なぜ巨人は「3割打者ゼロ」で優勝できたのか。元コーチが原野球の真髄を語る

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2020年10月31日 06:41  webスポルティーバ

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 2年連続でセ・リーグを制した巨人は、「3割打者ゼロ」でシーズンを終了することが濃厚だ。これは過去10年では、2011年の中日、2014年の巨人だけで、パ・リーグに関しては1球団もない。突出した成績を残した選手がいないながら、なぜ2位阪神と8.5ゲーム差など、他球団を圧倒できたのか? 「第二次」原政権下の2008年から2010年まで一軍バッテリーコーチを務めたプロ野球解説者の西山秀二氏に聞いた。




 まず4年目の吉川(尚輝)が、ジャイアンツが固定できなかったセカンドで規定打席に到達できたのが大きい。打率.271は及第点を挙げられますし、11盗塁が示すように足もある。

 そこに、育成出身で吉川と同じ4年目の松原(聖弥)も11盗塁と、持ち味である足を生かしてスタメンを勝ち取ったことで、攻撃のバリエーションが増えました。

 シーズン中盤あたりから彼らが1、2番に固定され、3番・坂本(勇人)、4番・岡本(和真)、5番・丸(佳浩)のクリーンアップに、よりいい形でつなげるようになりました。吉川が出塁、盗塁で二塁まで進み、松原の進塁打でランナー三塁とチャンスをつくる。そしてクリーンアップで返す。「ヒット1本で1点」が取れるような打線になっています。

 さらに、3年目の大城卓三がキャッチャーとして独り立ちできたことも大きかった。守備に関しては、小林(誠司)と炭谷(銀仁朗)が一枚も二枚も上手。そのため、ふたりよりバッティングがいい大城は、昨年はファーストで出る機会が多かった。今年はスタメンマスクを被る試合が増えたことによって、相手チームのピッチャーはジャイアンツ打線に気が抜けなくなりました。

 バッティング面で弱いとされている小林や炭谷が8番に座ることによって、次の9番バッターはピッチャーになりますから、相手からすればひと息つけるわけです。それが、大城がキャッチャーとして試合に出ることで、「ここで嫌なバッターがきたな」と相手にイメージづけられる。いくら「3割打者ゼロ」といっても、攻撃面では昨年と同等、それ以上の力を誇っていると思っています。

 今季の巨人は、リーグ3位のチーム打率.255ながら、500得点はリーグトップ。リーグ1位のチーム打率.266、3割打者3人(佐野恵太、梶谷隆幸、宮敏郎)を揃える、強力打線のDeNAよりも得点が高い。

 出塁率をしっかりと稼げているところにも注目すべきです。坂本は.376、丸も.377と高いですし、4番の岡本にしても.359と、最低限の数字を残しています。

 そして得点圏打率からも、彼らの貢献度はより理解できます。3番の坂本はリーグトップの.373、4番の岡本も.361と高い。打線のつながりでも説明したように、上位打線で効率よく点数が取れます。出塁率の高い5番の丸から再びチャンスをつくり、下位の大城などでさらに得点を増やせるのが、今年のジャイアンツの大きな特徴です。

 なにより、彼らの貢献は打つだけではありません。僕が着目しているのは、クリーンアップのバントです。

 決して数が多いわけではありませんが、坂本の送りバントは7月15日の広島戦で1つありました。翌日の広島戦では丸が試合終盤の7回と9回に、自身初の1試合2つの送りバントを決めています(シーズンでは3犠打を記録)。この3つのバントはすべて得点に絡んでおり、彼らの自己犠牲精神はもちろん、原(辰徳)監督の信念が現れた采配にも感じるわけです。

 原監督は「絶対に点がほしい」と思った場面では、何が何でも点を取りにいくし、そのために最善の策を取ります。なにより、坂本や丸のように、経験と実績がある絶対的な主力選手に対しても、やるべきことをやらせる求心力がある。

 有望な若手の出現に中心選手の安定した役割と、裏付けされた巨人の攻撃力の高さがあった。それを具現化させているのは、球団最多の監督勝利数を更新した原監督の手腕にあるのでしょう。

 今シーズンを振り返ってみると、やはり「監督力」が一番の強みだったと思います。僕が一軍でコーチとしていた時期から一貫していると感じるのは、原監督の厳しさです。

 3割バッターがいなくても優勝できた2014年も、橋本到や大田泰示など、二軍で結果を残して一軍に昇格してきた若手を、すぐにスタメンで出場させチャンスを与えました。ですが、少しでも成績が落ちると「また鍛え直してこい」と言わんばかりに二軍に降格させ、また新たな若手を一軍で試す。今年もその姿勢は顕著に表れていました。

 捕手では3年目の岸田(行倫)。内野手は5年目で外野も兼任する増田(大輝)、3年目の若林(晃弘)、田中(俊太)、北村(拓己)。外野では5年目の重信(慎之介)と、一軍でチャンスを与えられた若手は少なくありません。そんな目まぐるしい入れ替えのなか、現時点で一歩リードしているのが、吉川、松原、大城なわけです。

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 原監督の厳しさは、若手だけに限ったことではありません。陽岱鋼のように実績十分の選手であっても、結果を残せないのなら二軍に落とす。中島(裕之)のように、奮起すればベテランであっても積極的にスタメン起用する。このような「実力主義」を貫くからこそ、ベンチは常に緊張感があるわけです。

 その一方で「不動のレギュラー」と決めた選手は、とことん信じ抜くのも原監督です。

 2014年でいえば、監督が「チームの顔」と公言し4番に座らせた阿部(慎之助)、長野(久義)がそうでした。今年は当時から主力を担う坂本に丸、そして、4番で固定している岡本の3人がそれに該当します。

 原監督自身、現役時代にジャイアンツで不動のレギュラー、そして4番を務めた経験から、その立場がどれだけ重く、責任があるか骨身に染みている。だからこそ、彼らには「伝統の巨人軍のレギュラーとして務めを果たしてほしい」という願いも込め、どんなに不調でも起用し続けているのだと感じます。

 ジャイアンツは優勝を宿命づけられたチーム。そのなかで、球団歴代1位の勝利数を積み上げた原監督がタクトを振るからこそ「強いジャイアンツ」として戦えるのです。

このニュースに関するつぶやき

  • まぁ、アンチの負け惜しみの酷いこと。
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  • 3割打者ゼロでも、狭い狭い東京ドームでドームラン量産したからだろ。アホークソと同じだよ。箱庭みたいな球場を本拠地にしてドームランで大量点。
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