「出身や大学」に偏りはあるのか? 最新版・日本学術会議会員の大学ランキング

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2020年10月30日 19:20  AERA dot.

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写真記者会見する日本学術会議の幹部(10月29日、(c)朝日新聞社)
記者会見する日本学術会議の幹部(10月29日、(c)朝日新聞社)
 10月28日、衆議院の代表質問で日本学術会議の任命拒否問題が取り上げられ、菅義偉首相は次のように答えた。

【表】日本学術会議会員の所属大学はこちら

「民間出身者や若手が少なく、出身や大学にも偏りがでないことも踏まえた多様性を念頭に、私が任命権者として判断を行ったものだ」(朝日新聞デジタル 2020年10月28日)

 ここでいう「偏り」とは何をさしているのだろうか。

 日本学術会議会員(第25期、2020年10月)について、性別、年齢、所属大学、大学所在地を調べてみた。現在、会員は204人で、うち女性は77人(37.7%)となっている。大学所属は169人(82.8%、客員、特任の教員を含む。名誉教授のみは含まない)。

 年齢は平均60.06歳。最年少が45歳、最高齢は69歳となっている。なるほど、菅首相が言うように「若手」は少ない。

 所属大学は東京大がもっとも多く34人。京都大16人、大阪大14人、慶應義塾大10人、東北大9人、早稲田大8人と続き、おもに関東、関西の大学に集中している(ランキング参照)。

 私立ではほかに日本大、明治大、中央大、東京理科大、関関同立が入っている。研究中心型大学ではない大学として、公立はこだて未来大、尚絅学院大、大阪芸術大、四国学院大、日本赤十字九州国際看護大などが登場している。

 一方、国際基督教大、上智大、青山学院大、立教大、法政大、学習院大、東洋大、専修大などの名前は見つからなかった。

 会員の所属大学がない地域(県)は次のとおり。

 青森、岩手、秋田、山形、群馬、新潟、富山、山梨、長野、岐阜、三重、滋賀、奈良、和歌山、鳥取、島根、山口、高知、佐賀、長崎、大分、宮崎、鹿児島、沖縄

 山陰、九州地方は大学や研究機関の数が少ないので、会員になる学者がなかなか出てこないということだろうか。

 ここで「若手」を紹介しよう。40代が6人いる。

<45歳>
 高山弘太郎(豊橋技術科学大、愛媛大)/食料科学、農学
 馬奈木俊介(九州大)/経済学、環境学
 所千晴(早稲田大)/総合工学、化学
<46歳>
 狩野光伸(岡山大)/基礎医学、薬学
 西谷陽子(熊本大)/基礎医学、健康・生活科学
<47歳>
 米田美佐子(東京大) 基礎医学、食料科学

 早稲田大理工学術院の所千晴教授は資源循環工学、粉体工学に取り組んでいる。1998年早稲田大理工学部資源工学科卒業、2003年東京大大学院工学系研究科地球システム工学専攻博士課程修了。その後、04年早稲田大理工学部助手、07年に理工学術院専任講師、2009年に同准教授となり、2015年から同教授をつとめる。

 早稲田大のなかでもかなり若くして准教授、教授となった。それだけ研究業績が評価され、優秀であるということであろう。

 所教授は研究テーマを次のように話している。

「私は資源循環工学を専門としています。その研究の一つが、粉体プロセッシングという技術を用いて、パソコンやスマホなど電子機器から、有用金属を分離する技術の開発です。都市鉱山に眠る金属材料を得るためには、固体を溶かす方法が効率的ですが、そのために膨大なエネルギーが必要で、それは環境に負荷をかけます。粉体プロセッシングは、これを溶かさずに固体の状態のまま必要な物質の粒子を分離する、もっとも環境負荷が小さい技術です。目的の物質だけを分離するのは、簡単ではありませんが、開発した技術は実際の企業でも活用されています。社会に直接貢献ができ、やりがいが感じられる研究だと思っています」(ウェブサイト・河合塾「みらいぶっく」2020年5月)

 日本学術会議会員のなかには、今回の任命拒否に批判的な大学教員がいる。東京大大学院法学政治学研究科・法学部の苅部直教授はこう記している。

「中立性が求められる機関のメンバーについて、選別をしている雰囲気だけは醸して、たとえば安保法制に反対した人をランダムに外している。しかも、表向きは絶対に理由を明かさない。こんなことをしていたら、結局、直接的な抑圧と同等かそれ以上に、社会全般で、ものを言おうとする人の意志を萎縮させかねません。学問の自由どころか、思想信条の自由、表現の自由を危うくさせる。社会の自由度、寛容度を下げる危険性がとても高いと思います」(毎日新聞10月22日)

 京都大大学院法学研究科の高山佳奈子教授は、10月23日、日本外国特派員協会での会見でこう話している。

「内閣総理大臣には日本学術会議会員を自分で選ぶ権限がありませんので、今回、日本のトップレベルの研究者6人の任命を拒否していることは明らかな違法行為です」

 高山教授は2010年代半ば、安保関連法案反対運動に加わったり、昨年の憲法記念日の集会で「変えるべきは憲法でなく、安倍政権です」と訴えたり、政府には相当辛らつな言葉を投げかけていた。

 菅首相は任命拒否について、「(学術会議の)総合的・俯瞰的な活動を確保する観点から判断した」「説明できることとできないことがある」と煙に巻く答弁を続けている。これではだれも納得できない。そして出てきたのが、「民間出身者や若手が少なく、出身や大学にも偏りがみられる」であるが、これも具体的に何を指しているのか、その根拠はどこにあるのか。説明が十分ではない。

 若手を増やすこと、出身、大学を多様化させるのはおおいに結構である。だが、優秀な若手で地方大学所属だが政府に批判的ゆえに任命されなかった、ということはあってはならない。専門知からの批判によって政策の間違いやひずみを正してくれる、だから安心だ、くらいの度量を首相が持ってこそ、日本学術会議の存在価値が高まるはずだ。

(文/教育ジャーナリスト・小林哲夫)

このニュースに関するつぶやき

  • 旧帝国大学系7つの国立大学に所属する会員が45%、それ以外の173の国立・公立大学17%。615ある私立大学24%。49歳以下の会員3%。60代が60、3%。偏りスギ〜
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  • @『昨年の憲法記念日の集会で「変えるべきは憲法でなく、安倍政権です」と訴えた』・・・民意で選ばれた政権を、しがらみで教授になった専門バカが批判する。
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