死後に「隠れ不動産」発覚でトラブルも 生前に夫婦で確認したいこと

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2020年10月29日 11:30  AERA dot.

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写真週刊朝日2020年11月6日号より
週刊朝日2020年11月6日号より
 夫婦はどちらかが先に死ぬことになる。遺された夫や妻、家族を困らせないために、今から夫婦で一緒にやっておくべき手続きをまとめた。夫婦が共に生きていないとできないことはこんなにあるのだ。

【生前にやっておきたい対策チェックシートはこちら】

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 都内在住の女性(73)は、今後の生活を思い、途方に暮れていた。

 1カ月前に、夫(75)がくも膜下出血で突然死した。夫は山登りが趣味で、体力には自信があった。まさか70代半ばで命を落とすことになるとは考えておらず、エンディングノートや遺言書は残していなかった。女性は急いで葬儀業者を手配したものの、夫の交友関係を把握しておらず、誰に訃報を送ればいいかすらわからなかった。

 生活費も心許ない。葬式代と墓地・墓石購入代で200万円ほど出費があるほか、今後は夫の基礎年金の支給もなくなる。

 さらに女性を悩ませたのが、相続の問題だ。夫妻には長男がいるが、夫の財産のほとんどは自宅(不動産)で、貯蓄を長男に切り分ければ今後の老後資金が足りなくなってしまう。どうすればいいのか……。女性は頭を抱えるばかりだ。

 女性のように、生前に準備をしておらず、配偶者の死後に問題を抱えてしまうケースは決して珍しくない。総務省統計局が行った平成27年国勢調査によると、配偶者と死別した“没イチ”の60歳以上男女は全国に約909万人。うち、60〜69歳で妻と死別した男性は約28万人、夫と死別した妻は約103万人だが、70〜79歳になると男女ともに2倍ほど増える。「いつか、そのうち」と思っていたら、結局間に合わなくなる例も少なくないのだ。

 では、「自分が死んだ後の家族の生活」について、具体的にどのような準備、手続きをしておけばいいのだろうか。

 まず夫婦で一緒に考えたいのが、配偶者の死後の生活費だ。

 とくに生活費を夫の年金に依存している場合は、要注意だ。ファイナンシャルプランナー兼社会保険労務士の井戸美枝さんは、「生前に夫が厚生年金を、妻が国民年金をもらっていた世帯の場合、夫の没後は世帯収入が半分ぐらいまで一気に下がる」と話す。

「夫の死後、夫の基礎年金はなくなり、厚生年金の75%を遺族厚生年金として妻が受け取れます(ただし諸条件あり)。支給額は、現役時の夫の年収によって変動しますが、概ね月額10万〜12万円がボリュームゾーン。これに自分(妻)の国民年金を足した収入で、無理なく生活していけるのかをまずは計算してみましょう」

 厳しそうな場合は、手ごろな家に住み替えて生活コストを下げるなど、早めに対策したい。自宅はあるものの貯蓄がないという場合は、自宅を担保に毎月一定額を銀行から借り、居住者の死後に自宅を売却して返済する「リバースモーゲージ」制度を検討してみてもいいだろう。

 夫が個人事業主などで、厚生年金保険に加入していなかった場合、状況はさらにシビアだ。夫が死亡した時点で基礎年金はなくなるため、妻は自身の国民年金しか収入がなくなる。

「一定の条件を満たせば、寡婦年金や死亡一時金を受け取ることもできます。しかし、寡婦年金が支給されるのは妻が60〜65歳の間だけで、支給額は夫の基礎年金の75%と少ないですし、死亡一時金は満額で32万円です。いずれも長期的に生活を支える収入にはなりません」(井戸さん)

 夫が自営の場合は、生前にできるだけ貯蓄をしておくか、少なくとも2千万円以上の死亡保険金をかけておいたほうが安心だという。高齢期までに資産形成ができなかった場合は、国民年金の繰り下げ受給を検討するのも手だ。

 一方で、収入だけでなく、支出の面にも目を光らせておきたい。特に要注意なのが、「隠れ不動産」だ。

 井戸さんによると、知らない間に、夫が実家から山の所有権を相続していたことが死後に発覚してトラブルになった例があるという。

「これ以外にも、家族に内緒で駐車場ぐらいの小さな土地を買っていたり、空き家になった実家の土地の権利者になっていて、死後にトラブルになるケースが増えています。いずれも管理費や固定資産税を毎年払わなければなりませんし、空き家を取り壊すのにも数百万円かかる。こうした不要な『隠れ不動産』を持っていないか、生前に夫婦はともに確認しましょう」(同)

(ライター・澤田憲)

※週刊朝日  2020年11月6日号より抜粋

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