「もう学校に行きたくない」コロナを機に不登校になった少女が抱える “リアルな闇”

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2020年10月27日 04:00  週刊女性PRIME

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写真不登校となってしまった紗季さんと母の友梨さん
不登校となってしまった紗季さんと母の友梨さん

「もう学校へ行きたくない」

 東京都立川市の小学5年生、紗季さん(11歳、仮名)がそう言い出したのは、1学期の終業式だった。新型コロナ感染拡大防止のため、政府は一斉休校を要請。全国の学校では5月8日まで休校となり、東京都はは5月31日まで延期となった。

挙手回数のノルマ設定

 紗季さんの学校は6月に入ると分散登校が始まり、クラスの雰囲気はこれまでのものとは打って変わり、決して居心地のいいものではなかった。そんな中、担任教諭からの不適切な指導を理由に紗季さんはストレスを抱え、登校を渋り出した。

 2学期が始まると、精神的な影響があるのか不眠や過食の症状が現れ、ついに不登校となってしまった。

 紗季さんは5年生になるまで、ほかの児童や教師との関係を理由に学校へ行きたくないと思ったことはなかったといい、1学期も無遅刻、無欠席。しかし、終業式から帰ってくると、母親の友梨さん(33歳、仮名)に、はじめて「学校へ行きたくない」と口にしたという。

 一体、何があったのか。心配になった友梨さんは、紗季さんやほかの児童や保護者から学校での娘の様子を知るために話を聞くと、紗季さんがストレスを抱いた原因となった、担任教諭の「不適切な指導」の内容が明らかになる。

 友梨さんが作成した「事実報告書」によると、紗季さんのクラスだけ授業中の挙手回数のノルマ設定があったという。分散登校明けとなった6月15日の週にはノルマはなかったが、翌週からノルマは設定され、しかも、各授業で1回、次週からは2回、さらに次次週からは4回に増えたという。ノルマに達しない児童がいた場合は授業の最後に立たされ、授業内容の聞き取りがなされるという。少なくとも、紗季さんにとっては相当なストレスになったようだ。

 紗季さん本人に話を聞いた。

「間違えても挙手をすればいい。それで挙手が一回となりますが、授業に集中できないんです。そもそも、みんなの前で間違えるのは恥ずかしい。だから、できるだけ当たらないように、手をあげた人が多いときに、私もあげました。でも挙手のカウントが足りず、最後に立たされたことがありました」

 母の友梨さんは「今年は新型コロナ対策があり、休校処置があったので、本来、12か月かけて行う授業を10か月でしなければならないので、学校側にも負担があるのでしょう。でも、それは子どもも同じく負担があるんです。教師と子どもの信頼関係がないのにノルマを科しても、いい方向にいくとは思えません」と話す。

抜け毛、不眠、過食

 体育の授業にも疑念を抱いた。三密を避けるために、生徒同士がなるべく接触しないものに制限されたため、“走る”ことが授業のメインになっていた。

「もし途中で歩いたり、話をしたりしていると、(連帯責任で)みんなでもう一周、走ることになるよと、先生が言っていました。暑い日でも、先生は麦わら帽子をかぶって見ているだけ。ほかのクラスの先生は一緒に動いていたのに」(紗季さん)

 ついに体育の授業で、けが人が出てしまう。

「いろんな走り方の授業のとき、(片足で走るようにする)ケンケンをずっとしていたんですが、倒れてけがをした子がいました。翌日、その子はギブスをつけてきました。体育館でも(床の雑巾をかけるように、手は床につけて、足を伸ばす)ハイハイという動きをしていたんですが、体育館の壁にぶつかり、首にけがをした子もいたんです」(紗季さん)

 そんな友だちの姿を見たことも影響したのか、紗季さんは1学期からストレスが身体症状に現れてしまう。お風呂に入った後に、髪の毛が大量に抜け、不眠にもなり、過食にもなってしまった。

 心身ともに不調をきたしている9月8日の6限目(14時25分〜15時10分)。再び体育の授業でのこと。この日は100メートル走の計測することになっていた。1本目は歩いて距離を実感し、2本目は少し早めに走り、3本目が本番だった。しかし、測量ミスで130メートルあったという。この日の最高気温は34度(気象庁)。6限目は最も暑い時間帯であり、校庭での実際の温度は高かったと思われる。

