峯田和伸「やっと何かが始まる」銀杏BOYZ新アルバムの“軸になった曲”とは【11週連続ロングインタビュー第8回】

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2020年10月28日 12:11  ウレぴあ総研

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ウレぴあ総研

写真Photo:小境勝巳
Photo:小境勝巳
銀杏BOYZの6年9ヶ月ぶりとなるフルアルバム『ねえみんな大好きだよ』が10月21日にリリースされることが決まった。本作は、オリジナルメンバー脱退後、峯田和伸1人になってから初めてのフルアルバムになるのだが、この6年9ヶ月を顧みれば、前作からここに至るまでの銀杏BOYZは休むことなくラジカルに動き続けていた。

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銀杏BOYZ結成から17年間の活動の中でも、かなり濃厚な時間を過ごしていたわけだが、これらの経験や刺激が、銀杏BOYZにとって最も重要なアルバム制作にどう反映されたのだろうか。

また、誰もが新型コロナウイルス感染拡大による制限や影響を強く強いられている今、峯田はどんなことを考え、銀杏BOYZの表現に反映させたのだろうか──。

ここでは、こういった今の峯田が考えていること、アルバム完成までの経緯と思い、収録楽曲についてを徹底インタビュー。アルバム収録曲数「11」にちなんで11週にわたってお届けする(毎週水曜日更新予定)。第8回の今回は、「アルバムの軸になった曲」と峯田が語ってきた『生きたい』について聞いた。

■言葉を交わさずに完成させたアルバム版『生きたい』

── 『いちごの唄 long long cake mix』の次に来るのが、アルバムの軸となる『生きたい』。

峯田 2005年の『人間』、2007年の『光』と続く、恥と傷の三部作の一つだけど、『生きたい』でやっと結実したような気がする。2016年にこの曲を出せたことで、気持ち的にも楽になったし、それまでの時代をやっと終えることができた感じだった。

前にも話したけど(第6回参照)、『生きたい』を出すまではメンバーが抜けていったことの喪失感とかキツさをずっと抱えていたんだ。でも、この喪失感を持ちながら改めて歌を歌っていく決意みたいなことが示せたし、自分の中でもこの曲で整理できたんだよね。

── ただ、アルバム版の『生きたい』は、シングル版よりも軽やかになった印象ですね。シングル版の『生きたい』は重くて、聴く側に対しても何かを突きつけられるような感じもありました。容易には向き合えないような。

峯田 力がある曲だからね。確かに、シングル版のままだと強すぎるから、ミックスとか色々考えて作り直すことにしたの。アルバムで他の曲と並べてみたとき、他の曲が薄く聴こえちゃったらイヤだなと思って。

シングルで出したときの『生きたい』はさ、キツさ、喪失感、悔しさとかが前面に押し出した音作りをしたけど、今回のアルバムでの『生きたい』は開けてる感じになってると思う。これはね、ピアノを弾いてくれたDr.kyOnさんの力が大きいんだ。

── Dr.kyOnさんとの間で「『生きたい』をもう少し開いた曲にしよう」みたいなやりとりがあったんですか?

峯田 具体的にkyOnさんと言葉は交わしてないの。2人でリハーサルスタジオに入って「まずはやってみましょうか」みたいな感じで、言葉とか議論をせずに音を合わせたんです。

その最初の練習でさ、音を出しながら「あ、kyOnさん、ここのフレーズをこう弾いてる」とか「ここを強くしてる」とかがこっちに伝わってきた。そのkyOnさんのピアノに合わせて、「じゃあ、俺はこうやってみよう」ってやっただけなんだけど、だんだん気持ち良くなってきてね。

バンドとか音楽をやっている人じゃないと伝わりにくいかもしれないけど、なんか楽器を持った者同士が、呼吸とか音だけで会話しているみたいな感じ? それがすごく気持ち良くて「あ、これが一番良いな!」みたいに思って、アルバム版ではああなった。

