郵便が出せない! ADHDの夫のプレッシャー「郵送とは不注意との戦い」 【#凸凹夫婦のハッタツ日記】

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2020年10月27日 07:00  ウィズニュース

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写真ADHDの西出光さん=西出夫妻提供
ADHDの西出光さん=西出夫妻提供

抜けもれが激しいADHD(注意欠如・多動症)の夫。こだわりが強いASD(自閉スペクトラム症)の妻。西出光(ひかる)さん(25)・弥加(さやか)さん(32)夫妻は共に発達障害です。まるで「妻が先生、夫が生徒」のような関係で、凸凹を補っているという2人。郵便物を送る作業も、簡単にはいきません。夫・光さんの視点でつづります。

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郵送は「不注意との戦い」
奥さんとの共同生活では、様々なギャップを感じた。一つ一つの家事や掃除洗濯……。何もできない僕は、全て奥さんに教わっていた。その中でも僕が特に苦手だったのが、郵送だ。

「郵送なんてポストに入れるだけじゃないか」と考える人もいるかもしれない。しかし、ADHDの僕にとって、郵送とは不注意との戦いの連続なのだ。書類を不備なく用意し、住所を間違えず書き、切手を間違えず貼り、忘れずポストに投函(とうかん)する必要がある。不注意が激しい僕は、その全てが苦手だった。

書類や封筒に不備がなくても、バッグに封筒を入れたまま投函するのを忘れてしまうし、それ以前に持っていくことも忘れてしまう。たとえ投函できても、申請書類の記入内容を間違えて戻ってきたこともある。

また、家のポストを確認することさえ先延ばしにして忘れてしまう。そのため、「返送するだけ」のことも難しい。ポストに入っていた郵便物を忘れて放置し、確認した時には返送期限が過ぎていたことが何度もある。

戻って送って戻って送って
こうしたことから、郵送が必要な手続きにはかなり苦労していた。

例えば、水道料金の支払い方法の変更を郵送で行った際には、何度も記載漏れがあり戻ってきた。その度に送って、また返ってきて、最終的に変更まで何ヶ月もかかった。

他にも、休職した際に診断書を会社に提出したり、契約書に印鑑を押して出したり、必要書類を送る手続きをしてきたが、ミスなく完了できたことの方が少ない。

常に注意を払う必要があるため、実は大仕事である。しかし、周りにはそれがどうしても伝わらない。「注意すればそんなことは起こらない」と言うのだ。

奥さんは、そうした抜けは一切ないし、先延ばしにすることもない。「郵送」の重みが全く違うので、奥さんは「送っておいて」と気楽に頼んでいるつもりでも、僕はとてつもなく重大なプロジェクトを頼まれたかのようなプレッシャーを感じてしまう。郵送のことで頭がいっぱいになるにもかかわらず、あっさり忘れたりミスしたりする。どうしてミスをしてしまうのか、奥さんはもちろん自分でも理解ができなかった。

梱包にもハードル
送ることだけではなく、梱包(こんぽう)も苦手で、特に引っ越しの際に奥さんにあきれられた。僕は皿を梱包もせず段ボール箱に入れていた。皿は丈夫で、トラックも水平だから割れることはないだろうという短絡的な考えである。

奥さんはその様子を見てとても驚いた様子だった。奥さんに教えてもらって梱包するも、梱包材の巻き方や適切な量が分からず、今度は梱包材を使いすぎてしまう。

仕分けもお構いなしで、しょうゆと本を同じ箱に入れることもあった。

梱包も奥さんに教えてもらった。一つ一つ見てもらい、大きさに合わせて入れるものや量をチェックしてもらった。丁寧に梱包すると、物が壊れるリスクもなく、箱も少なくて済む。

頭では分かっても、どうしてもできず、悩む日々が続いた。

ツールに頼る
どうすれば抜けなく郵送できるか、適した梱包をできるか、奥さんと考えた。僕はメモを取ることが苦手だ。また、メモを取ってもそのメモをなくしてしまう。毎日話し合った結果、LINEに残すという方法をとった。「引越しLINE」や「仕事LINE」など、奥さんとのLINEのグループをたくさん作り、郵便の送り方や写真を「ノート」に投稿する。LINEは毎日開くアプリなので、忘れることなくいつでも見返すことができるし、「アルバム」に残せば写真で振り返りやすい。この方法はかなり合っていた。

ツールに頼るほか、夫婦の「ホウレンソウ」を大切にしていた。「今日はこれを送ったよ」とか、送り状の写真を撮って追跡番号を共有したり、分からなければ奥さんに聞いたりする。奥さんが上司であるかのように報告をすることで、ミスなどは劇的に減らすことができた。

僕たち夫婦の会話はかなり事務的だ。奥さんとは適度な距離感をとることで、相手に頼りすぎることなく自身の成長にもつなげることができた。近くにいる人こそ、ホウレンソウは大切だと思う。

僕たちは今、離れて暮らしている。定期的に荷物を送り合っているので、郵送や梱包を必要とするシーンは多々ある。そんな時に、LINEを見返してやり方をまねる。これでミスや抜けはかなり減った。できないことでも、周りの助けや工夫でできるようになると分かったのは、とてもうれしかった。

発達障害の理解が広まることで生きやすくなるかもしれないが、自分でも生きやすくなるように工夫することも時には大切だと思う。

挑戦することで、何が苦手なのか、原因を見つけられるきっかけにもつながる。ADHDの僕はできないことがたくさんあるが、何ができないのかを自分でわかっている。これからも自分の特性と向き合い、工夫を続けていこうと思う。


<西出 光(にしで・ひかる)>
1995年生まれ。発達障害の一つ「注意欠如・多動症(ADHD)」の不注意優勢型と診断される。2019年に「自閉スペクトラム症(ASD)」のグラフィックデザイナー・弥加(さやか)と結婚。当初は家事が極端にできず、仕事も立て続けに辞めていたが、妻の協力の末、現在はホームヘルパーとして勤務。名古屋と東京で遠距離夫婦生活を続けている。当事者の視点から、結婚生活においての苦悩や工夫、成功について伝えていきたい。
Twitter:https://twitter.com/Thera_kun

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withnewsでは、西出光さん・弥加さん夫妻のエッセイ「凸凹夫婦のハッタツ日記〜先生と生徒になってみた〜」を不定期で連載します。先生と生徒のような夫婦関係について、夫と妻それぞれの視点で描きます。

(10:35 年齢を修正しました)

このニュースに関するつぶやき

  • 発達障害の私は、手紙と納付書を一緒に投函しちまったことがある。後で所轄の郵便局に取りに行きました。
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