“聖地での3ショット”に異様な熱気と絶叫…大阪都構想めざす維新の会の“最終手段” 背景に“大きな力”も

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2020年10月27日 07:00  AERA dot.

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写真「維新の聖地」とされるなんば高島屋前で都構想への支持を訴える(左から)公明党の山口那津男代表、松井一郎・大阪市長、吉村洋文・大阪府知事/10月18日、大阪市中央区 (c)朝日新聞社
「維新の聖地」とされるなんば高島屋前で都構想への支持を訴える(左から)公明党の山口那津男代表、松井一郎・大阪市長、吉村洋文・大阪府知事/10月18日、大阪市中央区 (c)朝日新聞社
 大阪都構想をめぐり、大きく揺れる大阪府。住民投票に関しては公明が賛成、自民が反対のねじれの構図になるなど、国政に影響を及ぼしながらも熱戦を展開している。念願の都構想の実現に向け、日本維新の会は“最終手段”にも打って出た。AERA 2020年11月2日号では、都構想をめぐる各党の裏事情に迫った。

【写真】松井市長のバックにいると言われるのが、この大物政治家

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 一度決めてしまったら、二度と元に戻ることはできない究極の片道切符をめぐって、大阪が揺れている。

 11月1日、大阪市を廃止して四つの特別区に分割するという「大阪市廃止・特別区設置住民投票」が行われる。日本維新の会にとって次期衆院選挙に向け、党勢拡大の命運がかかる絶対に負けられない戦だ。そこで、吉村洋文・大阪府知事と松井一郎・大阪市長が最終手段に打って出た。

 その日、演説会場となったなんば高島屋前は、いつもとは違う異様な熱気に包まれていた。

「なっちゃーん! なっちゃーん!」

 10月18日。人気タレントさながらの絶叫で出迎えられたのは、公明党の山口那津男代表。二重、三重の列を作り声援を送る中高年の女性たちは公明党の支持母体「創価学会婦人部」の面々だ。演説で山口氏はこう声を張り上げた。

「11月1日の住民投票は賛成の票を入れて欲しい。元大阪府民、現在は東京都葛飾区に住む山口那津男がお願いする」

■維新の聖地で並ぶ3人

 大阪で「なんば高島屋前」と言えば、選挙遊説の定番であり、日本維新の会が選挙戦最終日の演説会場に選ぶ、いわば「維新の聖地」だ。そこに乗り付けられた公明党の街宣車。そして、山口代表の横に日本維新の会のツートップが並ぶ。この維新・公明の3人の「絵」こそ「松井・吉村」が画策した最終兵器だった。日本維新の会の関係者はこう証言する。

「コロナ禍への対応で連日、在阪メディアに露出し続けた吉村知事の人気も手伝って、賛成が10ポイント以上の差をつけリードしていました。しかし、投票日が近づいてくるにつれ反対が急増。最新の世論調査では僅差とまで言われています。この状況を打開するには、組織票しかない。自民党を敵に回している以上、期待できるのは公明党だけなんです」

 そもそも、公明党は自民党と共に住民投票に「NO」の立場だった。山口代表も演説の中で、これまで「反対」していた経緯を釈明。その上で2011年、二重行政の無駄を廃止するために力を貸して欲しいと、当時の橋下徹・大阪府知事から相談があった逸話を披露。後に12年、国会で可決される「大都市地域における特別区の設置に関する法律案」の必要性を、当時、関心が薄かった与党民主党に説いて回ったのは公明党だったと、これまでの反対姿勢を打ち消すように熱弁した。

 しかし、公明党大阪府本部の関係者は真相をこう打ち明ける。

「国政と大阪では政治のパラダイムが違う。大阪は今や維新の牙城で、ここに逆らうことはできない。公明党は大阪だけでも、衆参、府市合わせて219人の現職議員を抱えている。これまでも一部の選挙区では維新とすみ分けており、本格的に維新を敵に回すことは現状ではできない」

 別の関係者によると、昨年の大阪市長・大阪府知事ダブル選挙で大勝した維新から「衆院選挙で刺客を送る」と水面下で賛成を迫られた公明党が、やむを得ず、態度を一変させたという経緯があるという。

 国政では自民党と連立を組みながら、大阪では自民党を見限り維新と連携する。つまり「吉村・松井・山口」のスリーショットは、公明党が維新との協力に舵を切った証しでもあるのだ。

 公明党員、創価学会員の間でも、住民投票への賛否は分かれていた。だからこそ、これまで反対の立場だった山口代表が、直々に賛成のお墨付きを与えたことは効果があった。山口代表の来阪以降、繁華街を中心に、公明党の選挙の常套手段である口コミ作戦、通称「F(フレンド)作戦」が展開されている。

■水面下で菅首相の了承

 しかし、山口代表の来阪は、もっと大きな力が働かなければ実現しなかったと公明党幹部は断言する。そもそもこの大阪行きのスケジュールも、直前まで番記者にさえ知らされることはなかった。

「当初、代表の大阪行きには慎重でした。大阪という特殊事情があるとは言え、国政で連立を組む自民党に喧嘩を売るのです。当然、何らかの形で了解をとる必要があるでしょう。その相手は菅義偉首相しかいない。だって、自民党幹部はいまだに誰も大阪入りしておらず、その予定もないのですから」(前出の公明府本部関係者)

 山口代表が表立って菅首相と面会したのは、9月27日の公明党の党大会とその翌日だ。これに先立ち、斉藤鉄夫副代表と自民党の二階俊博幹事長も会談している。その場で住民投票をめぐる対応が話し合われたかは不明だが、公明党にしてみれば、判断を間違えば、連立関係にも影響する。水面下の調整で、菅首相が山口代表の大阪入りを了承したことは想像に難くない。

 菅首相と松井市長の距離が近いことは、永田町では有名だ。特に菅首相が官房長官時代に追い詰められた森友学園をめぐる問題では、騒動の発端である大阪側に松井市長(当時は大阪府知事)がいたことが、官邸には不可欠だったと菅首相に近い国会議員が打ち明ける。

「横浜を地盤とする菅さんと、松井さんをつなぐのはカジノ誘致です。また、2025年の万博を大阪に誘致すべく国政側で動いたのが、官房長官だった菅さんでした。ある意味、公明党より日本維新の会の方が自民党に近いですから。菅政権誕生は維新にとって、党勢を全国に拡大する上でも好機と捉えているのは間違いありません」

 菅首相は内閣発足にあたり、8人の大阪選出の議員を副大臣と政務官に抜擢している。まるで、住民投票では維新に冷や水を浴びせられた大阪自民党をねぎらう人事のようにも見える。(編集部・中原一歩)

※AERA 2020年11月2日号より抜粋

後編【大阪都構想で大阪市は「あんこのない饅頭」に? それでも実現めざす維新の狙いは…「大看板」の復帰】に続く

このニュースに関するつぶやき

  • 公明は維新と選挙協力を条件に都構想に賛成した卑怯者。支持母体創価学会は公明にポーズを取ってるだけ、学会から都構想賛成の通達は来ていない。反対だ
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