 友梨さんはこの日、副校長との面談のため学校へ行っていた。そのとき偶然、紗季さんの体育の授業を目撃したという。

「校庭を見ると娘のクラスが体育をしており、100メートル走をしていました。走りきれない子もいましたし、足がふらつく子もいました。娘もいつもも違う様子でした。授業の終わりには水分補給をしないまま教室へ戻って行きました」(友梨さん)

 連日30度を超える日々が続き、一日中マスク姿。紗季さんの身体は限界を迎えていた。1学期からのストレスが祟り、帰り道に具合が悪くなり、帰宅後に倒れてしまう。そしてついに、紗季さんは翌日9日から現在に至るまで、完全に不登校となってしまった。

いじめという“二次被害”

 このような出来事から、友梨さんは娘の異変やストレスの原因などをまとめ、「事実報告書」を学校に提出。さらに友梨さんはある市議会議員にも現状を伝えた。

 市議会では紗季さんの学校について問題があるとし、市教委を問いただした。すると指導課長は、体育の授業での配慮について、「校庭でマスクを外し、十分な呼吸量で授業をすることになっています。準備運動後、運動と運動の間、振り返りの間、一回だけでなく、複数回の水分補給をするように教員が声をかけるようにしています」と述べたという。

 また、不適切な指導がなされた場合の対応については「まずは事実かどうかを確認する必要がある。学校を訪問し、授業を観察し、聞き取りをします。その結果、不適切な指導を確認できた場合、指導と助言をします。その後の変化についても、校長から報告をさせて、必要な場合は、再度、指導をします」(指導課長)とのことだった。

 筆者は直接、市議会で問題提議をした市議に話を聞いてみた。

「事前に質問内容は伝えており、指導課長は一般的ではありましたが、ギリギリの答弁をしてくれたと思っています。議員としては、直接、教育現場には介入できませんが、お子さんが心配です。早く課題を解決し、学校に復帰できるようにしたい」

 しかし、紗季さんが早く学校へ行けるよう市議会も市教委も最善を尽くす中、“二次被害”は起きてしまった。

 10月中旬、紗季さんの家の郵便ポストの中に、「コンビニにいたでしょ?さぼりなの?」「どうしてズル休みするの?」「勉強できないから来ないの?」などの、メモが投函されていた。誰が書いたかは不明だが、友梨さんは「いじめではないか」と判断し、学校に報告。市教委も把握している。

 市教委に取材をすると、「『事実報告書』は受け取っています」としながらも、解釈の違いがあるのでは、という。例えば、

「挙手の回数については、子どもたちとの話し合いの中でできた、と聞いています」とし、認識が食い違う部分もある。しかし、「親御さんとは必要に応じて話し合いを重ねていきます」と述べた。また学校も同様に「市教委と連携をとりながら話し合いを進めていきます」と答えた。

 両者の言い分が食い違っている部分があるが、まずは事実の把握が大切だ。両者での話し合いと並行しながら、何よりも子どもの学習面と心のケアが重要。

 全てをコロナのせいにはできないが、現代の子どもたちの心はさまざまな悩みを抱え、大人たちにSOSを出している。未来のある子どもを支えていくために、大人がすべきこととはーー。学校、地域、市議会、そして親のその後に注目したい。

渋井哲也(しぶい・てつや)◎ジャーナリスト。長野日報を経てフリー。東日本大震災以後、被災地で継続して取材を重ねている。『ルポ 平成ネット犯罪』(筑摩書房)ほか著書多数。

このニュースに関するつぶやき

  • ちがうやろ?内申点付けるときに授業で何回挙手した回数チェック 積極的参加したかどうかパソコンにポチポチ回数入力しとるんやろ?バカげとる 内申点制度を廃止しろ!
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  • 教師もいい加減かも知らないけど、他の子は普通なんでしょ?ストレス耐性の弱い親の育て方の問題じゃね??思春期の反抗やサボタージュなんて当たり前。甘やかし過ぎ。
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