育児アドバイザーに聞く、みんなの子育て相談室 第51回 男性の「育休」は意味があるのか?

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2020年10月28日 16:22  マイナビニュース

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「毎日のように怒ってしまう」「言うことを聞いてくれなくて困る」「夫(妻)と育児方針がかみ合わない」……などなど、育児に悩みは尽きません。特に、毎日忙しく過ごしている共働き夫婦なら尚更でしょう。

ここでは、育児中のマイナビニュース会員に"育児の悩み"についてアンケートを実施。寄せられたお悩みに対して"どのようにすべきか"を、NHKの育児番組でキャスターを務めた経験を持ち、現在は育児のセミナー講師や書籍執筆なども行っている天野ひかりさんに、アドバイスしてもらいます。

日本の男性の育休取得率は10年前と比べ増えていますが、世界の中では圧倒的に低く、育休をとりたいと願うパパが増えてはいても、なかなか難しいのが現実のようです。

先日、日本商工会議所が公表した調査によると、中小企業の7割が、男性の育休義務化に反対との結果が明らかになりました。人手不足が要因のようですが、その根底には、子育ては母親がするもの、という意識が根強いのだと思います。

では、男性の育休は家族にとってどのような影響があるのか、今回は「男性が育休をとっても、何をするのでしょうか」というご相談に、親子コミュニケーションアドバイザーがお答えします。
○ママの大変さを理解する

私の周りには、「父親が育休をとれたらみんな幸せになる」と活動をしている方々や団体・企業が多く、いかに男性が育休を取りやすい社会にすべきかを考えるシンポジウムやセミナーを実施しています。そうした考えをもって行動する人たちの中にいる私にとって、正直このご相談はびっくりしました。

でも考えてみたら、これからお父さんやお母さんになるという方にとっては、想像もつかないことかもしれませんね。なぜなら、育休を取った父親をみて育った男性は、まだほとんどいないからです。

女性も、産後の自分の体と心の変化を想像できませんし、赤ちゃんとどんな生活が待っているのかも未知数でしょう。母乳が出産して簡単に出るかや、赤ちゃんがスヤスヤ眠って、笑って、泣いて、ごくごくおっぱいを飲むかはわからないのです。

親子の数だけ生活があり、成長がありますので、正解は1つではないということを理解しておきましょう。とはいえ、「正解は○○」と決まった1つの回答を出すことが正しいと学校で習った私たちは、自分の子育てがこれでいいのかと途端に不安に陥ります。

特にお母さんは、1人で抱え込んで悩み、どうしたらいいのか、何に向かって頑張ればいいのか、良いお母さんであろうと頑張り過ぎてしまいます。

そんな時にパパが一緒に悩み、一緒に子どもとの生活を楽しみ、一緒に家事をすることで、ママは1人じゃないと、とても力をもらえるのです。

その結果、「産後クライシス」を避けることができます。産後クライシスとは、ラブラブだった夫婦の関係が、出産後、急激に悪化する状態のことです。その原因は、妻の愛情が夫から子どもへ移るからだと言われてきたのですが、実は、男性の育児や家事への関わりの薄さが原因であるという実態がわかってきました。

お母さんは命がけで出産し、体力も落ちている状態のままホルモンバランスの崩れや睡眠不足が重なり、初めてのことばかりの子育てに、産後うつになってしまうかもしれません。そうならないために、パパがママと子どもを守り、温かい生活を作っていこうとママの大変さを理解することは、とても大切なのです。
○家事は家族みんながすべきもの

ママの大変さを理解した上で、次にパパにできることは「家事」をするです。「家事・育児」とひとまとめにされることがありますが、子育ては立派な仕事です。外で働くのと同じくらい大変で、責任が伴います。そのため、まずは家事を家族みんなですべきと考え、行いましょう。

「イクメンは 名もなき家事が できてから」
これは、今年の大賞に選ばれた働くパパママ川柳ですが、頷いたママは多いでしょう。名もなき家事とは、「皿洗い」「ゴミ出し」「洗濯」などのように言葉に表されていない幾多の細かい家事のことです。

例えば、「ゴミ出し」といっても、玄関から集積場に持っていくだけではなく、用途に合わせたゴミ箱やゴミ袋を用意し、指定の曜日に家中のゴミ箱から集めて分別してまとめ、排水溝の中のゴミを取り除き、ゴミ箱を洗い、新しいゴミ袋をセットする(まだまだあって、書いてて嫌になりますね)……などのような作業までです。

初めからここまで気が付くのは難しいので、せめて名前のある家事くらいは、家族の一員として当たり前にできるようにしましょう。イクメンになるのはそのあとですね。

育休が明け働きだすと、育休中と同じようにパパが家事をすることは実際問題としてできないかもしれませんが、この期間に家事をするかしないかは、夫婦2人でこの先の大変さを乗りこえるための理解度に大きな違いを与えます。また、やるべきことを共有しているので、コミュニケーションも増え、より絆が深まるでしょう。
○育児は育自と考え助けあう

子育てについてはどうでしょうか。「ウンチのオムツは無理」と替えたことのないパパもいますが、もったいないと思います。子どもと遊ぶこともとても大切なことですが、「食べて」「排泄して」「寝て」など生活を一緒にすることで、人として成長することができると思います。

思い通りにならないことへの対処法や、想定外への解決法、言葉が通じない子どもとのコミュニケーションは、そのまま仕事で活かせる力です。また、子どもの成長を見ることは、自分の原点を知ることにもなります。感謝の気持ちと同時に、今の自分がどのようにしてできたのかを改めて考えさせられことでしょう。

今回は、パパが育休をとって何ができるのかについて考えましたが、その期間を意義のあるものにできるかは、ママの考え方も重要です。「パパになんか任せられない」と頑なな女性もいますが、子どもにとっては、パパやママ、おじいちゃんおばあちゃんなど、様々な人と触れ合って育っていくことが1番大切です。

お互いに助け合って生活するのが当たり前の中で、すくすく育って欲しいと思います。

天野ひかり あまのひかり ・親子コミュニケーションアドバイザー ・NPO法人親子コミュニケーションラボ代表理事 上智大卒。テレビ局アナウンサーを経てフリーに。NHK「すくすく子育て」キャスターとしての経験を生かし、全国の親子に寄り添いながら、講演会や講座、シンポジウム、企業セミナー講師など。 自身が立ち上げたNPO法人でも、子どもの自己肯定感を育てる親子のコミュニケーションを学ぶ教室「ことばでおやこみゅ教室」を主宰。 ■著書 ・Amazon子育てランキング1位のロングセラー 「子どもが聴いてくれて話してくれる会話のコツ」サンクチュアリ出版 ・最新刊 「賢い子を育てる夫婦の会話」あさ出版 ほか。 この著者の記事一覧はこちら(天野ひかり)

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