コロナ禍就活に理系「特需」 東大や京大などの優秀な学生を企業が“一本釣り”できるワケ

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2020年10月27日 07:00  AERA dot.

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写真2019年12月にPOLが催したイベント。企業を招き、AIに特化したハッカソンなどを対面で開催。学生のレベルが高いと好評だ(写真:POL)
2019年12月にPOLが催したイベント。企業を招き、AIに特化したハッカソンなどを対面で開催。学生のレベルが高いと好評だ(写真:POL)
 前例のない現状に、経済的な「いい話」はあまり聞こえてこない。だが、先が見えない時代だからこそ、先を見据える学生が求められる。企業が理系学生をターゲットにするには理由があった。「採用したい大学」を特集したAERA 2020年10月26日号から。

【企業が実際に検索した「欲しい理系人材」のキーワードはこちら】

*  *  *
 新型治療薬として期待される「アビガン」の製造からテレワークの支援まで行う富士フイルムホールディングス。今年は学生からのエントリーが増えたという。

 採用は当初からドキュメント事業におけるシステムエンジニア(SE)を中心に、54人の大幅増員をする予定だった。コロナ流行後も、変更なしの強気の姿勢だ。

 同社人事担当者が言う。

「オフィスのデジタル化を通じてお客様の課題解決を支援するビジネスに力を入れています。コロナ禍のテレワーク普及で、ますます需要は高まっています。今後の売り上げ拡大と体制強化のため、採用人数を増やす計画は維持しました」

 業務効率化のためのデジタル化をサポートするのが同社の売り。SEは欠かせない。

「当社は事業領域が広いため、理系では多様な専攻の人材を求めているが、特に情報系の採用を強化したい」(担当者)

 アビガンは安倍晋三前首相も「有効性が確認されれば、承認をめざしたい」と5月に会見で述べていた治療薬だ。注目を集めている。

「アビガンだけでなく、米企業からのコロナワクチンの製造受託、PCR検査の試薬の提供などの感染拡大防止のための当社の取り組みが、メディアで報じられ、社会課題の解決に技術力で挑戦し続ける企業姿勢を就活生にも感じてもらえているのではないでしょうか。結果的に、昨年より多くの学生さんからの応募がありました」(同)

■学生検索で「一本釣り」

 前例のないコロナ禍に、企業が視線を注ぐのは、優秀な理系学生だ。企業は対面ではなくオンラインでの採用活動が続くが、そんな時期だからこそ学生と企業をつなぐウェブサービスも注目を集めている。

 2016年に現役東京大生が創業したPOL社がローンチした理系特化型スカウトサービス「LabBase(ラボベース)」も、その一つ。3万人を超える理系学生がプロフィルやポートフォリオを登録し、企業側はそれら登録された情報からほしい学生を探し出す、いわば理系学生マッチングサービスだ。同サービス責任者の岡井敏さんは言う。

「大勢の学生に声をかけるマス型採用と異なり、学生のスキルを見ながら一本釣りできます」

 では、企業はどんなスキルを持った人材を探しているのか。その指標となるのが、企業が学生探しで検索するキーワードだ。その上位の言葉を一覧にまとめた。最も多かったのがAIの分野では欠かせないスキルの「機械学習」だ。ほかにも「ハッカソン」や「自然言語処理」「Kaggle」など、企業がターゲットにしたい学生の特徴がわかる。

 登録者のうち3割以上を東京大や京都大などの旧帝大の学生が占め、東京工業大や奈良先端科学技術大学院大のように理工系に特化した大学層も厚い。創立4年目のサービスながら、メルカリやソフトバンク、パナソニックなど大手企業も活用。先の富士フイルムも採用手法の一つとして取り入れている。岡井さんが言う。

「理系といえば大学研究室の推薦枠などもありますが、今必要とされている高度IT人材のような新しい分野では旧態依然のコネは利かなくなっています」

■数学専攻のニーズ増

 利用する学生にとっても、想像しなかった企業と出合うきっかけになっている。

 同志社大学理工学研究科2年生で応用数学を研究する中澤朋亮さんは来春、AIエンジニアとして大分県の地域科学研究所に入社を予定している。企業との出合いは、ラボベースでのスカウトだった。

「企業が星の数ほどあるなかで、見つけてもらう場所として使っていました。全部で13社からメッセージが届き、5社から話を聞きました。市場分析などをするクオンツに興味はないかというメッセージを三菱UFJ銀行さんからもらったときは、自分では選択肢にすることはない分野だったので面白かったです」(中澤さん)

 かつては理系人材のなかで数学専攻は就職できない分野と言われることもあった。だが、その風向きは変わった。コロナ禍でニーズが広がっている。

「AIやデータ分析の根本は数学です。就活をしていて、それを見抜いている企業は数学科であることを取り出して選考していたように感じています」(同)

 前出の岡井さんによれば、コロナ禍に見られる傾向として、オンライン採用が強まり「地方学生のメリットがより高まった」と話す。ラボベースは、前年と比べて9月初旬までに2倍近いペースで登録され、スカウトの承諾率も上昇した。(ライター・井上有紀子、編集部・福井しほ)

※AERA 2020年10月26日号より抜粋

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