「石の上にも4年」 BC茨城・小沼健太が紆余曲折を経て育成2位でロッテへ

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2020年10月27日 17:14  ベースボールキング

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育成選手としてロッテが指名した茨城アストロプラネッツの小沼健太投手
◆ ようやくつかんだNPBへの切符

 プロ野球のドラフト会議が26日に行われ、12球団が本指名74名、育成指名49名の計123名を指名した。

 今やプロへの重要な選手供給源のひとつとなっている独立リーグからは、本指名3名、育成指名5名の計8名が指名を受け、NPBへの挑戦という夢をつかんだ。そのほとんどの選手が、独立リーグでの2〜3年目で指名を受けるなか、独立リーグ在籍4年目にして、育成指名ながら、ようやく思いを遂げたピッチャーがいる。ルートインBCリーグ・茨城アストロプラネッツの小沼健太投手(22)だ。

 今シーズン、茨城は7勝49敗4分、勝率.125という壊滅的な成績に終わってしまい、小沼自身も主にクローザーとして25試合に登板したものの、勝ち星なしの3敗2セーブ、防御率も5.34という成績に終わった。昨年も彼は3勝14敗に終わったが、シーズンを通じてローテーションを守り、防御率も3.68と、今シーズン同様、勝率.176という最下位だったチームにあって孤軍奮闘していた。

 その前年まで所属していた、武蔵(現埼玉武蔵)ヒートベアーズ時代を含めてキャリアハイの成績をあげていた。それまでの先発から今シーズンはリリーフ。一見すると「降格」だ。前述のようなチーム成績では、クローザーと言っても名ばかり。その上、数少ないリードを保っての「抑え」登板でも、しばしば逃げ切りに失敗している。私が取材した8月の試合でも、リードの場面からサヨナラホームランを食らっていた。


◆ 先を行く僚友たち

 小沼は千葉県出身の22歳。中学時代の県選抜チームでは、榊原翼(オリックス)とともにプレーしている。地元の東総工高に進むも、甲子園の舞台を踏むことなく、卒業後は独立リーグに進んだ。小沼が武蔵をプレー先に選んだのに対して、同郷の伊藤翔は、四国アイランドリーグplusの徳島インディゴソックスに進み、1年で埼玉西武から3位指名を受けてプロの世界へと進んでいる。

 身近にいた同級生2人がプロの世界へと旅立っていくのを尻目に、小沼は独立リーグ4年目を迎えていた。プロへの近道と考えて進んだ独立リーグだったが、いつの間にか、大学に進んだ同級生と同じドラフトに臨むことになったのだ。
 
 正直なところ、小沼のドラフト指名は難しいと思っていた。BCリーグ各12球団のクローザーのなかには、小沼より良い数字を残している投手も数多くいる。私も、別のチームのクローザーに指名の可能性を感じていた。実際、その選手を追いかけてスカウトが球場に足を運んでいたが、その小沼と同じ4年目の投手が指名されることはなかった。

 その投手は大卒。プロのスカウトは、独立リーグの選手を目にするとき、成績より“伸びしろ”を見る。小沼には、彼にはない若さもあった。


◆ 見えてきた背中

 この夏、1年ぶりに会ったとき、彼の表情からは悲壮感さえうかがえた。しかし、先発からリリーフへの配置転換にも、「年齢が上がれば、リリーフとしての指名を狙う方が現実的になってきますから」と、前向きにとらえていた。独立リーグでプレーして以来、成績は決して芳しいものではなかったが、指導者たちは、彼のポテンシャルには目を見張っていた。

 独立リーグとは言え、高卒1年目から先発ローテションに入ったことからも、そのことはうかがえる。茨城球団が発足した昨年、埼玉武蔵から移籍したが、球団も彼をプロに進むべき「金の卵」として育てた。その甲斐あって、今シーズンにはストレートは150キロを計測。ロッテも、試合の中盤を乗り越えるためのパワーピッチャーという期待を込めて指名したのだろう。

 育成指名ではあるが、同郷の2投手も、榊原は育成指名、伊藤は独立リーグを経由してのプロ入り。雑草育ちから一軍の舞台に立つ切符を手にしている。「石の上にも4年」。プロへの扉をこじ開け、その先にあるふたりの背中がようやく見えてきた。

 次の目標は、支配下を勝ちとり地元千葉のマウンドに立つことだ。


文=阿佐智(あさ・さとし)

このニュースに関するつぶやき

  • 指名された瞬間のアストロゲフンゲフンヒロシ部長の絶叫が一番印象的でした(ドッカ〜ン!)。
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