望ましいようだ。スズキ氏が続ける。

「おつまみは手が汚れない海苔巻きがおすすめ。スナック菓子は風に飛ばされないように注意が必要です。最近、私はお弁当を作っていますが、ミートボールとハッピーターンを一緒に入れたりするくらい雑なもの(笑)。あと100円ショップで売っている食器収納用の折りたたみ式ラックがあると便利です。お酒やつまみを地面に置くのとは気分がだいぶ違いますから」

 そして、最も重要なのは「他人の邪魔にならないこと。だからあまり大人数ではないほうがいい」と、チェアリングはまさに新しい生活様式にマッチした飲み方だろう。

 コロナ禍では飲食店のテラス席も人気となっているが、自由が丘のテラス席があるお店を巡ってブログにまとめていたIT会社勤務の山岸杏子氏は、’18年の夏頃、「椅子があればどこでもテラス席になる」と気づいたという。

「あとからチェアリングという言葉を知りました。『外でお酒のもう』より『チェアリングしよ』って言ったほうが誘いやすいし、いい言葉だな、と思っています。今の季節は金木犀の香りも心地よい。布団を干しながらチェアリングしたこともあります(笑)」(山岸氏)



◆外で飲むだけではない。奥深いチェアリングの世界

「チェアリングの始まりは外飲みですが、必ずしもお酒が必要ではありません」と語るのは、チェアリング提唱者であるスズキ氏とパリッコ氏の友人であり、「日本チェアリング協会(JCA)」会長の伊藤雄一氏だ。

 伊藤氏のチェアリング初体験は湾岸デートだったと振り返る。

「女性から『リュクス(豪華・優雅)な癒やしが欲しい』と誘われました。ただ都内で癒やしを求めるのは、かなりお金がかかると悩んでいるときにチェアリングを知り、椅子を持ってお台場に。砂浜に椅子を組み立てて、腰を下ろした瞬間気持ちよすぎて、彼女との会話はなくなりましたね(笑)」

 残念ながら、このデートのお相手と結ばれることはなかったというが、このときの反動からか、伊藤氏は現在、チェアリングの普及に情熱を傾ける。

「公共空間に椅子を置いて、座る。ただこれだけの行為なのに、カフェや映画館、会社の椅子に座るのとはまったく違うんです。自分で座る場所、どう時間を過ごすかを選ぶから自由を感じられる」

 日本チェアリング協会は「椅子ひとつで世界はあなたのリビングルーム」を標榜している。だが、伊藤氏は「チェアリングを突き詰めると、椅子すらも必要ないかもしれない」と語る。

「チェアリングの目的は社会のなかで、自分なりにくつろぐこと。椅子はその手段でしかない。剣の道に似ています。道を究めれば、剣がいらないのと同じ」

◆チェアリングで選挙運動を展開する人も!?

 町おこしや観光にチェアリングを取り入れる動きが広がる一方で、’19年、東京都の杉並区議選に立候補した池田潮氏は、なんとチェアリングで選挙運動を展開した師範級だ。選挙戦は惜しくも敗れたものの、現在仕事の関係で軽井沢に滞在中の池田氏を訪ねると、「何億円もする別荘のテラスと同じ景色が椅子ひとつで手に入る。まさに“風景のハッキング”」と避暑地でもチェアリングを行っていた。

「駅頭での演説や街宣車とか、選挙活動の様子を見ていると、うるさいなぁと顔をしかめる人が大半です。そういう人は投票に行かないから、区議選の投票率は4割以下で、騒がしい選挙運動も変わらないまま。もっと多くの人に投票所に足を運んでもらうために、『うるさくない選挙運動』をしようと思ったんです。そこでチェアリング用の椅子を高円寺の駅前に並べて、有権者と直接話し合う選挙運動を展開しました。今度こそ必ず勝利してみせますよ」

 次のチェアリングは、政治家の“椅子”となるのだろうか。

<取材・文/村田孔明(本誌)>

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  • 飲んで酔っ払って椅子の上で寝て寒さで死亡、天国へ...と言う記事かと思ってドキッとした。
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