それとさ、『生きたい』って曲は確かに僕が作った曲ではあるけど、こうやって誰かと音を合わせて気持ち良くなると、勝手に自分の手元から曲が離れていくような感じもあって。

すごいよ、あの感覚。曲っていうものに命があるとして、作り手の意図とか思いとかに関係なく勝手に音楽というものが動いていって、踊り出していくような感覚が味わえたし、「これが一番正しいんだろうな」と思った。

だから、最初の練習でアレンジはすぐに決まっちゃった。そこでもkyOnさんと「今の良かったですね。2番は、静かなままでいきましょう!」とかも言ってないんだけどね。

■作り手の意図を飛び越えて音楽が勝手に動いていく瞬間

── 重要な内容で、しかも今回のアルバムの軸となる楽曲が『生きたい』とも聞いていたので、さぞアレンジには苦戦されたのではないかと思ったのですが、そうではなかったんですね。

峯田 曲が曲だし、「大変だったんじゃないですか」「色々苦労してここに至ったんだな」って思われるかもしれないけど、そういうわけでもないです。

これは本当にkyOnさんのおかげ。たったの2テイクで出来ちゃった『いちごの唄 long long cake mix』の話でも喋ったけど(第7回参照)、『生きたい』の中盤でバンドインが入ってくるところなんて、録音は1度だけで終わっちゃったからね。

── そうなんですか? バンドインしてからも結構時間が長かったような……。

峯田 うん。『生きたい』は全体が12分強で、バンドインしてからも6分くらいあるんだけど、あれは最初の1回目の音なんだよ。

逆に「じゃあ30分休んで、もう1回録り直しましょう」っつっても、あのグルーヴはもう出ないんだよね。これは『光』のときもそうだった。1回だけで終えたけど、だからこそいい音になっていると思う。

■『生きたい』を軸としたアルバムの発表で、やっと新しい何かが始まる

── アルバム冒頭の『DO YOU LIKE ME』『SKOOL PILL』といったハードコア2曲だけを聴くと、特に『生きたい』がどういう印象になるのか想像できなかったですが、通して聴いてみると違和感なく確かに11曲の中心にあることがわかります。

峯田 聴いてくれる人がそう思ってくれたら嬉しいけどね。

正直言えばさ、まだ元メンバーが抜けていった喪失感、取り返しのつかないことになった感じは消えていないよ、僕の中で。でも、この恥さらしの姿のままだったとしても、前進するしかないという思いで作った『生きたい』がアルバムの中で軸になったことは本当に良かったと思ってる。

そしてさ、あのとき確かに銀杏BOYZ、僕自身の中で終わってしまったことがあったけど、『生きたい』をシングルとアルバムで出せたことで、やっと新しい何かが始まりそうな感じもしてね。

単曲としての『生きたい』もそうだけど、今回のアルバム『ねえみんな大好きだよ』は、僕の中では、「出すことで前に進める」という意味を持ったアルバムでもあるんだ。

もちろん、音楽は聴いてくれる人のものだから、自由に感じ取ってもらって、自分のものにしてもらうのが一番良いんだけど、ただその音楽を作った僕自身のことを正直に言えばね。『生きたい』を軸にして、良いアルバムが作れて本当に良かったなと思ってる。

※次回へつづく

●全11回インタビュー:各回更新!

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銀杏BOYZ ニュー・アルバム『ねえみんな大好きだよ』

10月21日(水)発売
品番:SKOOL-049 価格:3,300円+税

収録曲(全11曲)
01.DO YOU LIKE ME
02.SKOOL PILL
03.大人全滅
04.アーメン・ザーメン・メリーチェイン
05.骨
06.エンジェルベイビー
07.恋は永遠 feat.YUKI
08.いちごの唄 long long cake mix
09.生きたい
10.GOD SAVE THE わーるど
11.アレックス
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