「私作る人、僕食べる人」広告・CMの性別役割の押し付け、なぜ炎上40年も繰り返す?

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2020年10月30日 07:05  AERA dot.

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写真イラスト:石山好宏
イラスト:石山好宏
 性別役割を押し付けたり、女性を性的対象にした広告やCMの炎上が40年以上前から繰り返されている。背景に何があるのか。AERA 2020年11月2日号が迫った。

【アンケート結果】ジェンダーについてこんなこと思ってます

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 テレビでサンマの初漁のニュースを見たとき、違和感を覚えたというのは静岡県に住む40代の女性だ。男性コメンテーターが「自分もスーパーの店頭に行き、1尾いくらか見てきた。非常に高い、庶民には厳しい」と話した上で、「奥様は大変です」と締めくくったという。

「生鮮食品を購入するのは既婚女性だけだと決めつけていませんか。独身の男女、離死別した人は、生鮮食品を買わないとでも思っているのでしょうか」

 スーパーの魚の値段を気にしながら家計のやりくりをするのは「奥様」だというステレオタイプが、コメンテーターの頭の中にあったのだろう。これを女性は、ジェンダーロール(社会から期待され、求められる性別役割)の押し付けだと感じた。

 思い出されるのが「私作る人、僕食べる人」のCMだ。思い出すと言っても30代の筆者自身は、リアルタイムで見た記憶はない。なぜなら今から45年前のCMだから。ラーメンの丼を前に、若い女性と女の子が自分たちを指さして「私作る人」と言い、それを受けて若い男性が「僕食べる人」と言って、3人でラーメンを食べる。このハウス食品のインスタントラーメンのCMは、「国際婦人年をきっかけとして行動を起こす女たちの会」の抗議行動により2カ月ほどで放送中止に。1975年のことだ。

■固定観念の押し付け

 それから40年以上、広告やメディアの中でジェンダーロールの固定・強化は繰り返されてきた。おむつブランド「ムーニー」のCMが「ワンオペ育児を美化している」と批判を浴びたのは3年前のことだ。

養殖うなぎをスクール水着姿の少女に擬人化した自治体のPR動画、「萌え絵」の起用など、女性を性的対象として描くことによる炎上も数え切れない。なぜ炎上を繰り返すのか。東北学院大の小宮友根准教授(ジェンダー論)が説明する。

「ステレオタイプな女性像を押し付けたり、女性の価値を特定の身体部位に還元したりすることは、現実の女性がセクハラなどで経験していることでもあります。女性への差別的な価値観が現実のあちこちにあることが問題なのであって、メディア・広告の表現する女性像もその一部として批判されている。そうした問題の繋がりが見えない人は、何が批判されているかわからず、いったん引っ込めても、同じことを繰り返すことになります」

 ジャーナリストの治部れんげさんは、2019年12月に刊行の共著『足をどかしてくれませんか。──メディアは女たちの声を届けているか』の中で、広告・CMにおける「ジェンダー炎上」のケースを取り上げて説明。その一例が「統計的差別」だ。

 同書で紹介されたのは、19年3月にトヨタ自動車のツイッターが炎上したケース。アンケート機能を利用して「女性ドライバーの皆様へ質問です。やっぱり、クルマの運転って苦手ですか?」と尋ね、「とても苦手」「すこし苦手」「どちらでもない」「得意です!」の選択肢から回答させるものだった。

「やっぱりって何?」「苦手選択肢が二つとバカにしている」などの声が上がると、同社はツイートを削除し「女性の運転技量が男性よりも劣るかのような不適切な表現がございました」と謝罪した。

 もともと試乗会を通じて、運転に苦手意識のある女性が多いという認識があったようだが、

<どんな集団にも一定の傾向がある。(中略)しかし、個人を見る時は事情が違う。(中略)トヨタのTweetは、集団として「運転が苦手」と考える女性の傾向を、質問相手の女性個人にも当てはめてしまった点で、統計的差別にあたる>

 と治部さんは指摘する。

■女性観は社会の裏返し

 解決策はあるのだろうか。小宮准教授は、女性の描き方だけを考えていてもこの問題は解決しないと指摘。女性の魅力を特定の性的魅力に還元するような女性観の狭さは、政治や経済の場で、女性が自立して活躍できる社会になっていないことの裏返しでもあるからだという。

「どういう女性の描き方が良くないのかを話しても、それ以外の描き方が想像できなければ『じゃあ、どうしたらいいんだ』ということになる。女性の描き方に関して、どれだけの想像力を私たちが持てるのかは現実の女性のあり方に依存する。女性が活躍できる場面が増えることと女性の描き方が多様になることは、相互に影響しながら進んでいくのではないでしょうか」(小宮准教授)

(編集部・高橋有紀)

※AERA 2020年11月2日号より抜粋

このニュースに関するつぶやき

  • フェミニズムをモテないキモうざい男の下心の正当化に利用するのは止めて。「誠実な女性だから差別や偏見発言しても許してやれ」とか言う奴に限ってキモうざいオッサン。
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  • そうなのかなぁ?児童虐待のニュースなんかを見てても母親が子供を守れていないケースが多い。都合の良いときだけ女性であることを逆手に取ってない?
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